フェラーリ、昨年から秘密のシステムPASを使用。メルセデスDASと類似の効果?
メルセデスが今季マシンW11に導入した新システムDAS。フェラーリも昨年から、内部ではPASと呼ばれるシステムを投入し、DASと同じような効果を発揮することを目指していたことが明らかになってきた。
写真:: Giorgio Piola
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
Analysis provided by Giorgio Piola
メルセデスが2020年用マシンW11に搭載してきた革新的なステアリングシステムDAS(二重軸ステアリング)。その存在が明らかになった際、多くの人々は、メルセデスの直近のライバルであるフェラーリが、FIAに対してその違法性を訴え、システム使用の禁止を提言するのではないかと予想した。
しかしレッドブルは抗議する姿勢を見せたものの、フェラーリはこの件について楽観視。実際、過去にはフェラーリもDASのアイデアを検討し、実現を断念していたことも示唆していた。
一部の人々はそのフェラーリのコメントは、自己防衛策なのではないかと疑った。そして取材の結果、フェラーリがなぜメルセデスのシステムを警戒していないのか、その理由が明らかになった。フェラーリも昨年半ばから、DASと同様のメリットを生み出すことができるシステムを使っていたのだ。
このシステムは、内部関係者にはPAS(パワーアシスト・ステアリング)と呼ばれているものだ。このPASは、既にハースの2020年型マシンVF-20にも採用されるほど安定したモノであるようだ。
PASはDASほど高度なシステムではないが、メルセデスも2019年にはこのタイプのモノの開発に着手し、今年登場したDASの先駆けとなった。
メルセデスの2019年用マシンW10には、ふたつのラック&ピニオンが搭載され、可変アッカーマンアングル(ステアリングを切った際の左右のホイールの切れ角の差)調整システムを生み出し、ステアリングによる入力に応じて、それぞれのホイールを個別に操舵できるようにした。
振り返ってみれば、W10はそれまでのメルセデスと比較して、スローコーナーでの俊敏な反応が向上していた感がある。これは、この新しいステアリングシステムの効果が大きく出たものだったと考えることもできるだろう。
またこのシステムを導入したことにより、俊敏性が向上しただけでなく、タイヤを適切な作動範囲に維持することができるようになり、摩耗が減り、全体的なパフォーマンスを向上させることになった。
メルセデスのこのコンセプトを早々に見抜いていたフェラーリは、フランスGP以降の段階でPASを採用し、独自のシステムを開発することを決定した。ただそのシステムは大きく、より重く、より複雑なシステムである。余程のメリットがなければ、採用には至らなかっただろう。
コーナーの形状に応じてアッカーマンアングルを変化させることができる能力は、空力面での効果も生み出したはずだ。
ホイールとタイヤは、その後方に大きな乱気流を生む。この切れ角を細かく調整することができれば、乱流の向きもコントロールすることができ、ひいてはマシンの全体的な空力を整えることにも繋がり、ダウンフォース増加を実現することになるはずだ。
これらのことを考えれば、今季導入されたDASは、元々のコンセプトの進化版であると考えられる。ドライバーがステアリングホイールをストレートで調整し、さらにアッカーマンアングルをコントロールすることで、タイヤの摩耗や空気抵抗を排除することができるのだ。
フェラーリがPASをハースにも供給したということは、それにはかなりのアドバンテージがあったということ、そしてフェラーリがその効果と信頼性に完全な自信を持っていたということを示していると言える。
ただ、DASには寿命が設けられた。2021年シーズンに向けては2020年のシャシー等を継続して使用することが決まったにもかかわらず、メルセデスがこのDASを今季限りで使用禁止とする案に同意したからだ。
今年のF1は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開幕時期が大きく後ろ倒しになる見通しで、関係者に大打撃を及ぼしている。しかし、シャシー開発のための支出を強制的に削減することは、参戦チームにとっては大きな助けとなるはずだ。
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