真の狙いはデグラデーション軽減じゃない? アストンマーチン、タイヤの”皮むき”戦法を続けた真の理由を明かす
アストンマーチンは近年、”皮むき”を行なったタイヤでレースを戦う独自の戦略を行なってきたが、その目的はタイヤコンパウンドの硬化を巧みに行なうことだけではないようだ。
アストンマーチンは今季、フリー走行でミディアムコンパウンドとハードコンパウンドのタイヤを1~2周だけ使用し、そのユーズドタイヤをレースで履くというタイヤ戦略を頻繁に取ってきた。
このタイヤ戦略は、タイヤに緩やかな熱サイクルをかけるための行動……通称“皮むき”を行なうことで、コンパウンドを硬化させ、レースでのデグラデーション(性能劣化)を低減させる効果があるという説が有力視され、注目を集めていた。
ただアストンマーチン曰く、このタイヤ戦略がもたらす本当の効果は、別のところにもあるという。
チームでパフォーマンス・ディレクターを務めるトム・マッカローは実際、この方針はピットストップのタイヤ交換練習を強化するために採られたモノだと説明する。
他チームと比べて、今季導入の18インチタイヤへの適応にアストンマーチンのピットストップに苦戦。チームは、レーシングスピードでマシンがピットボックスへ飛び込んでくるリアルなプレッシャーの中で改善策を見つけようと考えたのだ。
マッカローは次のように語る。
「ピットストップの点では、チームは8~10番手というところだった。ピットストップが上手くいかず、安定もしない状態では、戦略的なレースをすることができない」
「ただ、練習ではそれほど悪くないということを見つけた。でもマシンがボックスに入ってくる時……特に詰まっている状況では、様々な理由で苦戦を強いられたのだ。だから、まずは『レース週末でリアルなピットストップ練習ができれば、それが助けになる』というところから始めた。そうしたら、何回できるのか?」
「レースでは使わないタイヤを使うことも多い。これはピットストップの練習をするためなんだ。それが一番の理由だ」
Sebastian Vettel, Aston Martin AMR22
Photo by: Andy Hone / Motorsport Images
ただマッカローは、デグラデーション低減という点で、レースでは新品タイヤよりも皮むきを行なったタイヤの方が有利に働く場合もあると考えている。
「我々はコンパウンドを理解しようと努めている。特有のサーキットでは、それがほんの少しだけ役立つ状況もある」
そうマッカローは言う。
「でも、一般的にはそれが理由ではないのだ」
「長所と短所があるが、純粋にスタート時のパフォーマンスという面では、新しいタイヤを使いたいものだ」
なお、F1へタイヤを供給するピレリは、アストンマーチンの皮むき戦略を注目していたものの、それがコース上のパフォーマンスにどのようなアドバンテージをもたらすかについては、常に疑問視していた。
ピレリ・モータースポーツの責任者を務めるマリオ・イゾラは、タイヤの皮むきについて、次のように語っている。
「私の考えでは、我々のタイヤとコンパウンド特性では、これはあまり意味がないと思う」
「しかしこれは彼らの選択だ。禁止されている訳ではない。実施は可能だ」
「通常、このラップでタイヤの皮むきを行なうと、グリップのピークが失われるかもしれないが、コンパウンドをもう少し安定させることができる。しかし、それはコンパウンドのデザイン次第だ」
「ただ、コンパウンド硬化のレベルや僕らのプロダクトについて知っている限りでは、あまり違いは生まれないと思う」
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