今季限りでF1活動終了のホンダ。今後のレッドブルへの協力体制は「まだ未定」:ホンダ、モータースポーツ部長に訊く
ホンダの長井昌也モータースポーツ部長は、今季限りでホンダがF1活動を終了した後、どのような形でレッドブルに協力していくのかはまだ未定であると語った。
2021年シーズン前半戦、ホンダ製のパワーユニット(PU)を使うレッドブルは、コンストラクターズランキング2番手で終えた。ただイギリスGPとハンガリーGPは、彼らにとっては実に不運なレース……いずれのレースでも、特にドライバーズランキング首位を争うマックス・フェルスタッペンは、他車との接触によりダメージを負い、わずか2ポイントの獲得に留まった。その2レースを迎える前には、同チームは5連勝。メルセデス勢に大きなポイント差をつけ、ランキング首位をひた走っていた。
2014年に現行のパワーユニット(V6ターボエンジン+運動&熱エネルギー回生システム)規則が導入されて以降メルセデス勢が圧倒的な強さを誇り、7年連続でのダブルタイトルを獲得してきた。今季のレッドブル・ホンダのパフォーマンスは、そのメルセデス勢のタイトル獲得連続記録に、終止符を打つことができるかもしれない。
しかしホンダは今季限りでF1活動を終了することを決めている。その好調なパフォーマンスに、今季限りで辞めてしまうのはもったいないという話が、ファンのみならずホンダ社内でも上がっているという。
「みなさんからも”もったいない”という声はいただいています。撤退を撤回できないのか……というお言葉もあります」
そう語るのは、ホンダの長井昌也モータースポーツ部長である。しかし長井部長は、いくら今シーズンの成績が好調だからといっても、今季限りでF1活動を終了するという決断が変わることはないと語る。
「これから弊社としては、開発リソースをカーボンニュートラルに振り向けなければいけない……そういうお話を以前させていただきました。その考えは変わりません。ですから、撤退を撤回することはありません」
「でもそれだけに、今年にかける気持ちは、研究所のスタッフも含めて皆同じです。その想いがレッドブルにも伝わって、今年のような結果が出ているのではないかと思います。まだシーズンは残っていますが、悔いのないレースをしたいと思います。頭の中はそれだけです」
「今年一生懸命やりますから、それを最後まで、ファンの皆さんにも見届けていただきたいという気持ちです」
なおホンダとしては今シーズン限りでF1活動を終了させるものの、来季以降もレッドブルはホンダ製のPUの技術を引き継ぎ、レッドブル製PUとして使い続けることになる。そのため来季に向けた開発も、今年中はホンダが担うと言われている。
では来季は、ホンダはどのようにレッドブルのPUのプロジェクトに関わるのだろうか? これについて長井部長は、次のように語った。
「実際のところ、どのようにやっていくかというところは、レッドブルとの話が終わっていません。彼らもPUの部門を立ち上げたわけで、どこまで我々のエンジンのノウハウを渡し、そのための移行期間に我々がどうサポートするのかということは決めていないです」
そう長井部長は語る。
「しかし渡したからあとはよろしく……ということはせず、レッドブル製のPUとしてしっかりとレースで戦えるように、我々もできることはやっていきたいと考えています。ただ、どこまでやるか……という詳細はまだ決まっていないということです」
長井部長の言葉を聞けば、来季も何らかの形でホンダがレッドブルF1に関わり続けるというようにも聞こえる。レッドブルのF1”プロジェクト”のどこかに、ホンダの名前が引き続き載せられるようなことになるのか……そう尋ねると、長井部長は次のように語った。
「我々はPUサプライヤーはやりませんから、あちこちにホンダのロゴが出るということにはしないようにしようとは思っています。辞めたはずなのに、変わってないな……というようなことはしないつもりです」
「来年の主体はレッドブルです。そういうようにしたいと思っています」
「スポンサーとしてマシンに弊社のロゴが出るか……そういう話も決まっていません。レッドブルとしては、スポンサーを取ってくるというのも仕事の一部でしょうからね。でもそういう話は決まっていないです」
なお現行のPUは、2024年まで使われることになっており、既に2025年から導入予定の新PUの規定に関する話し合いが開始されている。これには、現在はF1に参戦していないフォルクスワーゲン・グループも参加しているというが、ホンダはここには加わっていないという。
「これには、我々は関わっていません。参戦終了を公にしていますから、今の時点で2025年以降のお話という場に出ても、責任ある発言はできません。なので、遠慮させていただいております」
「これだけ調子がいいからまたやれば良いという、安直な考え方はありません。でも、PUは今後も変わっていくでしょう。レースのやり方も、カーボンニュートラルの流れの中で変わっていくかもしれない。その中で、我々が戦える頂点レースというモノがでてくれば、それに参戦することを考えるかもしれません。そういう時がやってくるかもしれないです」
「今の時点で何年後に戻るということを考えているわけではありません。でも今、F1をやることで、我々の会社にとっては、レースやモータースポーツは大事……ということを社内に刻み込めればと、モータースポーツ部長としては切に願っています」
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