ますます高まるF1の価値。人気沸騰だけじゃない「走る実験室」としての役割が完全復活……フォードがF1に復帰する理由

アウディに続きフォードも、F1へ参戦することを決めた。これはひとえに、F1の価値が高まっているためだ。それは人気が拡大していることだけが理由ではない。技術開発の場としてのF1の価値も、年々高まっている。

Red Bull Racing RB19

 フォードがF1に帰ってくることになった。

 レッドブルの2023年用マシンRB19の発表会に、フォードのCEOであるジム・ファーリーが出席。2026年シーズンからレッドブルとパートナーシップを締結し、F1へのカムバックを果たすことを宣言した。フォードがレッドブルのパワーユニット部門”レッドブル・パワートレインズ”に資金提供と技術供与を行ない、レッドブル・フォード・パワートレインズとしてレッドブルとアルファタウリの2チームにパワーユニット(PU)を供給する形となる。

 フォードの技術が反映されたPUが登場するのは2026年から。この年からF1では、使用する燃料をカーボンニュートラル燃料100%とすることが決定済み。さらにPUで扱う電力も50%増加する予定になっている。つまりF1は、持続可能性をより促進する形となっており、これがフォードが提携する決め手になったと言える。

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 フォードのファーリーCEOは発表の際、次のように語っている。

「我々はF1の持続可能な方向性に本当に興奮している。我々はフォードでも、同じ使命を課されている。レッドブルとレースを戦うのが待ちきれない」

 この2026年からの新レギュレーションに関しては、多くのメーカーが興味を示している。アルピーヌ、アウディ、フェラーリ、ホンダ(HRC)、メルセデス、レッドブル・フォードの合計6メーカーがPU製造者登録を済ませたことも明らかにされたが、他にもポルシェやヒュンダイがF1に参戦するのではないかという噂が持ち上がったこともあった。また、GM(ゼネラル・モータース)はキャデラックのブランドでアンドレッティと組み、F1新規参入を目指すことを公言している。

 これら全てのメーカーが参戦し、既存の3メーカーと対決する形となれば、F1は自動車メーカーによる対決の場……まさに活況の期を迎えるということになるだろう。

■なぜ今、F1に自動車メーカーが集まるのか?

Red Bull Racing Team Principal Christian Horner, Jim Farley, CEO of Ford

Red Bull Racing Team Principal Christian Horner, Jim Farley, CEO of Ford

Photo by: Red Bull Content Pool

 ではなぜ自動車メーカーにとって2026年からのF1が魅力的なモノに映るのか。もちろん、アメリカをはじめ世界でF1の人気が上昇していることとは無関係ではないだろうが、それ以上に将来の自動車業界が進んでいくべき道筋のひとつが、2026年以降のF1にあるから……ということだろう。

 カーボンニュートラルの重要性が叫ばれて以降、自動車業界は電動化へと進んでいたが、全ての自動車を電動化するのは現実的ではないという考え方もある。例えば、充電のインフラもまだまだ不十分であるし、使う電力を火力発電で賄えば、カーボンニュートラルにはまったく貢献しない。バッテリーを作ったり処分したりする際にも二酸化炭素を排出してしまうし、世界中を走る15億台とも言われる自動車の全てを置き換えるのは不可能に近い。しかしカーボンニュートラル燃料ならば、ガソリンスタンドなど既存のインフラを使えるし、従来のガソリンエンジンをそのまま使いながらカーボンニュートラルを目指すことが可能だ。

 もちろん、カーボンニュートラル燃料にも課題はある。カーボンニュートラル燃料は大気中の炭素と水素を合成してガソリン同等の燃料を作るという考え方であるため、大気中の二酸化炭素が増えない……プラスマイナスゼロである。しかし水から水素を分解する際には電気が必要であるし、その工程も含めまだまだ製造コストは高い。

 ただF1で使うことで、技術革新に寄与することが可能なはず。つまり、カーボンニュートラル燃料の製造コストを下げていくことにもつながるはずだ。この新しい燃料を”うまく使う”という観点でも、F1での開発競争は活きるだろう。

 その一方で、電動化技術にF1が果たせる役割も大きい。F1のパワーユニットは、エンジン+電動モーターのハイブリッドシステムだ。前述の通り2026年からは扱える電気の量が増えるため、メーカーにとってはF1を通じて電動化技術の開発を進めることができる。実際レッドブルはフォードと組むことによって、その電動化技術やバッテリー技術を享受できると期待している旨を明かしている。

 カーボンニュートラル化を進めていくという方針により、F1はただの興行ではなく、”走る実験室”としての役割を取り戻しつつある。カーボンニュートラル燃料の実用化と電動技術を進歩させるという面で、F1の存在意義、存在価値は、これまで以上に高まりつつあるのだ。

 フォードのグローバル・モータースポーツ・ディレクターのマーク・ラッシュブルックは、今のF1は技術開発の観点でも価値が高まっており、それが復帰の必須条件だったと語った。

「我々はマーケティング活動としてレースをしているだけではない。特にF1は、技術的な学習を実際に行なう機会があるという点で、我々にとっては重要だった」

「それがなければ、F1に復帰することはなかっただろう」

■さて、ホンダはどうする?

Honda logo on Red Bull Racing RB18

Honda logo on Red Bull Racing RB18

Photo by: Red Bull Content Pool

 現在のF1、そして2026年以降のF1の価値は、将来の自動車業界で必要な技術を開発する上でも、大きく高まっている。そのため、6社が参戦登録をしたのだ。しかしそのうち1社、ホンダだけがまだ供給先のチームが決まっていない。

 ホンダ/HRCは、パワーユニットサプライヤー登録をした理由について、「研究のため我々は席についた段階」だと説明しつつ、F1の有益性について、渡辺康治HRC社長は次のように語っていた。

「電動の比率が非常に上がっていくというのが大きいです。またHRCとしては、F1が内燃機関を残しながらも、カーボンニュートラル燃料を用いることでカーボンニュートラル化を目指すという側面も持っているというところは賢いと考えています」

 またHRC四輪レース開発部の浅木泰昭部長は、ホンダとしてのF1参戦が終了した直後の2021年末に、次のように語っている。

「ここにきてカーボンニュートラルのための燃料とか、空を飛ぼうと思った時のバッテリーやモーターやコントロールユニットと、F1の開発が急に近づいてきた。今のF1なら、走る実験室になりうるという時代が近づいてきたと思います」

「(F1で開発している)バッテリーや燃料は、市販車にも活かせると思います」

 レッドブルがフォードをパートナーに選んだことで、もしホンダ/HRCがF1を続けていくならば、新たなパートナーを見つける必要が出てきた。選択肢は非常に限られているが、そのいずれかとパートナーシップを締結することはあるのか? もしくは、本当に研究だけで終わってしまうことになるのだろうか?

 マーケティング面でも技術面でも、F1の価値が高まりつつある今、ホンダがどんな選択をするのか。注目したい。

 
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