スーパーGT

今後国内レースのトレンドに? ドライバー出身の“アドバイザー”はチームに何をもたらすのか

スーパーGTでチャンピオンに輝いたTEAM IMPULの星野一樹をはじめ、国内カテゴリーではつい最近まで現役だった(もしくは今も現役の)ドライバーをチームの“アドバイザー”に起用する例が見られるが、これはチームにとってどのようなメリットをもたらすのか?

戎井健一郎

公開日時: 2023/01/25 3:36

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Kazuki Hoshino, Yuhi Sekiguchi, carenex TEAM IMPUL

 2022年のスーパーGT・GT500クラスで、実に27年ぶりとなるシリーズタイトルを獲得したTEAM IMPUL。王者となった平峰一貴が会見で語ったのは、同年からチームに合流した星野一樹の存在の大きさであった。

「星野一樹さんがチームに加わってくれたことで、ものすごく変わっていると思います。それは(ベルトラン)バゲットさんも(星野一義)監督も、チームのみんなが感じていることだ思います」

 星野は2021年シーズンを最後にスーパーGTから引退。以降は父が率いるインパルをサポートする役割を担い、戦略面等で様々なアドバイスをしてきた。本人曰く正式な肩書きはないと言うが、周囲からは“テクニカルアドバイザー”などと呼ばれている。

 

Photo by: Masahide Kamio

 そして昨年のインパルは、スーパーGTでタイトルを獲得しただけでなく、スーパーフォーミュラでも久々のワンツーフィニッシュを達成してチームランキング2位に。ワンツーのもてぎ戦では関口雄飛と平川亮の激走はもちろんのこと、ピットウォールの星野らが組み立てた戦略も光った。

 両カテゴリーでシリーズの主役となったインパルだが、星野はチームが常に“良い選択”をし続けるための手助けをすることを意識しているという。例えばスーパーGTでは、ドライバーふたりとベテランの大駅俊臣エンジニアとの間に入り、ドライバー目線での提案をしている。

 例えばレースウィークでのランプランひとつをとっても、星野は現代のスーパーGTを戦うドライバーたちの心境が手に取るように分かる。レースウィークの早い段階で予選と決勝の出走順が決まっていれば、精神的に準備がしやすいだろう。練習走行でも、このシチュエーションであれば平峰は先にドライブしたいはず……そういった細かい部分をケアしてエンジニアとコミュニケーションをとるのも星野の役割だ。

「もちろんエンジニアもそういった面を汲んでいない訳ではありません。ただ大駅さんが『これでやって!』と言ったことに対して、『大駅さん、そこはちょっと待ってよ』と言えるような人がいればいいと思っています」

 そう語る星野。セットアップにおいても、データという面だけでは語れない“伸びしろ”の部分があるとして、ドライバー視点での持論を展開した。

「例えばエンジニアから『データではこうなってるから、アンダーステア傾向でもこのセットアップでいってよ』と言われても、『データではそうかもしれないけど、気持ち的にこっち(セットアップ)の方が行けるのなら、こっちの方が上積みあるでしょう」と言うことがあります」

「ポテンシャルが高いというデータは出てるのかもしれないけど、ドライバーが10あるポテンシャルの内7しか出せないフィーリングだったら、ポテンシャルは9でもドライバーが9出せる方が結果として上じゃないかと。そこは数字で戦っている人と、乗って戦っている人との間で考え方の違いがあるんですよ」

「そういう意味でも、ドライバーとエンジニアの間にひとり立っている方が良いだろうなと、自分が乗っている時から思っていました。やっぱり乗ってるのって人間じゃないですか」

 また星野曰く逆のシチュエーションもあるとのことで、ピットウォール側の人間だからこそ気付ける視点から、ドライバーを説得することもあるという。

「自分が乗っている時は気付かなかったけど、外から見ると『ドライバーは色々言ってるけど、確かに(エンジニア側が)合ってるわ』と思うことがあります。そういう時はドライバーが納得いってなさそうな時でも『とりあえずこれでアジャストしてみて。上積みがあるかもしれない』と言う時はあります」

「レースの世界では選択肢が常に枝分かれしていく中で、どこかで間違えると戻ってこれなくなってしまうので、その都度良い選択をしていきたいんですよね。そういう時に少しでも手助けになればと思っていました」

 チームが星野のようなアドバイザーを起用している例は、インパルに限ったことではない。昨年のスーパーフォーミュラでダブルタイトルを獲得したTEAM MUGENも武藤英紀がレースウィークに帯同しており、TEAM GOHでは伊沢拓也がベテランの岡田秀樹と共にチームの若手ドライバーを支えていた。

武藤(右)と話し込む当時TEAM MUGENの笹原右京

武藤(右)と話し込む当時TEAM MUGENの笹原右京

Photo by: Masahide Kamio

 TEAM MUGENでスーパーフォーミュラを2連覇中の野尻智紀は、自らチームに武藤の起用を打診したほど、アドバイザーの重要性を痛感している。

「武藤さんが入ってくれて、アドバイザーとして外から見てくれたのは助かりました」と野尻は言う。

「2021年は伊沢さんが見てくれていましたが、次の年からは他チームに移られたので、武藤さんにお願いできないかとチームに相談していました」

「パフォーマンスを上げるために、外から見た目線は有効だと思います。こういうことをもっと他のチームもやればいいのに、と思うくらいです」

 このように、チームの橋渡し役、潤滑油的な役割を担うアドバイザーの存在はチーム力の底上げに寄与していると言えるだろう。今後はこのようなチーム体制が一種のトレンドになっていくかもしれない。

 

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