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試される忍耐力。マクラーレンが”今のところ”低迷するリカルドを信じ続ける理由とは?

昨シーズンマクラーレンに加入して以降、ダニエル・リカルドは一貫した速さを発揮できていない。契約満了を待たずに放出という噂も出る中でも、チームはリカルドの再起を信じてサポートを続けている。

Daniel Ricciardo, McLaren MCL36

写真:: Erik Junius

 12ヵ月前の5月末、モナコGPでマクラーレンのダニエル・リカルドは新加入のチームで流れを掴むべく戦いを続けていた。リカルドは、表彰台の3番手に向けて快調に飛ばすチームメイトのランド・ノリスに周回遅れにされた。「チームメイトに同情はしない」というノリスの姿勢とふたりの溝は、F1ドキュメンタリー『Drive to Survive』の最新シリーズでも情け容赦なく描かれていた。

 当時、加入直後のリカルドはマクラーレンチームやそのマシンに慣れることを目標としていた。その後もノリスのパフォーマンスに及ばないレースが続いたが、イタリアGPではマクラーレンに9年ぶりの勝利を届けた。レース後の無線では「僕はまだ終わっていない」と語り、それまでの批判に結果で答えた。

 新レギュレーション下のマシンで迎える加入2年目では、ようやく切れのあるリカルドが見られるのではないかと期待も高まった。

 しかし、2022年シーズンが3分の1を終えた時点でも期待は現実にはなっていない。第7戦モナコGPでも予選14番手、決勝13位と苦戦を強いられた。

 モナコGPで苦しんだリカルドと、対象的に6位入賞を果たしたノリス。昨年に似た構図ではあるが、その受け取られ方は大きく異なるように感じられた。

 リカルドはもはやチームに慣れている段階としてではなく、経験豊富ながらも期待通りのパフォーマンスが発揮できていないドライバーとして目されているのだ。

 そのチームからの失望も目に見えてくるように……いや、不満を隠さなくなってきたとも言うべきだろうか。

 モナコGPの週末に先立ち、マクラーレンのザク・ブラウンCEOは、リカルドがチームからの期待に応えられていないと公然と批判。リカルドはそれに対して「自分以上に厳しい人はいない」と同意した一方で、2023年末までドライバー契約は残っていると牽制した。ただ、ブラウンは契約満了までに早期解消が可能な”仕組み”はあるとも示唆している。

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 リカルドがモナコGP終了時点でポイントを獲得したのは、オーストラリアGPの6位と、エミリア・ロマーニャGPスプリントでの6番手の2度。エミリア・ロマーニャGPの決勝レースでは、1周目にカルロス・サインツJr.(フェラーリ)と接触して無得点となっており、獲得ポイントは11点に留まっている。 

 マクラーレン自体は開幕戦バーレーンGPこそ苦戦したものの、ノリスはエミリア・ロマーニャGPで3位表彰台。その他でも入賞を積み重ね、リカルドの4倍以上の計48点を手にしている。 

Daniel Ricciardo, McLaren MCL36

Daniel Ricciardo, McLaren MCL36

Photo by: Erik Junius

 ひとりが速さを見せる一方で、もうひとりは苦境から抜け出せない。そうした難しい状況下でも、マクラーレンのアンドレアス・ザイドル代表は、常に実践的な考え方をしている。

 モナコGPでリカルドが予選Q2敗退となった際も、彼は次のようにチームへ呼びかけた。 

「明確な目標を持つダニエルをサポートし、欠けている最後のピースを見つけるために、ただ我々は冷静さを保ち、週末ごとにデータから見えるモノを分析し続ける」 

「ダニエルは熱心だし、経験も豊富だ。我々はそれを機能させるために努力を続けるのだ」 

 リカルドは今季、マクラーレン『MCL36』のパフォーマンスを最大限引き出すことに苦戦していると公言しており、モナコGPではマシンとの噛み合わせについて「理解できる時もあれば、ハッキリしない時もある」と認めていた。 

「マシンが100%の力を発揮して、このような……スペクタクルなラップとも言えるモノを引き出せると思うには、僕としてはまだ少しトリッキーなんだ。そう言うと自分を誇張しているようにも聞こえるけど……そうだね、そうした渾身のラップを叩き出せれば良いんだと思う」 

 リカルドはこれまで、全幅の信頼を置けるマシンと共に成功を収めてきた。そしてモナコという狭く曲がりくねったコースでは、特にその点が要求されることをモナコウィナーのリカルドは理解しているはずだ。 

 今年のモナコGPでは、決勝レース開始前にコースを濡らした雨を転機に、状況を変えるチャンスもあったかもしれない。レースに”タラレバ”はないが、そう思わせるだけに13位でレースを終えたのはかなり厳しい結果とも思えてくる。 

 ザイドルはレース後次のように語った。 

「力強い週末ではなかった」 

「我々は周囲に大きなインパクトを与えられるほどの速さはなかった」 

 またザイドルは「ふたりのためにマシンを開発し続けることも我々の責任だ」として、ノリスとリカルドが最大限のパフォーマンスを発揮できるサポートを続けていくという。ひいては、それがチーム全体のためになるのだ。

「例えば、予選で5番手になれれば良いという訳ではない」 

「我々は、レースでの勝利やチャンピオンシップ獲得を目指して戦いたいと思っている」 

「チームのあらゆる分野で、そしてダニエルとどう働くかという点で、前進し続ける必要がある。上手くいけば、ステップアップを続けることができるのだ」 

 リカルドがマシンに慣れ、シーズン残り3分に2に向けてパフォーマンスを向上させていくために、マクラーレンがサポートを続けることは当然だろう。しかし、それには間違いなくタイムリミットがある。 

 あと5〜6戦もすればF1は夏休みに突入し、ドライバーの移籍や引退に関する話題が盛んになってくる。この時期は単なる憶測や眉唾物の噂を含めて様々な情報が飛び交うため、欧米などではSilly season(馬鹿げたシーズン)とも呼ばれるが、リカルドが座るマクラーレンのシートは間違いなく話題に挙げられるだろう。 

 リカルドにしてみれば、例え2023年末まで契約があったとしても、憶測や混乱を招くことは避けたいに違いない。 

Andreas Seidl, Team Principal, McLaren

Andreas Seidl, Team Principal, McLaren

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

 こうしてマクラーレンとリカルドの関係に注目が集まると、些細なことでも周囲の注目を集めることになる。リカルドがモナコのフリー走行でクラッシュを喫した際、レースエンジニアのトム・スタラードは「マシンは大丈夫?」とリカルドに無線で話しかけ、リカルドは「えっと、僕は大丈夫……マシンはダメだ」と返した。その後スタラードは、リプレイ映像でマシンを見て彼からの返答の意図を理解したという。 

 ただ、その映像とふたりのやり取りはソーシャルメディア上で拡散され、リカルドがチームを去る前触れだと騒がれた。リカルドがヘルメット後部にf**k'em all(全員、蹴散らせ)の頭文字である「FEA」を入れていたこともネット上で注目を集めた。ただこれは、誰かに向けられたメッセージではなく、マシンに乗り込む際に自分を奮い立たせるためのモノだと説明している。

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 リカルドは2011年のイギリスGPで今はなきHRTからF1デビュー。翌年からはトロロッソ(現アルファタウリ)で2シーズンを過ごした後、同郷の先輩であるマーク・ウェーバーの引退に伴いレッドブルへ昇格した。 

 レッドブル初年度でF1初優勝を含め計3勝、表彰台8回をマークし、それまでF1を席巻してきたチームメイトのセバスチャン・ベッテルを上回る活躍を見せた。その後は2018年のモナコGPを始め4勝をマーク。彼の豪快なブレーキングが人々を魅了した。 

 マクラーレンは、リカルドがレッドブルを離れることとなった2018年にドライバーとして迎え入れることを望んでいた。その時はルノー(現アルピーヌ)にリカルドを奪われたが、2021年にようやく念願のドライバーを手に入れた。 

 名門復活を目指すマクラーレンとリカルドのスピードや経験がシナジーを生むとも思われたが、2年目を迎えた今もリカルドにかつての煌きは戻ってこない。 

 しかし、マクラーレンはリカルドの真の実力を理解している。前述にもあるイタリアGPでは、リカルドはスタートからトップに立ち、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とルイス・ハミルトン(メルセデス)の相打ちがなくとも、完璧なレース運びを見せた。彼のポテンシャルとハングリー精神はまだ尽きていないからこそ、マクラーレンはリカルドから全力を引き出すことにこだわり続けているのだ。 

 昨年、リカルドは夏休み期間で気持ちを一新。シーズン後半に弾みをつけることができた。しかし、今年はベルギーGP以降の3連戦での本領発揮を待つことができるだろうか。 

 夏休みまでの6戦のうちに、マクラーレンがリカルドとの将来について考えを改める可能性も高い。チームはリカルドの成功に向けて尽力している。しかし事態がすぐにでも好転しなければ、その忍耐力が試されることになるだろう。 

 
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