アブダビGP巡る議論で渦中のマイケル・マシ、”更迭”の可能性をFIA認める
FIA上層部は、2021年F1アブダビGPでの裁定を巡る一連の議論に対し、F1レースディレクターを務めているマイケル・マシが交代する可能性もあると認めた。
写真:: Jerry Andre / Motorsport Images
F1は2022年シーズンの開幕を3月に控えているが、統括団体のFIA上層部はF1レースディレクターが交代する可能性があることを認めた。
現在、F1レースディレクターを務めているのはマイケル・マシ。2019年にチャーリー・ホワイティングが急逝した後、マシが急遽その役割を引き継ぐこととなり、現在に至っている。
そのマシは現在ある問題によって議論の的となっている。原因は2021年シーズンの最終戦アブダビGP。首位を行くルイス・ハミルトン(メルセデス)と2番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の間にいる周回遅れのマシンのみをリードラップに戻すというセーフティカー解除時の手順が、問題視されているのだ。
メルセデスは、これによってハミルトンに不利な状況が”故意に”生み出されたとして憤慨。この判断に抗議することとなった。レーススチュワードによってこれは却下されたが、納得のいかないメルセデスは上訴する姿勢も見せていた。しかしFIAがアブダビGPでの出来事やSC運用手順などの調査することを約束したことで、落ち着きを見せた。
現在もその調査は続いているが、今回の問題が再発しないようにするために議論されている選択肢の中には、故ホワイティングが長く務める中で増大していたレースディレクターの仕事を減らすことやレースディレクターを複数人配置すること、シーズン中にローテーションさせること、などがある。また各チームがコントロールルームから戦略等のサポートを受けているのと同じ様に、レースコントロールの意思決定を助けるために遠隔サポートすることも検討されているという。
Michael Masi, FIA
Photo by: Erik Junius
こうした中で、マシ本人に関してはレースディレクターの任を解かれるのではないかと見る向きもある。FIAのシングルシーター・ディレクターを務めるピーター・バイエルは、マシについて訊かれるとレースディレクターが交代する可能性を認めている。
「彼は素晴らしい仕事をしてきた」
「我々は彼にそのことを伝えている。しかし一方で新たなレースディレクターが着任する可能性があることも話している」
「私はWMSCに提案することしかできないが、彼らは間違いなく彼を参加させるだろう」
バイエルは最終戦後に、マシへ寄せられた批判に対してどう対応していたかも語っている。
「彼は個々のチームからの批判に対しては比較的打たれ強い。FIAで働いていれば、”このスポーツの警察”として働いているという自覚は持たなければならないからだ」
「警官というのは、感謝されることはめったに無い。しかし耐えられないのは、ソーシャルメディアでの反応だ。(SCの原因となった)ウイリアムズのニコラス・ラティフィに対する殺害予告のように、彼らは止まらない」
「マイケルはSNSのアカウントを持ってはいない。しかし様々な敵意が、彼を本当に傷つけていた」
「私はマイケルには支持を保証し、彼に私達が”一緒に働き続けたい”と思っていること、しかし我々がこの問題に対処しなくてはならないことも理解して欲しいと伝えている」
またバイエルは調査中の問題については、SC先導下での終了は選択肢としてはありつつも、正当化は難しかったという見方を示している。
「我々は組織として関与していく必要がある」
「マシが決定を下さなければならなかったあの瞬間、彼にはレギュレーションに従ういくつかの選択肢があった。セーフティーカーのままレースを終えることもできたし、レースを中断することもできた」
「だがニコラス・ラティフィのアクシデントでは、それらを正当化することはできなかっただろう。もしくは彼が下した判断が正しかったかもしれない」
なおアブダビGPではチーム代表からレースディレクターに”圧力”をかけるような無線連絡も見られていた。この件についてもFIAは対処を進めており、チーム代表者からイベント中に無線でレースディレクターに直接話を行なうことはできないシステムを構築することを検討しているという。
「チーム代表達はこの(無線)チャンネルに介入することはできなくなる」
「しかし質問はすることはできる。我々はこうした問い合わせに対応するスタッフとで”障壁”を作りたいと思っている。将来的にはレースディレクターが自らのタスクに集中することが可能となり、気を煩わせることはなくなるだろう」
FIAはアブダビGPの調査結果については、3月のF1開幕戦バーレーンGPで公表される予定だと明かしている。
彼らは2月にも臨時の会合を予定しているが、こちらは新会長に就任したモハメド・ベン・スレイエム体制への移行に伴う内政面での対応が主となるようで、アブダビGPの問題に関する議論は行なわれないようだ。
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