F1分析|アロンソの”12台抜き”はただの幸運ではなかった? フリー走行から示していた高いパフォーマンスと好戦略
アルピーヌのフェルナンド・アロンソは、F1サンパウロGPの決勝で12もポジションを上げ、5位に入賞を果たしたが、レースペースを分析すると、これは幸運でもなんでもなかったことが分かる。
Fernando Alonso, Alpine A522, Esteban Ocon, Alpine A522
Mark Sutton / Motorsport Images
F1サンパウロGPでは、アルピーヌのフェルナンド・アロンソが5位入賞を果たした。17番グリッドから12台抜き……奇跡のようなポジションアップのように見えるが、実はレース中のペースを見れば、ある意味当然の結果のようだ。
アルピーヌ勢は予選で2台揃ってQ3に進出。Q3では雨の影響もあり、エステバン・オコンが6番手、アロンソが7番手となったが、それでも好結果だったと言えるだろう。
ただ土曜日のスプリントは悲劇的だった。スタート直後のターン4立ち上がりでまさかの同士討ち。この時は大事には至らなかったが、その後メインストレートに入ったところえ再び接触。アロンソはフロントウイングを壊して最後尾まで転落し、オコンもフロントウイングとサイドポンツーンのダメージにより、18番手まで後退してフィニッシュした。
ただ決勝では2台が揃って速さを見せ、アロンソが5位、オコンが8位とダブル入賞。ランキング4位を争うマクラーレンが無得点に終わったので、大きなリードを持って最終戦に挑むことができる。
さて今回のアロンソの12台抜きは、偶然でもなんでもなかった。サンパウロGPでのアルピーヌは、実に速かったのだ。
F1サンパウロGP決勝レースペース推移グラフ
Photo by: Motorsport.com / Japan
上のレースペース推移のグラフを見れば、それは一目瞭然である。ピンク色の折れ線で示されたのが、アロンソのレースペースだ。第1スティントでは後方にいたためそれほど目立たないが、第2スティントではタイヤがより新しいこともあるがメルセデス勢と遜色ないペース。さらに第3スティントでも、メルセデス勢と同じペースで走った。
中団グループとは圧倒的に異なるペースであり、もし上位グリッドからスタートしていればどんな結果を残すことになったのか、興味深いところである。
この傾向は、実は土曜日のフリー走行の時から見ることができていた。
F1サンパウロGP FP2ロングラン分析(ソフト)
Photo by: Motorsport.com / Japan
これはフリー走行2回目での、ソフトタイヤでのロングラン時のペース推移である。薄いピンクがオコン、濃いピンクがアロンソのペースを示したものだ。特にオコンのペースは、赤で示したカルロス・サインツJr.(フェラーリ)や、緑で示したルイス・ハミルトン(メルセデス)、そして青で示したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と遜色ないペースであったことがよく分かる。
アロンソはオコンよりも1周あたり1秒ほどペースが遅いが、これは燃料搭載量の差であったと想像できる。
同じフリー走行2回目では、ミディアムタイヤでのロングランも行なったが、この時にはアロンソの方がオコンよりも1周あたり1秒ほど速かった。つまり、燃料搭載量を逆転させたと考えられるわけだ。しかもこのミディアムでのペースも、フェラーリと遜色ないものであった。
ただ、ペースが速いだけでは、12ポジションアップという結果は手にできなかっただろう。それには、チームが立てた戦略もうまく機能していたように見える。
F1サンパウロGP決勝レースギャップ推移グラフ
Photo by: Motorsport.com / Japan
上のグラフは、レース中のギャップの推移を表したモノだ。やはりピンク色で表示した、アロンソのポジションを見ていただきたい。
赤の○で示した部分は、アロンソが1回目のピットストップを行なった部分である。これを見ると、ランス・ストロール(アストンマーチン)に詰まると見るや、すぐにピットインしている。
続いて見ていただきたいのは黄色の○で示した部分だ。今度は遅い後続のマシンに引っかからないタイミングで、アロンソはピットストップを行なったようだ。ただ、ここでは誤算があった。1回目のピットストップにかかった時間が23.478秒だったのに対しこの2回目は28.855秒と、5.4秒ほど長くかかってしまったのだ。
もしこの2回目のピットストップでロスがなければ、アロンソはおそらくストロールよりも前、うまくいけばレッドブルのマックス・フェルスタッペンの前でコースに戻ることができたはずだ。しかしピットでタイムロスしたせいで、結局は角田裕毅(アルファタウリ)の後ろでコース復帰することになってしまった。幸いにもコース上で角田とストロールをタイムロスなく交わすことができたが、もしピットでのロスがなければ、アロンソにとってはさらに楽なレースになったはずだ。
ただ他のライバルとはピットストップのタイミングを違えたことで、常に他車に邪魔されることなく本来のペースを発揮。ポジションを上げることに寄与した。
そしてレース終盤には幸運が待っていた。セーフティカーが出動したことで一気に前との差が詰まったのだ。
セーフティカーが解除された時のアロンソの順位は9番手。しかしその後は、チームメイトのオコン、セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)、そしてセルジオ・ペレス(レッドブル)をも抜いて5位となった。
たしかにセーフティカーが出たのは幸運だったかもしれないが、それでも持ち前の力強いレースペースと戦略がなければ、この好結果は手にできなかっただろう。
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