F1分析|フェラーリF1-75の過激なサイドポンツーンデザイン。2000年台後半に流行した考え方が復活?
フェラーリの2022年マシンF1-75は、過激なサイドポンツーンのデザインが注目を集めた。これは、2000年台後半に流行したデザインの最新版ではなかろうか?
2月17日に公開されたフェラーリのニューマシンF1-75。翌18日にはフィオラノでデモ走行を行ない、早速サーキットデビューを果たした。
このフェラーリF1-75は、実にアグレッシブなデザインのマシンだった。中でも特にサイドポンツーンは過激。エアインテークや下部のアンダーカットももちろんだが、上面が窪み、ショルダー部分が盛り上がっている所は大いに目を引く。
おそらくこれは、サイドポンツーン上面の気流を後方に向かって綺麗に流そうとする処理なのだろう。ショルダー部の盛り上がりは、気流を外に漏らさぬようにするガイドとしての役割が持たされているように見える。
実はこれと同様の処理は、実は以前にも存在していたのだ。
2000年台前半、F1マシンのサイドポンツーン部分には排熱用のチムニー(煙突)と呼ばれるパーツが存在していた。2007年のマクラーレンMP4-22は、サイドポンツーン前端に取り付けられたボーダウイングとこのチムニーを連結させてサイドポンツーン上にフェンスを作り、サイドポンツーン上にエアダムを形成した。これによって、リヤウイングに効果的に空気を流そうとしたのだった。
これは翌年には複数のチームが追従。フェンスの規模の大小はあれど、トレンドのひとつとなった。
ただ2009年からはテクニカルレギュレーションが大きく変更。マシンに取り付けることができる空力付加物が著しく制限された。サイドポンツーン上のフェンスやチムニーも、この例外ではなかった。よってエアダムは2008年限りで見納め……となるように思えたが、2009年にもこの考え方を続けたチームがあった。
BMWザウバーF1.09
Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images
BMWザウバーのF1.09は、サイドポンツーンのショルダー部分が盛り上がる形状になっていた。これにより2007年のマクラーレンほどではないが、やはりエアダムを作った。
ただこのエアダムの考え方は、徐々に見られなくなっていく。レギュレーションが変更されたこともあるが、F1マシンのコンセプトがリヤウイングを活かすことよりもディフューザーを活かすことに移り変わっていったからだ。その結果サイドポンツーンが小型化し、フロアへと気流を導くようになっていった。
そんな中でも、サイドポンツーンのエッジを立てることを選んだチームもあった。それが2011年のマクラーレンである。マクラーレンはMP4-26のサイドポンツーンをL字形にし、エンジンカウルとの間に空間を作った。そしてここを通った気流を後方に流したのだ。ただ、サイドポンツーンの後端は早い段階でフロアまで落ち込んでいるため、前述のエアダムとは異なりディフューザーを活かすための手法だった。実際エキゾーストがフロア部分に存在しており、ここでエアダム部分を流れてきた気流を加速させ、ディフューザーの効果を高めていたと考えられる。
フェラーリF1-75は、エアダムの後方にもサイドポンツーンが続いており、リヤウイングを活かすための手法であると思われる。なおエアダムはなくとも、サイドポンツーンの上面が後方に向けて地面と比較的水平に保たれているマシンは、同じようにリヤウイングを活かそうとしているのだろう。
2022年に導入される新レギュレーションは、ウイングも含めたマシン上面でのダウンフォース発生量を極力減らし、マシンの後方に発生する乱気流を削減、さらに乱流を受けても空力パフォーマンスに影響を及ぼしにくいようにしたモノだ。その一方でフロア下にベンチュリ・トンネルが設けられ、グラウンド・エフェクト効果で大きなダウンフォースを獲得しようとしている。
それを考えると、リヤウイングでもしっかりダウンフォースを稼ぐことができればプラスになるはずである。それを目指したチームが、複数存在しているわけだ。
しかしその一方で、ここ数年のコンセプトを踏襲し、サイドポンツーンの後方をフロアに向けて落とし込んでいるチームも存在する。こちらはディフューザーを活かし、グラウンド・エフェクト効果をさらに高めることに主眼を置いているのだろう。
コンセプトが分かれた今シーズン。今後もこのまま異なるコンセプトのままシーズンが進んでいくのか、あるいはどちらかに集束するのか。興味深いところである。
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