【コラム】日本で初めてF1マシンが走った場所……実は鈴鹿でも富士でもなかった。かつて存在した河川敷コース
日本で初めてF1マシンが走ったのは、荒川の河川敷のホンダ荒川テストコースだったかもしれない。1964年2月のことだった。
ホンダRA270, 荒川テストコースで記念撮影。一番左が後のホンダF1監督の中村良夫氏か
写真:: Honda
埼玉から東京にかけて流れる一級河川”荒川”。その両岸には野球場やゴルフ場、バーベキュー場などが点在し、今や県民・都民にとっての憩いの場となっている。河川管理道路が河口から熊谷市付近まで整備されていて、連日ロードバイクやランニングを楽しむ人たちが往来するなどしている。
この荒川を渡る形で架けられている笹目橋という橋がある。荻窪方面から環八・笹目通りを北上した先に繋がる橋、首都高速5号線を池袋方面から下り、美女木ジャンクション手前の橋と言ったら、ピンとくる方も多いのではないだろうか。
この笹目橋の北側、東京/和光市側の河川敷にはかつて、ホンダのテストコースがあった。荒川テストコースと呼ばれた直線コースである。今や現地に”元テストコース”といった標識などはなく、サイクリングやランニングで走り抜ける人たちが気付くべくもない。しかし当時のテストコースとほぼ同じ箇所が今も舗装路となっていて、知ってさえいれば当時に想いを馳せることができる。
この荒川テストコースが、日本で初めてF1マシンが走った場所であったようだ。
現在ホンダのF1開発は、栃木県さくら市のHRC Sakuraで行なわれている。しかし第1期から第2期は、埼玉県和光市の本田技術研究所がその第一線であった。研究所で組み上げられたマシンはこの荒川テストコースに運び込まれ、初めての全開走行をしたと見られる。
ホンダのF1の歴史を振り返るWEBサイトに、次のような記述がある。
「クーパークライマックスをモデルにして、鋼管スペースフレームでまとめられたF1試作車が、初めて荒川のテストコースを走ったのは1964年2月6日であった」
ホンダ荒川テストコースがあった場所
写真: Motorsport.com Japan
この時走ったのは、ホンダ創業者の本田宗一郎が腰掛けている写真でも有名な、ゴールドメタリックに塗られたF1試作車であり、RA270エンジンが搭載されていた。ステアリングを握ったのは後にホンダF1チームの監督を務めることになる中村良夫であり、最高速度は175km/hであったとされる。本田宗一郎もこの日マシンに乗ったようだ。翌週の13日には、1万1800回転までエンジンは回り、本田宗一郎も喜んだという。
当時ホンダは既に三重県に鈴鹿サーキットを完成させており、日本グランプリ(F1ではない)も開催されていたが、この鈴鹿に持ち込む前にRA270は荒川テストコースで複数回テストされたということのようだ。
ホンダF1の実戦マシン1号となるRA271も荒川でチェック走行し、グランプリに旅立っていった。その後も和光の研究所で作られたF1マシンが荒川河川敷を走り、鈴鹿を経由して世界に挑んだ。
なおこの荒川テストコースでは、F1マシンだけでなくマン島TTレースやロードレース世界選手権に参戦する二輪マシンなどもテストされた。また歴代のF1マシンや二輪マシンを集めたイベントが開催されることもあったという。
その後1974年、富士スピードウェイでF1マシン5台が来日してのデモ走行が行なわれ、1976年には日本最初のF1グランプリ”F1世界選手権inジャパン”が開催。1987年には鈴鹿サーキットでのF1日本GPが始まり、1994年にはTIサーキット英田(現・岡山国際サーキット)でもパシフィックGPが行なわれ、今も連綿とその歴史が続いている。最近では、公道でのF1デモランの回数も増えてきている。
その最初……F1マシンが日本で本格的に走った最初の場所が荒川河川敷だったということは、あまり知られていない事実であろう。
荒川サイクリングロードを走られるローディーの読者の皆様、マラソン大会などで走られる皆様、当該区間を通った時には、想いを馳せてみてはいかがだろうか? 都営地下鉄三田線の西高島平駅からも歩ける場所なので、その他の方もぜひ赴いてみてほしい。
日本中の様々なところに、F1やモータースポーツに関する歴史的な場所・施設があると思う。みなさんのお住まい、お勤め先の近くにも、そういう場所があるかもしれない。探して、訪れてみるのもまた一興であろう。
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