スーパーGT 岡山公式テスト

スーパーGT公式テスト岡山で改めて痛感した「速いクルマは美しい」。カーボンニュートラル燃料導入で排気管に着目

岡山で2023年のスーパーGT公式テストが実施されたが、その際の関係者の証言は「速いクルマは美しい」といったフレーズを思い起こさせるものであった。

原田 了

編集: 2023/04/06 7:36

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

#36 au TOM'S GR Supra

 昔から「速いクルマは美しい」とか「美しいクルマは速い」というフレーズが多用されてきた。意味は文字通りだが、その理由には諸説がある。

 先ずは単純に、速いクルマはそれだけで美しく感じるというものだ。レースでトップチェッカーを受けるレーシングカーは、その雄姿が瞼に焼き付いてしまい、美しいというイメージがついて回る。

 しかし出版社に入社しサラリーマン編集者として業界にも慣れてきた頃に先輩から聞かされた説にも納得できるものがあった。それはF1のマクラーレン・ホンダに関するものだったけれど、マクラーレンはF1マシンを常にきれいに磨き上げてサーキットにやってくる。そして走行が始まっても順調にタイムを削っていくだけだから、チームスタッフはクルマを磨く余裕もたっぷりある、という論だった。

 確かに長い間レースを取材してきたけれど、土曜日の公式予選終了後にピットで突貫作業を行なっているクルマが決勝であっさり勝った、なんて例は極僅か。大抵のケースでは公式予選から順調に走り、ポールを獲って決勝までにピカピカに磨き上げられたクルマが、そのままトップチェッカーを受けることが圧倒的に多いように思える。

 今回、岡山国際サーキットで開催されたスーパーGT 公式テストでも“速いクルマは美しい”という好例に遭遇したのだが、その理由は後者に近い。綺麗にする……正確には汚れないような(汚さなくしている)クルマは速い、ということだった。

 スーパーGTでは今年からカーボン・ニュートラル・フューエル(CNF)を使用することになった。このCNFは、バイオマス由来で100%非化石の燃料だ。

ハルターマンカーレスが供給するCNF

ハルターマンカーレスが供給するCNF

Photo by: Masahide Kamio

 技術的にはまだまだ発展途上で、国内には大量に精製するシステムや設備が存在していないので、今シーズンのスーパーGTでは海外で生産されたものをシリーズを統括するGTアソシエイション(GTA)が一括輸入してチームに供給することになっている。ただ、価格が高価であり、パワーが低下してしまうという問題も抱えている。

 そこでトヨタと日産、ホンダの3メーカーでは技術者が奮闘しながら“燃焼”を進化させている。今回、岡山の公式テストでは上記3メーカーだけでなくチームやドライバーにもCNFについて聞いて回ったのだが、ホンダでNSX-GTの開発を統括するHRCの佐伯昌浩ラージプロジェクトリーダー(LPL)に初日に聞いたコメントが印象的だった。

 佐伯LPLにホンダ勢の仕上がり具合を訊ねたのだが、返ってきたコメントは「CNFへの対応は、トヨタさんが一番進んでいると考えています。日産さんも速いようで、そう考えるとホンダが一番遅れているんじゃないか」というモノだった。

 午前中の速さを引き合いに、タイムからすればホンダが最も進んでいるようにも見えるのですが、と水を向けると「トヨタさんが一番汚れてないんです」と佐伯LPLは言う。もう少し詳しく説明してもらうと「排気管の周りを見るとトヨタさんが一番きれい。日産さんは少し汚れているけれど、ホンダが一番汚れています」と言うのだ。

#100 STANLEY NSX-GT

#64 Modulo NSX-GT

#23 MOTUL AUTECH Z

#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z

#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra

#37 Deloitte TOM'S GR Supra

6

 CNFは従来のガソリンと比較するとわずかながら蒸発性に劣り、燃えにくいと言われている。綺麗に燃えなかった燃料が排気管から噴き出し、それがホンダ勢の車体に付着している……つまり、うまく“燃やし切っている”メーカーの排気管周辺は綺麗なはず、というのが佐伯LPLの主張だ。

 もっとも、当のトヨタ勢に関して車輌開発を統括してきた株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント、TRD本部MS開発部の佐々木孝博部長は「まだまだ進捗率は50%くらい。それも到達点を今見えているところで考えた場合で、その到達点もシーズンが進んで行けばまだまだ高くなってくるでしょうから」と控え目なコメント。そして「レースではいくら排気がきれいになっても、パワーが出てタイムが速くならないと勝てませんから」と続けた。

 一方、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社の取締役副社長であり、日産系チームの指揮を執る松村基宏総監督も「(進捗状況は)まだまだといったところ。基本的にCNFでは(これまで使用してきたガソリンに比べて)パワーダウンするということ。そしてオイル希釈などで壊れてしまう心配もあります。だからパワーの“落ち”をいかに少なくしていくか。そしてエンジンが壊れることがないようにして行くか。やるべきことはいっぱいあります」と苦笑していた。

 ちなみに2日目に3メーカーの車両を確認したところ、ホンダでもずいぶんきれいになっていた車輌もあったし、同メーカーでもチームごとに汚れ方が違っていることも確認できた。いずれにしても今シーズンのスーパーGTは、メーカーがしのぎを削る技術開発競争の舞台となるのは間違いない。しかも世界的なモータリゼーションの中で浮沈をかけた技術開発競争が展開されることになるのだから。

 かつて“レースは実験室”と言われてきたが、また新たな実験室が登場することになった訳で、これには興味を持って推移を見守っていきたいものだ。

 

関連ニュース:

あなたの意見が聞きたい!

Motorsport.comで何を見たいですか?

5分間のアンケートにご協力ください。

- Motorsport.comチーム

コメントを読んで投稿する

関連ニュース :

記事をシェアもしくは保存

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

前の記事 【スーパーGT】JLOC、第3戦鈴鹿後にウラカンGT3 “Evo2”導入を目指す。今季中のファクトリードライバー起用にも含み

次の記事 【ギャラリー】メーカーごとに汚れ具合に差が? スーパーGT岡山テストでのGT500車両の排気管周辺

Top Comments

コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?

View More & Comment

More from

原田 了



グループC時代を俯瞰できる6台の競演。エキゾースト・サウンドの魅力を再確認

スーパーGT

スーパーGT 2022/08/29

グループC時代を俯瞰できる6台の競演。エキゾースト・サウンドの魅力を再確認



ARTAに強力な“助っ人”。ベテラン伊与木仁エンジニアがチームに合流

スーパーGT

スーパーGT

第4戦:富士

2022/08/11

ARTAに強力な“助っ人”。ベテラン伊与木仁エンジニアがチームに合流



GT300のベテランが生み出す“ケミストリー”に注目。JLOC小暮卓史は今も進化している?

スーパーGT

スーパーGT 2022/05/09

GT300のベテランが生み出す“ケミストリー”に注目。JLOC小暮卓史は今も進化している?

最新ニュース



全部自分のせいだ……ルイス・ハミルトン、戦略ミスの責任を認める「チームに貢献したかった。次、必ず挽回する」

F1

F1 F1

シンガポールGP

1 時間前

全部自分のせいだ……ルイス・ハミルトン、戦略ミスの責任を認める「チームに貢献したかった。次、必ず挽回する」



アロンソ、ホンダ製PUの奇妙な挙動に苦しむ「マシンがサーキットのどこにいるのか、正確に把握できていなかったみたいだ」|F1シンガポールGP

F1

F1 F1

シンガポールGP

2 時間前

アロンソ、ホンダ製PUの奇妙な挙動に苦しむ「マシンがサーキットのどこにいるのか、正確に把握できていなかったみたいだ」|F1シンガポールGP



目指していた結果には届かなかった……ホンダF1折原エンジニア、シンガポールGPを振り返る「ある程度の期待を持って準備してきたが」

F1

F1 F1

シンガポールGP

8 時間前

目指していた結果には届かなかった……ホンダF1折原エンジニア、シンガポールGPを振り返る「ある程度の期待を持って準備してきたが」



「無理です」「どうしようもできへん!」スーパーフォーミュラ第10戦で“ピットレーン玉突き事故”が発生、4台のマシンが道塞ぐ

スーパーフォーミュラ

SF スーパーフォーミュラ

第9戦・第10戦富士

10 時間前

「無理です」「どうしようもできへん!」スーパーフォーミュラ第10戦で“ピットレーン玉突き事故”が発生、4台のマシンが道塞ぐ

Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.

フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。

次の 2 つのオプションがあります。

購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします

広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード

お知らせの管理

登録