分析
F1
ウイリアムズ、テストドライバーに無名の若手を起用。その背景にあるものとは?
ウイリアムズは、2020年のテストドライバーに、ロイ・ニッサニーを起用することを明らかにした。実績の乏しい彼をなぜ起用するのか? そこには様々な背景があった……

Jonathan Noble
編集: 2020/01/23 8:16
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ウイリアムズが2019年のアブダビテストにロイ・ニッサニーを起用した際、多くの批評家たちはこの動きを、弱小チームが短期的な収入を得るためにとった行動だとして、F1ではよくあることだという見解を示した。事実、スポンサーを持ち込んだドライバーがF1をドライブする機会を得ることは、何ら珍しいことではない。
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ニッサニーはイスラエル出身の25歳。フォーミュラ・ルノーでは一定の成果をあげているとは言え、2018年に参戦したFIA F2では獲得ポイントがわずか1点にとどまり、ランキング22位。目立つ成績を残すことはできなかった。
そんな中、ウイリアムズはニッサニーと2020年のテストドライバー契約を締結することを発表した。しかも金曜フリー走行1回目のセッションに3回参加する予定となっており、ウイリアムズ・ドライバー・アカデミーからの指導や支援も受けることになるという。
もちろん、この契約には商業的な要因が絡んでいることは確かだ。さらにもう少し深く掘り下げてみると、この契約についての全体像が見えてくる。
ニッサニーの支援者、シルヴァン・アダムスの存在
Sylvan Adams, President of Roy Nissany F1 Management with Roy Nissany, Offical Williams Racing Test Driver and Claire Williams, Williams Racing Deputy Team Principal
Photo by: Williams
ウイリアムズとニッサニーの契約は、イスラエルの都市テルアビブで行なわれたイベントの中で発表された。このイベントは、とりあえずニッサニーとクレア・ウイリアムズ(チーム副代表)に握手をさせて写真を撮り、ゲストは会見よりもドリンクやカナッペに夢中になる……といった従来のものとは一線を画していた。地元のメディア、ゲストは何が起こっているかについて真の関心があったのだ。
イベントの中では、イスラエル大統領、そして首相などの要職を務めたシモン・ペレスの息子であるヘミ・ペレスが登壇し、この契約がイスラエルにとってどれほどの意味を持つかを熱弁した。それ自体が、この国にとってどれほどの意味を持つ契約なのかを証明しているとも言える。
さらに興味深いのは、会見でクレア・ウイリアムズの隣に座っていたのが、ニッサニーの支援者であるシルヴァン・アダムスだったということだ。
アダムスはカナダ生まれの資産家であり、主に不動産開発に関わっている。彼曰く、カナダからイスラエルに移住してから自身の名刺に『自称イスラエル大使』という文言を入れていると言い、スポーツ事業を通したイスラエルの振興に尽力している。
彼は自転車競技の熱心なファンで、テルアビブに自身の名前を冠した競技場を建設するほどだ。近年は『スタートアップネーション』という自転車チームに出資しており、2020年のウイリアムズのF1マシンには同チームのロゴが掲示される予定だ。
ニッサニーはイスラエルの自転車競技選手に友人がおり、その関係でアダムスと出会ったのだ。
アダムスが考える“長期的なプラン”
Roy Nissany, Offical Williams Racing Test Driver and Sylvan Adams, President of Roy Nissany F1 Management
Photo by: Williams
アダムスは成功のために自身の資金を大量投資することをいとわない野心的な人物だ。彼は自身の自転車チームに数十億円の投資をしたと言われている。そして現在、アダムスはニッサニーにF1のレギュラーシートを獲得させるという野望を持っている。
「私の目標は、ロイをF1ドライバーにすることだ」
そうアダムスは語り、さらに次のように続けた。
「もちろん、彼が(チームで)ふたりしかいないドライバーの内のひとりに選ばれるためには、いくつかのハードルがある。しかし、このスポーツが世界で最も金のかかるものであることを忘れてはならない」
「イスラエルの国旗があしらわれたマシン、そしてそのマシンをドライブするロイを、数週間に1度、3〜4億人の人々が目にするんだ……想像しただけで鳥肌が立つよ」
アダムズが語った“ハードル”のひとつに、F1で走るために必要なスーパーライセンス制度がある。2020年はトライデントからF2に再挑戦すると見られているニッサニーだが、彼が2021年にF1デビューを果たすためのライセンスポイントを稼ぐには、ランキング3位以内に入ることが条件となる。しかしそれは過去の実績から見ると、かなり厳しいものと思われる。
しかしアダムスは、ウイリアムズ、そしてニッサニーが置かれている現状に関して十分理解しており、彼はウイリアムズとの長期的なパートナーシップを考えているようだ。さらにニッサニーのF1デビューとウイリアムズの“復活”が同じ時期に訪れて欲しいと考えているのだ。
過去には、実業家のローレンス・ストロールがフォースインディア(現レーシングポイント)を買収してオーナーのひとりとなり、息子のランス・ストロールを起用したという例があった。しかし、アダムスはそうした事例に追随することはないと強調した。
「私はこの関係を長期的なものとする予定だ。私の計画はF1チームを持つことではない。ウイリアムズファミリーの一員になれて、私は幸せなのだ」
ウイリアムズは十分な資金で名門復活への足がかりを作り、その間ニッサニーはアカデミーでドライバーとしての腕を磨く……ウイリアムズとアダムスによる長期的なプログラムが始まっていく。
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