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インタビュー

「MCは周りに受け入れられなかった」土屋武士監督が来季車両変更の真意を語る

2019シーズンいっぱいでマザーシャシーの使用を一旦取りやめ、来季は別のマシンで参戦することを宣言したつちやエンジニアリング。土屋武士監督が、その決断に至った経緯を語った。

#25 HOPPY 86 MC

#25 HOPPY 86 MC

Masahide Kamio

 スーパーGT(GT300クラス)にマザーシャシーで参戦を続けてきたつちやエンジニアリングだが、来シーズンは不本意ながらもGT3車両に変更することを決断した。

 最終戦もてぎが終わった後、チームを長年応援してくれるサポーターたちの前で涙ながらに車両変更のことを発表した土屋監督。その決断に至った経緯を訊いた。

ホッピーさんの「来年クルマを変えよう」の一言がきっかけ

「今年の体制発表でも話した通り、応援してくれるみんなにリザルトを持って帰るシーズンにしたいと公言してスタートしましたが……フタを開けてみれば過去最低の成績でした」

「正直、自分でもどうして良いか分からない状態になって……。どうしようかと考えていたところに、ホッピーさんから『クルマを変更しよう』と言っていただいたのが、大きなきっかけでした」

 そう語った土屋監督。ウエットコンディションでのレースとなった第7戦SUGO。予選では3番グリッドを獲得するも決勝では天気に翻弄され28台中27位という結果に終わった。そのレース後にメインスポンサーであるホッピーから、来季に向けた車両変更の提案があったという。そこから急速に話が進んでいき、実際には最終戦もてぎの前の段階で車両変更が決定したとのことだ。

 改めて車両変更を決断したひとつの要因として、ドライバーや応援してくれる仲間たちを、これ以上ガッカリさせたくないという想いがあったと土屋監督は語った。

「やっぱりドライバーたちが可哀想なんです。あと、応援に来てくれている仲間たちも、みんなガッカリして(サーキットから)帰っていく姿を何度も何度も見ていました。それも非常に心苦しいところがありました」

「ドライバーたちに可哀想だというのと、応援してくれている人たちに申し訳ない。これがメインの理由です。それを提案してくれたのがホッピーさんでした」

水面下で進む“第2世代のマザーシャシー導入”と、そこで起きている“問題”

 さらに土屋監督は、もうひとつの理由があると語った。

「マザーシャシーのジェネレーション2(次世代マシン)の話を進めていかなければいけない中で、現状でそれが止まってしまっている状況にあります」

 2014年途中に開発着手が発表され、2015シーズンからスーパーGTの舞台で活躍するマザーシャシー。早くも導入5年目を迎え、水面下では次世代マシン『マザーシャシー ジェネレーション2(以下、MC Gen2)』の導入に向けた動きが始まっているという。

 ただ、そこでネックになっているのが現在のGT300クラスで大半を占める『GT3勢』とのバランスをどう取るかだ。

「エンジンだったりシャシーだったり(問題は)色々あって、今のGT3車両との車体の重量差をはじめ色々な部分で(条件を)合わせられないかと、各チームからも話がありました」

「その中でもマザーシャシーは“モノづくり”という部分がしっかり活かされなければいけないし、コストがかからないものでないといけない。それは日本のレーシングカー/レース産業というところに対して(MC Gen2でも)非常に重要な部分です。しかしそれに対する話し合い、特にMC Gen2に関しては、GTAの中で止まってしまっています」

 そう語った土屋監督。現行のマザーシャシーでも十分に戦っていけるという手応えはあるものの、徐々に増している“規制”を含め、風当たりが厳しくなってきているという。

「現状でも十分マザーシャシーでもいけるとは思いますし、今年は富士では速さを見せられました。でも、あの時はBoPの車体重量が1120kg(通常は1150kg)だったからということと、ロングレースの場合はタイヤ無交換作戦の効果が出てきやすい部分があるので、そこが大きく影響しました」

「ただ、僕たちがポールポジションを獲ったり速さを見せていくと、GT3を使っているチームから『マザーシャシーにもっと規制をかけよう』という話がたくさん出てきました」

「僕はスポーツマンシップに則って、現在のレギュレーションにしてもBoPにしてもリスペクトしながらやってきました。しかし、今後リザルトを獲るため行動を起こすとなると、本当に心苦しいですけど……マザーシャシー(での参戦)を諦めるしかないというのが現状です」

 マザーシャシーの強さが際立ったのは土屋監督もドライバーとして参戦していた2016年。ヨコハマタイヤと開発を進め、“タイヤ無交換作戦”を確立し、その結果シーズン2勝を挙げてシリーズチャンピオンを獲得した。

 昨年からマザーシャシーのBoPウエイトの数値がプラス50kgに変更されたが、土屋監督はチャンピオン獲得の要因は“マザーシャシーのパフォーマンスが高いから”ではないことを強調した。

「今のGT3車両に優位性があるのも、タイヤ開発が進んできたからなのです。クルマとタイヤのマッチングがうまく噛み合った時に圧倒的な優位性が生まれる……これはスーパーGTのGT300クラスでは昔から変わらないことです。だから僕はマザーシャシー(の特徴)を活かしたタイヤ開発をいち早くやったので、2016年にチャンピオンを獲ることができました」

「また2016年は、GT3車両がたくさん新型車になって足踏みをしていたシーズンでした。そこを突いて僕たちはチャンピオンを獲ることができました」

「その後BoPのウエイトが50kgになって、富士以外では非常に苦しい状況でした。特にウエット路面はクルマの特性上、非常に辛かったです」

「MC Gen2の話が進んでいない状況で、このまま他のチームに言われて(現行のMC車に)規制がかかると、もっと苦しむことは目に見えています。経営的な観点から見ても、このままやっていくのは非常に辛いという部分がありました」

「マザーシャシーはエントラント全体から受け入れられなかったクルマ」

 このようにマザーシャシーの継続使用を断念する経緯を語った土屋監督。結果的に“周りから受け入れられなかったクルマ”とだったと、悔しさを噛み締めていた。

「今のマザーシャシーに関しては、良い思い出もありますけど、一番最後の思い出があんな形で終わってしまったというのが……悔しすぎます。最終戦が終わった後もずっと(悔しくて)寝れませんでした」

「現行のマザーシャシーというのはエントラント全体が受け入れなかったクルマだと感じています。それに対してMC Gen2はみんなが受け入れてくれるクルマにして生まれなければいけないと思っています。もう2度とこんな思いはしたくありません」

「せっかく、(マザーシャシーは)職人を育ててくれるクルマだったはずなのに、それがみんなに潰されてしまった。日本の社会問題のひとつでもある“職人が生きていく環境をどんどん潰している”状況がここでも起きていると思います」

「僕の価値観としてはこのレースという舞台は職人を育てる環境でなければならないと思っています。でも、その価値観はみんなに殺されてしまった……これが現実です。なので、“職人 土屋武士”は今のレース業界に殺されてしまったと自分は捉えています。だからこそ、自分は職人が生きられる世界をちゃんと作りたいと強く思っています」

「一緒にやっている他のチームも含めて全体で考えていって、そこでの総意のもとに新しいマザーシャシーが生まれて欲しいなと思っていますし、そこに僕も尽力していきたいです」

2020年、つちやエンジニアリングの新たな挑戦

 そして2020シーズン。つちやエンジニアリングはGT3車両を使う予定だという。具体的な車種はまだ明らかにされていないが、土屋監督の中ではどの車両にするのか決まっているようだ。

 GT3車両で戦う2020シーズンは、“若い職人を育てる”ことをテーマに掲げてきたつちやエンジニアリングのチーム力を証明したいと力強く語った。

「ポールポジションを獲っても、速く走っても、全て『マザーシャシーが速いから』という一言で片付けられていましたが、今度は同じGT3車両を使って、完全に再現できるかわからないですけど、マザーシャシーを使っていた時と同じことができるようにチャレンジしたいと思っています」

「もし同じことができれば『人の技術、職人の技が強さの秘訣だったね、マザーシャシーが速かったわけではなかったね』ということを証明できるはずです。僕はそれを実現したいなと思っています」

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