F1 オランダGP

F1分析|1ストップ作戦が完遂できていれば、ハミルトンに勝機はあったのか? オランダGP決勝レースペース分析

F1オランダGPの決勝で、ルイス・ハミルトンは1ストップ作戦を採り、復活優勝を目指した。しかしVSCでこの作戦は完遂ならず。この作戦が成功していたら、ハミルトンが勝利する可能性はあったのだろうか?

田中 健一

編集: 2022/09/06 3:15

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The helmet of Lewis Hamilton, Mercedes AMG

 2022年のF1第15戦オランダGPは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが優勝。フェルスタッペンはこれで4連勝、シーズン10勝目と圧倒的な強さを見せている。ドライバーズランキングでも後続に100ポイント以上の差を築き、もはや盤石といった状況だ。

 前回のベルギーGPでは、パワーユニット交換によるグリッド降格ペナルティがあったにも関わらず、それを物ともせず圧勝したフェルスタッペン。しかし今回のオランダGPは楽勝とはいかなかった。一歩間違っていれば、ライバルに勝利を奪われるところだったのだ。しかもそのライバルというのが、今シーズンを通じてレッドブルと優勝を争っていたフェラーリではなく、メルセデスだったというのが驚きだった。

 今回の決勝レース、フェルスタッペンはポールポジションからソフトタイヤを履いてスタート。一方のメルセデス勢は、ミディアムタイヤをスタートタイヤに選んだ。

 フェルスタッペンは当初、フェラーリのシャルル・ルクレールをライバルと目してレースを進めていた。そのため、ルクレールがデグラデーションに苦しみ、17周目にピットストップしたのに反応する形で、翌18周目にピットイン。ルクレールの前をキープすることに成功した。

 しかしメルセデス勢は、ミディアムタイヤで第1スティントを伸ばしに伸ばした。しかもミディアムタイヤのデグラデーションはほとんど見られず、ルイス・ハミルトンは29周もの距離を走り切ってピットに飛び込んだ。ラッセルは31周だ。

 しかもメルセデス陣営がこのピットストップでふたりの陣営に履かせたのはハードタイヤだった。ハードタイヤは、金曜フリー走行の時点ではソフトとミディアムに対してパフォーマンス面で大きく劣るとされていたため、各チームが敬遠していたのだ。しかしそれでも、メルセデスはこのタイヤを履くことを選んだ。

 このハードタイヤを履いたのは、何もメルセデス勢だけではなかった。これ以前にもアルピーヌのフェルナンド・アロンソがこのハードタイヤを履く、変則的な2ストップ作戦を採用していた。ハードタイヤを選んだアロンソのペースは優れており、堅実なレースを進めていた。しかもアロンソは、金曜FP2で唯一ハードタイヤでのロングランを行なったドライバーだったのだ。

 メルセデスのハードタイヤでのレースペースも実に優れていた。下記のグラフを見ていただくと一目瞭然だ。

F1オランダGP決勝レースペース推移グラフ

F1オランダGP決勝レースペース推移グラフ

Photo by: Motorsport.com / Japan

 30周目頃から47周目頃までの濃淡の緑色の線が、ハードタイヤを履いたメルセデスのラップタイムを示している。

 同じ頃、ミディアムタイヤを履いたフェルスタッペン(青)とルクレール(赤)のペースは、デグラデーションの傾向こそほとんど見られないものの、ほぼ横ばいの状態である。一方でハードタイヤを履いたメルセデス2台のペースを示す線は右肩上がり。つまり走れば走るほど、燃料が減れば減るほど、ラップタイムが速くなっていっていたのだ。

 フェルスタッペンはもう1回ピットに入るのは必至と見られていた。当時の差を考えれば、フェルスタッペンはピットストップしてしまうとメルセデス勢のはるか後ろでコースに復帰することになるのは明らかだった。逆にメルセデスはそのまま走り切れば、2台で徹底ディフェンスすれば、今季初優勝も夢ではなかった。

 ただ、バーチャル・セーフティカー(VSC)が出たことで、メルセデスの期待も潰えた。VSC時は当然コース上の走行スピードが低く抑えられるため、ピットストップのロスタイムも小さくなる。このVSCで、フェルスタッペンはメルセデス勢に先行されることなく、タイヤを交換することができたのだ。メルセデスもこれでは勝機はないと2ストップ作戦に切り替えたが、実質的なパフォーマンスではレッドブルの方がまだまだ上……その後も一矢報いようと奮闘するも、実際にはこのVSCで勝負は決したと言えるだろう。

 毎度申し上げているように、レースにタラレバは禁物である。しかし今回の場合は、もしメルセデスが1ストップで走り切ることができていたのなら、最終的な結果はどうなっていたのか……それは気になるところである。タラレバではあるが、検証してみたいと思う。

 下のグラフは、トップからの差の推移をグラフ化したものである。

F1オランダGP決勝ギャップグラフ

F1オランダGP決勝ギャップグラフ

Photo by: Motorsport.com / Japan

 VSCが入り、各車がピットストップしたのは48周目終わりのことである。この前の周、47周目の首位フェルスタッペンと2番手ハミルトンとの差を見てみると、13.795秒、ラッセルは16.138秒である。今回のレースでのピットストップでのロスタイムは、18秒+静止時間。つまりこの47周目終わりでフェルスタッペンがピットに入っていたら、静止時間を3秒とすればハミルトンの7秒ほど後方でコースに復帰していたはずだ。

 ただこの時の残り周回数は25周。ミディアムタイヤに履き替えるのは少々勇気がいる。仮に残り20周という時点まで、フェルスタッペンが2回目のピットストップを引っ張ったとすれば、さらに2.5秒ほどハミルトンに先行されていたはず……つまり残り20周で10秒を追いかけなければならないということだ。

 レース終盤、ソフトタイヤを履いたフェルスタッペンは、1分13秒6で走っている。ここから考えれば、フェルスタッペンはミディアムタイヤでも1分14秒フラット程度で走ることができたはず。そしてそのまま最後まで走り切ったはずだ。これはメルセデス勢の47周目のペースと比較すれば、1秒速いペース……つまり10秒の差は10周ほどで追いつける計算だ。

 ただ前述の通り、メルセデスでのハードタイヤでのペースは徐々に上がっていた。つまり最初1秒だったペース差が、どんどん小さくなっていった可能性もある。そうなれば、フェルスタッペンが追いつくのは厳しくなってくる。しかも、道中でラッセルを攻略しなければならず、さらに劣化したミディアムタイヤで攻撃するのは簡単ではなかっただろう。

 結論としては、もしVSCやセーフティカーが出なかったとしても、フェルスタッペンはハミルトンに追いつくことができただろうが、勝利を奪うのは簡単ではなかっただろうということ。レース最終盤、大激戦になった可能性がある。

 危険を避けるため、VSCが出されることは避けられない。しかしハミルトンとフェルスタッペンの優勝争いが、コース上での大激戦で決着するのを見たかったものだ……。

 

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