中止が決まった2021年F1日本GP……実は開催実現まであと少しのところまで迫っていた?

2021年のF1日本GPの開催が断念されることになった。これで、昨年に続いて2年連続で、日本国内でのF1グランプリが開催されないことになった。しかしmotorsport.comの取材によれば、開催に向けては多くの動きがあり、実現まであと一歩のところまで迫っていたという。

中止が決まった2021年F1日本GP……実は開催実現まであと少しのところまで迫っていた?

 F1日本GPが、2年連続で開催されないことを、鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドが発表した。その理由は、F1関係者の入国許可に関する決定が期日までにされなかったことにある。

 今年のF1日本GPは、ホンダF1にとっては最後の母国レースとなる予定だった。しかもそのホンダがパワーユニットを供給するレッドブルは、メルセデスと熾烈なタイトル争いを繰り広げており、さらにF1最終年ということもあってホンダがタイトルスポンサーも務める予定だった。その上、今季デビューを果たした久々の日本人F1ドライバー角田裕毅の、初めての母国レースともなる予定だった。

 しかし、そのレースは開催されないことが決まった。

 開催断念が決定した理由は、前述の通りF1関係者が日本に入国する際に必須のビザ発給決定が遅れたことにある。現在日本は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う水際対策の一環として、外国人の入国を著しく制限している。実際、スーパーフォーミュラなどに参戦するはずだった外国人ドライバーのうち数人は、入国ビザを取得することができず、参戦が叶わない状態になっている。

 そんな中でF1日本GPを開催するためには、ドライバーやチームスタッフなどF1関係者に”特例”の入国許可を得なければならない。しかも1000人以上という数だ。

 この1000人という数は、東京オリンピック、パラリンピックを除けば、今年最大規模の入国者数ということになる。しかもF1日本GPはオリンピックやパラリンピックといった国が関与するイベントとは違い、モビリティランドという”一私企業”が主催するモノ。その発給が簡単ではないことは、容易に想像できるだろう。

 この関係者の入国の確約が、機材の輸送などを考えた際の期日に間に合わなかった……それが開催断念の本当の理由だという。

 モビリティランドの田中薫社長は以前motorsport.comの取材に対し、関係者の入国可否がF1日本GPの開催に向けて最大の障壁になると語っていたが、この懸念が現実のモノとなってしまったわけだ。

 しかしある情報筋の話によれば、今回の決断に至るまでには紆余曲折があったようだ。

 新型コロナウイルスの感染が収まらない状況もあり、当初からF1関係者の入国ビザ発給は非常に困難なチャレンジだったという。

 ただモビリティランドとF1側は、入国許可の要件として必要になるであろう防疫対策に対する準備を進めていた。先日発表されたプレスリリースからも、専門家の監修の下、隔離状態を保つ宿泊・移動体制の構築や、到着空港での受け入れに関わる調整など、様々な協力者のバックアップを得て、多岐にわたる調整が進められていたことが伺い知れる。

 実際F1は各国を転戦するにあたり、ソーシャルバブルを常に構築している。それでも新型コロナ感染者が発生した場合にも即座にそれを発見することができるよう、定期的な検査も実施している。この体制を日本GPでも講じる予定だった。

その間に東京オリンピックが開催され、奇しくも時を同じくして日本国内の感染者数が急増。その状況を鑑み、観戦客数の著しい制限、さらには無観客での開催も辞さない構えだった。しかし、関係者の入国の確約はなかなか取れなかった。

 一方で東京オリンピック開会の前後で状況は動き、ビザ発給に関するリクエストが相次いでいたのだという。

 当初はオリンピック閉幕直後に開催可否を判断する予定だった。しかし前述の連絡が入ったことにより期限を後ろ倒し、正式な入国許可の連絡を待っていた。ところが、結局は予定されていた期日にビサ発給に関する正式連絡がなく、協議の結果、改めて開催可否の判断期限を再設定。しかしこの再設定された期限までにもビザ発給の正式連絡がなされなかったようだ。

 その結果モビリティランドとF1は、やむを得ず今年のF1日本GPの開催を断念することを決断しなければならかったのだ。

 新型コロナウイルス感染拡大により、国際的なイベント開催は簡単ではない状況だ。しかし、関係者の努力により、実は開催実現まであと一歩というところまで迫っていたのだ。

 前出の情報筋によれば、外国政府もF1日本GPの開催を熱望し、それを日本国政府に対して発信していたという。

 契機になったのは東京オリンピックだ。ある国のスポーツイベント等を取り仕切る首脳は、東京オリンピックの開会式に出席するために来日した際、政府高官に対して、日本GPの開催実現を願うというメッセージを語ったという。さらに国の大使館は、日本の担当省庁に対し「オリンピック、パラリンピックに次ぐ国際的スポーツイベントであるF1日本GPを、ぜひ開催して欲しい」という書簡を送ったという話もある。

 さらにF1内部でも日本GP開催を強力に後押しする動きがあったようだ。当初実務レベルでは、日本GP開催に向けて諦めのような雰囲気もあったという。しかしF1のステファノ・ドメニカリCEOは、日本GP開催をなんとか実現すべく最大限の努力をするよう、声高に指示したという。その結果、本来ならばもっと早い段階に設定されるはずの開催可否判断の期日を、この8月まで遅らせることができたのだろう。

 最終的には開催が断念されることになった2021年のF1日本GP。しかし主催者のモビリティランドそしてF1はもちろん、関係省庁を含めた多くの協力者による開催に向けた様々な動きがなされていたようだ。

 

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