全てはフェラーリF92Aから始まった……BBSホイールのF1における歴史
1992年のフェラーリF92Aを皮切りに、これまで数々の名車にホイールを供給してきたBBS。今では、全車がこのBBS製のホイールを履く。その全てが日本製なのだ。
Jean Alesi, Ferrari F92A
写真:: LAT Images
F1マシンには、数多くのパーツが使われている。その数は15000個とも、20000個とも言われる。そんなパーツの中で、全チームが必ず”使わなければいけない”日本製のパーツがある。それはホイールである。
2022年から、F1マシンのホイールは以前の13インチから18インチへと変更された。そしてその年から、ホイールはワンメイクとなり、日本のBBSがサプライヤーに選出された。つまり今季も全てのF1マシンがこのBBSのホイールを履いて、全24戦を戦うことになる。
そんなBBSがF1へのホイール供給を開始したのは、1992年のことである。
当時マグネシウム製鍛造ホイールの開発に世界で初めて成功したBBSは、ベネトンへのホイール供給を考えていたという。BBSモータースポーツ社でF1用ホイールの開発を担当していたローマン・ミュラー氏は、次のように語った。
「ミハエル・シューマッハーの存在が大きかったんだ。彼はジョーダンからF1にデビューし、すぐにベネトンに移籍した。我々はベネトンと良好な関係を築いており、ホイールの依頼を受けた」
しかしベネトンへの供給は叶わず、BBSはフェラーリにコンタクト。突きつけられた厳しい要求をクリアし、正式にサプライヤーとして認められることになったという。
供給1年目の1992年は、ジャン・アレジとイワン・カペリがドライブするフェラーリF92Aに、BBS製のホイールが装着された。このF92Aは、革新的なデザイン手法がとられたマシンで、ジェット戦闘機のようなフォルムや、二重になった特殊なフロア、通称”ダブルフロア”などにより大いに注目を集めた。今でも日本でもファンが多いマシンである。
しかしフェラーリはその革新的なコンセプトをうまく活かすことができず、F92Aは期待されたようなパフォーマンスを発揮できなかったが、1994年にフェラーリは久々の勝利を挙げる。ドイツGPのことだ。この年にはベネトンにも供給がスタートしており、ついにシューマッハーがBBSホイールを履くことになった。そしてシューマッハーの手により初優勝と初のドライバーズチャンピオンに輝いた。
シューマッハーが初めてタイトルを獲得した時の愛車ベネトンB194。このマシンもBBSのホイールを履いていた。
写真: Motorsport Images
やがてフェラーリにも黄金期が訪れる。ベネトンからシューマッハーが移籍し、2000年から2004年までの5年間連続でチャンピオンを獲得した。
この時の足元を支えたのもBBSのホイール。当時はタイヤも日本製のブリヂストンであり、様々なトライ&エラーを繰り返したようだが、日本製のホイールとタイヤが、マシンの駆動力を路面にしっかりと伝え、シューマッハー&フェラーリの大活躍を強力にサポートした。
そのシューマッハーは2006年限りでF1を一旦引退することになる。しかしその後もBBSのF1での活躍は続き、最盛期には10チーム中7チームにホイールを供給。その中にはメルセデスやフォースインディア(現アストンマーティン)なども含まれている。シューマッハーは後にメルセデスからF1復帰を果たしており、BBSとここで再会することになった。またホンダやトヨタ、スーパーアグリといった日本国籍のチームも、BBSのホイールを使ってF1に挑んだ。
そして2022年からは前述のとおりF1ホイールはワンメイクとなり、BBSがサプライヤーに選出。全チームに鍛造マグネシウム製ホイールが供給されている。
F1のホイールがワンメイクとなったのは、参戦コストを抑えるためだった。各チームの求めに対するバランスを取ったデザインを作り上げ、シーズン開幕までに2400本のホイールを用意しなければならないなど、数多くのハードルがあったという。しかしBBSはこれを全て乗り越えられると説得し、ワンメイクサプライヤーとしての地位を掴んだ。
ただ安い価格を提示したことがワンメイクサプライヤーに選ばれた理由ではなかったはずだと、前出のミュラー氏は言う。
「我々は利益を得られる、適正な価格を提示した。きっと我々より安い価格を提示した会社もあっただろう……でも我々はビジネスとして(F1のワンメイクサプライヤーを)考えていたんだ」
「モータースポーツの会社として、最高のホイールを作りたいと考えていた。軽量で剛性に優れ、慣性の少ないホイールを作ることが目的だった。そして過去に大きな問題はなく、高い品質を誇る信頼できるサプライヤーであることは証明されていた」
「我々が選ばれたのは、そういう点が重視されたからだと思う」
BBSモータースポーツのローマン・ミュラー氏
写真: BBS Japan
さてこのBBSのF1用ホイールは、全てが富山県の高岡市にある工場で作られている。しかも特別な製造ラインが設けられているわけではなく、市販ホイールと同じラインで鍛造されているのだ。つまり、市販のBBS鍛造ホイールを履けば、F1と同じように作られていると言っても過言ではないということになる。
鍛造が済んだF1用ホイールはドイツのBBSモータースポーツに送られ、そこで機械加工と塗装を行ない、F1チームに引き渡され、戦場へと漕ぎ出していくわけだ。
2023年の夏にBBSのホイールは、側面からの衝撃への耐性が向上し、塗膜特性も向上したMK2へと段階的にアップデート。2024年シーズンからは、全てがこのMK2に置き換えられ、現在に至っている。
F1は現在世界で隆盛を極め、様々なブランドとの強固なパートナーシップを結んでいる。最近でも、毎月のようにそのブランド数は増えていっている。そんな数多あるF1のオフィシャルパートナーの中でも、BBSは唯一の日本企業である。
BBSのホイールを鍛造する時に必須の巨大プレス機(写真は12tプレス機)
写真: BBS Japan
2026年からF1用ホイールは、オープンリソース・コンポーネント(設計仕様および知的財産がすべての競技参加者に利用可能とされるコンポーネント)に変更されることになった。パフォーマンスの差別化要素にはならないものの、各チームは独自にサプライヤーを選定できるようになるため、ワンメイク時代は今年で最後となるが、BBSのF1への挑戦が終わることはない。2026年からの供給契約に向けて、複数のチームと交渉を続けているという。
「2026年からは個別の対応に戻るので、全チームの要望に応えるのは難しいだろう。だが、3〜4チームであれば可能だ。おそらく提携する相手は、いくつかのトップチームということになるだろうね」
ミュラー氏はそう明していた。
今年の日本GPでは、ワンメイク供給最終年ということもあり、鈴鹿サーキットのグランプリスクエアに、BBSのブースが設置されるという。このブースは「F1におけるBBSの歴史」をテーマにしており、現行の18インチホイールと、かつての13インチホイールを展示する予定だ。ちなみに展示される18インチのリヤホイールには、ドライバーたちの直筆サインが入れられている、一見の価値ある一本だ。
またWEB上では3月14日からキャンペーンがスタート。素敵な賞品が当たる懸賞も実施されており、こちらも必見。特設サイトのURLは(https://bbs-japan.co.jp/f1gp-present/)である。
記事をシェアもしくは保存
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。