F1
F1メカ解説|2022年、成長率トップはアストンマーチン。シーズン中に1.3秒以上速くなった……そのアップデートを振り返る
2022年、最も印象的なアップデートを施したと言っても過言ではないアストンマーチンAMR22。計算すると、そのパフォーマンス向上度合いは、ラップタイム1.3秒以上に及びそうだ。
公開日時: 2022/12/22 8:52
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

2022年のF1で最も大きくパフォーマンスを向上させたのは、間違いなくアストンマーチンだった。
アストンマーチンは新レギュレーションが導入された2022年に、前後に長いサイドポンツーンを備えたニューマシン『AMR22』を投入した。
サイドポンツーンが長いことで、その下部は鋭く抉られ、フロアに沿うような形で気流をマシン後方に導き、さらにサイドポンツーンの上面も気流が後方に抜けるような、そんな形状のマシンだった。
しかしいざ走行を開始すると、思うようなパフォーマンスを発揮することができず、開幕戦バーレーンGPでは、予選ではセバスチャン・ベッテルの代役としてマシンに搭乗したニコ・ヒュルケンベルグの17番手が精一杯。決勝でもランス・ストロールが12位まで追い上げるのが限界だった。データ上では、この時点で最も遅いマシンだった。
そんなAMR22は、スペインGPで大変革と遂げた。サイドポンツーンの形状が一変したのだ。
このスペインGPで投入されたアップデート版のAMR22は、サイドポンツーンの上面がマシンの後方に行くにつれてフロアまで落ち込み、ディフューザー上に気流を導くような形状となった。ある意味、コンセプトから一新された形となった。
このアップデートを投入した後はしばらく苦戦する状況が続いたが、夏休みを挟んでパフォーマンスが急上昇。オーストリアGPからオランダGPまでの間(下のグラフ赤丸の部分)、予選パフォーマンスが急上昇していっている。そして最終戦アブダビGPでは、中団グループのトップを争うアルピーヌやマクラーレンと遜色ないパフォーマンスを披露した。
計算上では、ラップタイムが1分30秒のサーキットで、約1.3秒速くなったという計算である。
アストンマーチンAMR22の2022年パフォーマンス推移
Photo by: Motorsport.com / Japan
そのアストンマーチンは、サイドポンツーン以外にもシーズン中に様々なアップデートを投入。それぞれがパフォーマンス向上に好影響を及ぼした。
最も印象的だったのは、ハンガリーGPで投入したリヤウイング翼端板だろう。
今シーズンのレギュレーションでは、マシンの後方に発生する乱気流を削減するため、リヤウイングのフラップと翼端板が、一体化するような形にすることが目指されていた。しかしアストンマーチンはレギュレーションの抜け穴を掻い潜り、あたかも昨年までの見慣れた形の、翼端板とフラップが直角に繋がれるようなデザインのリヤウイングを登場させた。これによって、リヤウイングの効果を高めることを狙ったわけだ。
実際、このウイングは限られたグランプリでしか使われなかったが、レギュレーションを読み込み、その中から最善の解決策を導き出す頭脳がチームに備わっている証左のひとつと言えるだろう。
なおこのウイングは2022年については合法と判断され、使うことができたものの、2023年にはレギュレーションの微調整が行なわれ、使用が禁止されることになった。
リヤビューミラーのステーにも変更が加えられた。当初はコクピット横からサイドポンツーンの上を横断するように伸びるモノと、ミラー本体の真下に置かれたモノの2本のステーが設けられていたが、これがミラーの内側一点で支える形に変更され、空力効果の向上が目指された。また、ミラーの後方にはフィンが設けられ、サイドポンツーン上の気流を制御した。
Aston Martin AMR22 wing mirrors detail
Photo by: Aston Martin
さらにサイドポンツーンの大アップデート前のエミリア・ロマーニャGPでは、フロアを支えるステーの位置と太さが変更された。ここから想像するに、当初はフロア下で大きなダウンフォースを生み出すのに伴い、フロア自体が大きくたわんでいた問題が、エミリア・ロマーニャGPの時点で大きく解消されていたことを示しているものと思われる。
実際、シーズン序盤のフロアステーは、リヤタイヤの直前で繋がれていた……つまりこのあたりで大きなたわみが生じていたのだろう。しかしフロアが強化されたからなのか、エミリア・ロマーニャGPのステーは、かなり前方に移っている。
Aston Martin AMR22 floor comparison
Photo by: Motorsport Images
ヘイローの付け根の部分にも、様々なバージョンのフィンが、色々な箇所に取り付けられ、そして排除されていった。これも、サイドポンツーンの上部の気流を制御するためのものだろう。
Aston Martin AMR22 Halo winglets
Photo by: Uncredited
シーズン終盤のシンガポールGPでは、フロアを大きくアップデート、フィンのような形状が各所に追加され、リヤタイヤの少し前には切り欠きも設けられた。そしてその切り欠きの中には、小さなウイングが追加された。これは、レッドブル『RB18』のデザインによく似たデザインだと言えるだろう。
Aston Martin AMR22 floor comparison
Photo by: Giorgio Piola
これらのアップデートにより、今季のアストンマーチンは大きくパフォーマンスを引き上げた。そして、新レギュレーション2年目となる来季、どんな活躍を見せることになるのか……注目が集まる。そしてベッテルは今季限りで引退したものの、その後任としてチームに加入するのがフェルナンド・アロンソ……その能力は、誰もが認めるところである。どんな化学変化が起きるのか楽しみだ。
関連ニュース:
- F1分析|予選ペース推移で振り返る2022年のF1。やっぱりフェラーリはデグラデーションが大きかった? 上昇率最大はアストンマーチン
- アストンマーチンF1、2023年を戦うニューマシン『AMR23』を2月13日に発表へ。日程の発表一番乗り
- テスト不足が狭きF1の門を閉じてゆく……アプローチ変更のハース「F1チームが若手を起用しにくい状況にある」
- もっと独創的なF1マシンを! マクラーレンCEO、技術レギュレーションの緩和を進言「6輪だっていいじゃないか! 今は予算上限があるのだから……」
- ホンダ・レーシング、2026年F1パワーユニット製造者登録の背景。HRC渡辺社長「研究のため我々は席についた段階」
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
コメントを読んで投稿する
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 テスト不足が狭きF1の門を閉じてゆく……アプローチ変更のハース「F1チームが若手を起用しにくい状況にある」
次の記事 アイデア爆発! 独創的F1マシン10台:一度見たら忘れられない名(迷)車たち
Top Comments
コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?
View More & Comment

More from
アストンマーティン

アロンソ、大ダメージを負ったマシンで母国戦完走……その判断は自分自身で?「フィニッシュした後は1速で走った。皆の熱気を感じたかったんだ」
F1
F1
スペインGP
2 日前
アロンソ、大ダメージを負ったマシンで母国戦完走……その判断は自分自身で?「フィニッシュした後は1速で走った。皆の熱気を感じたかったんだ」

アストンマーティン&ホンダ、共に進める”改善”にはまだまだ余地あり「シャシーの開発は、PUの開発よりも早く進歩できることを忘れてはいけない」
F1
F1
スペインGP
2 日前
アストンマーティン&ホンダ、共に進める”改善”にはまだまだ余地あり「シャシーの開発は、PUの開発よりも早く進歩できることを忘れてはいけない」

ホンダF1にとってスペインGPは厳しい週末に……折原エンジニア「今後はパフォーマンス向上により注力できる」
F1
F1
スペインGP
3 日前
ホンダF1にとってスペインGPは厳しい週末に……折原エンジニア「今後はパフォーマンス向上により注力できる」
最新ニュース

スペインで痛恨5位のラッセル、VSC受けての変則2ストップは正解だったのか? 本人は「どのみち結果は変わらなかった」との認識
F1
F1 F1
スペインGP
12 時間前
スペインで痛恨5位のラッセル、VSC受けての変則2ストップは正解だったのか? 本人は「どのみち結果は変わらなかった」との認識

テック3、Moto2のセナ・アジアスを2027年に起用! マリーニと合わせラインアップ一新
MotoGP
MGP MotoGP 13 時間前
テック3、Moto2のセナ・アジアスを2027年に起用! マリーニと合わせラインアップ一新

腕上がりに苦しんだマルティン、オーストリア後に”手術するしない”の対応判断へ
MotoGP
MGP MotoGP
オーストリアGP
14 時間前
腕上がりに苦しんだマルティン、オーストリア後に”手術するしない”の対応判断へ

全24戦の2027年F1カレンダー発表! 4月上旬の日本GPやモナコGPなど10戦でスプリント実施
F1
F1 F1
スペインGP
14 時間前
全24戦の2027年F1カレンダー発表! 4月上旬の日本GPやモナコGPなど10戦でスプリント実施
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録