F1 メキシコシティGP

F1分析|痛恨のピットストップミス。しかしペースは悪くなかった角田裕毅のメキシコシティGP

角田裕毅はF1メキシコシティGPを、ピットのミスもあり11位で終えた。しかしレースペースは、決して悲観する内容ではなかった。

田中 健一

公開日時: 2025/10/27 10:37

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

Yuki Tsunoda, Red Bull Racing

Yuki Tsunoda, Red Bull Racing

写真:: Andy Hone/ LAT Images via Getty Images

 F1メキシコシティGPの決勝レースは、角田裕毅(レッドブル)にとっては厳しいレースとなった。基本的にはよく戦っていたと言えるだろう。しかし、ピットストップの際に作業ミスがあり、ポジションをダウン。しかもただポジションを落としただけではなく、”前に出られると厄介”なドライバーたちの先行を許してしまったため、上位進出のチャンスを逃した。

 このピットでのミスがなければ、4〜8番手あたりを争う集団の中での勝負となったはずだ。

 角田を襲ったピットストップ時のミス。それは、リヤのジャッキにあった。

 F1マシンがガレージ前の所定の位置に止まると、前後で手動のジャッキが動き、マシンを持ち上げる。そして瞬時にタイヤを交換し、ジャッキを下ろして再びコースへと向かうのだ。

 F1マシンの自動車で言うジャッキアップポイントは、フロントはノーズ先端もしくはフロントウイング中央部、リヤはクラッシャブルストラクチャー(リヤライト)の下あたりに存在する。

 今回の角田車は、リヤにジャッキを滑り込ませる際にミスがあり、中途半端な箇所を持ち上げてしまったのだ。そのためマシンがずり落ち、これに慌てた担当スタッフは、再びジャッキを滑り込ませるのに手間取ってしまい、大きなロスとなったのだ。

 この時の映像は、決勝レースの中継では見られなかった。しかしいずれ、どこかで皆さんもご覧いただける時が来るだろう。

 ただこういうことは、角田本人も明言した通り、ごく稀にあること。いかに練習を繰り返していたとしても、人間がやる以上はミスゼロにはできない。そういう意味では、前を向く他ないだろう。

 ただ、もしこのピットストップがうまくいっていたら、角田は何位くらいでフィニッシュできたのだろうか? そこを検証してみたい。

フェルスタッペンに匹敵するタイミングもあった!

F1メキシコシティGP決勝レースペース分析:フェルスタッペンvs角田

F1メキシコシティGP決勝レースペース分析:フェルスタッペンvs角田

写真: Motorsport.com Japan

 まずは角田のそもそものペースはどの程度だったのか見てみよう。このグラフは、F1メキシコシティGP決勝レース中の、マックス・フェルスタッペン(紺色の実線)と角田(紺色の点線)のレースペース推移である。いずれも、ミディアムタイヤでスタートし、ソフトタイヤへと繋ぐ1ストップ作戦であった。

 レース序盤は、1周あたり0.5秒ほどフェルスタッペンの方が速く、その差が徐々に開いていく(グラフ赤丸の部分)。しかし周回が進むに連れて両者のペース差は小さくなり、スティントの最終盤はほぼ同じペースで走っていた(グラフ青丸の部分)。

 全体的な傾向を見ても、フェルスタッペンは徐々にペースを落としている傾向にあったのに対し、角田は徐々にペースを上げていくというデータを示している。

 これはつまり、角田が非常にうまくタイヤをマネジメントしていたことの証拠と言うことができるだろう。もちろん、角田の前方は比較的開けていたため、タイヤマネジメントはしやすい位置にいた。一方でフェルスタッペンは、オリバー・ベアマン(ハース)に抑え込まれたことで、タイヤがオーバーヒートしやすい状況にはあった。そういう差はある。

 ちなみにスティント最終盤、角田のペースはガクリと落ちている(グラフ緑丸の部分)。これは、早々に1ストップ目を済ませていた2ストップ勢が追いついてきたから。角田は自身のタイムを極力失わず、それでいて簡単には前に出さない戦法をとった。そのためペースが落ちているわけだが、多少なりともこれらのマシンを抑え込めたことで、間接的にはフェルスタッペンが3位になるサポートすることができたはずだ。

 第2スティントでも、序盤と終盤ではフェルスタッペンと遜色ないペースで走った。ただ中盤(グラフ橙丸の部分)は、アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)とガブリエル・ボルトレト(ザウバー)に抑え込まれてしまったことで、ペースダウンしているのが分かる。

 冒頭で申し上げたピットストップでのミスがなければ、このふたりに先行されることはなかったはずで、第2スティント中盤でのペースダウンはなかっただろう。

 そういう意味で角田の全体的なペースは、今回は”悪くはなかった”と評価すべきだろう。

ハジャーとボルトレトに先行されたのは痛かった

F1メキシコシティGP決勝レースギャップ推移分析

F1メキシコシティGP決勝レースギャップ推移分析

写真: Motorsport.com Japan

 では次に、実際のポジションの面ではどうなっていたのかというところを見てみよう。こちらは、実際のレース中のギャップの推移をグラフ化したものである。

 今回のメキシコシティGPのピットストップにおけるロスタイムは、22〜23秒ほどであった。つまり角田はピット作業にミスがなければ、グラフ上に赤丸で示したあたりの地点、ハジャーの前でコースに復帰できていたはずだ。

 このグラフには表示されていないが、その前方にはまだ1度もタイヤ交換を済ませていなかったランス・ストロール(アストンマーティン)やアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)などがいた。ただタイヤライフの差を考えれば、この2台は比較的容易に攻略することができただろう。

 おそらく問題は、オコンを抜けたかどうかだ。オコンのペースは、それほど秀でたものではない。レース中のペースを見れば、角田の方が1周あたり0.5秒〜1秒ほど速かった。ただそこは侮れないハース。絶対的なペースは遅くとも、後続を完璧にブロックするというシーンをここ数年何度も見てきた。

 でも1対1の対決ならば、オコンを攻略することもできたはず。そしてそれが実現していれば、そこにはクリーンエアの陵域が広がっていた。ペースを上げるにはうってつけだ。そしてフェルスタッペンの第2スティントと同等のペースで走ることができていれば、ベアマンを先頭にした4番手グループの一員となっていただろう。

 もちろんその場合でも、タイヤライフの差があり、角田にとっては楽なレースにはならなかったのは間違いなく、その集団のどのポジションでフィニッシュできたかは分からない。しかし最高で4位、最低でも8位でフィニッシュしていただろう。そして、チームメイトであるフェルスタッペンの最大のライバルであるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)を、もう一度苦しめるチャンスだって巡ってきたはずだ。

 そういう意味でも、ピットストップのミスは残念でならない。

 さて実際の角田は、第2スティントの大部分を、ボルトレトの後方で過ごしていた(グラフ青丸の部分)。そしてなかなか仕掛けることをしなかった。その段階で「ボルトレトすら抜けないのか!」とヤキモキした方もいらっしゃるかもしれない。

 しかしこれは、ちゃんと考えがあってのことだったと思われる。今のF1では、DRSトレインにハマってしまうとオーバーテイクを仕掛けられないどころか、ダウンフォースを失って無駄にタイヤを痛めてしまう。今回はそれが特に顕著であった。

 そのため角田は、ボルトレトにまずはハジャーを攻略させ、対ハジャー、対ボルトレトと、常に1対1の戦いに持ち込もうとしていた感がある。しかしボルトレトがハジャーの攻略に手間取り、しかも比較的タイヤを残していたことで、角田としてはボルトレトを攻略できなかった。

 今のF1はオーバーテイクが実に難しい……それを如実に表したシーンであったと言えよう。

関連ニュース:

 

あなたの意見が聞きたい!

Motorsport.comで何を見たいですか?

5分間のアンケートにご協力ください。

- Motorsport.comチーム

関連ニュース :

記事をシェアもしくは保存

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

前の記事 まったくイカれてる……ハミルトン、10秒ペナルティの裁定に憤慨。芝生の上をショートカットも「他のドライバーもやってたのに僕だけ?」

次の記事 ラッセル、ペナルティの判断めぐりFIAを批判「ルールに従ったドライバーがバカを見た」

More from

田中 健一



ルクレール5秒加算ペナルティ! 決勝終盤接触の責任を問われる。ローソン7位に繰り上がり、今季獲得ポイントは89に|F1サンパウロGP

F1

F1

サンパウロGP

34 分前

ルクレール5秒加算ペナルティ! 決勝終盤接触の責任を問われる。ローソン7位に繰り上がり、今季獲得ポイントは89に|F1サンパウロGP



天候激変サンパウロでアロンソが12位。ホンダ折原エンジニア「コンディションに合わせてPUを調整できた」

F1

F1

サンパウロGP

1 時間前

天候激変サンパウロでアロンソが12位。ホンダ折原エンジニア「コンディションに合わせてPUを調整できた」



アロンソ12位、マシンは想像以上で驚き「フェラーリやメルセデスと互角な時もあった……まだストレートが遅いから、コーナーは驚異的だ」

F1

F1

サンパウロGP

2 時間前

アロンソ12位、マシンは想像以上で驚き「フェラーリやメルセデスと互角な時もあった……まだストレートが遅いから、コーナーは驚異的だ」

More from

角田 裕毅



ハース、オコンとの契約を今季限りで延長せず……後任候補と目される5人のドライバー。平川亮、角田裕毅の可能性はあるのか?

F1

F1

アゼルバイジャンGP

1 ヵ月前

ハース、オコンとの契約を今季限りで延長せず……後任候補と目される5人のドライバー。平川亮、角田裕毅の可能性はあるのか?



ハジャー、手首の怪我癒えF1復帰。角田裕毅は再びリザーブに……レーシングブルズが感謝「とても貴重なポイントを獲得してくれた」

F1

F1

アゼルバイジャンGP

1 ヵ月前

ハジャー、手首の怪我癒えF1復帰。角田裕毅は再びリザーブに……レーシングブルズが感謝「とても貴重なポイントを獲得してくれた」



人生を楽しめていなかった……角田裕毅、キャリアで最も辛いレッドブルでの1年「だからこそ自分自身を深く見つめられた」

F1

F1

スペインGP

1 ヵ月前

人生を楽しめていなかった……角田裕毅、キャリアで最も辛いレッドブルでの1年「だからこそ自分自身を深く見つめられた」

More from

レッドブル



フェルスタッペンがFP2の走行を早めに切り上げた理由とは?「ロングランで多くの矛盾点が見つかった」

F1

F1

サンパウロGP

1 日前

フェルスタッペンがFP2の走行を早めに切り上げた理由とは?「ロングランで多くの矛盾点が見つかった」



雨のバグ再発は大丈夫? フェルスタッペンはジョーク「アンチウイルスソフトを入れたから大丈夫!」

F1

F1

サンパウロGP

2 日前

雨のバグ再発は大丈夫? フェルスタッペンはジョーク「アンチウイルスソフトを入れたから大丈夫!」



レッドブル代表、ルクレールへのペナルティに疑問「ペナルティが出るのが遅れ、それが5秒しかなかったのには驚いた」

F1

F1

メキシコシティGP

3 日前

レッドブル代表、ルクレールへのペナルティに疑問「ペナルティが出るのが遅れ、それが5秒しかなかったのには驚いた」

最新ニュース



ルクレール5秒加算ペナルティ! 決勝終盤接触の責任を問われる。ローソン7位に繰り上がり、今季獲得ポイントは89に|F1サンパウロGP

F1

F1 F1

サンパウロGP

34 分前

ルクレール5秒加算ペナルティ! 決勝終盤接触の責任を問われる。ローソン7位に繰り上がり、今季獲得ポイントは89に|F1サンパウロGP



天候激変サンパウロでアロンソが12位。ホンダ折原エンジニア「コンディションに合わせてPUを調整できた」

F1

F1 F1

サンパウロGP

1 時間前

天候激変サンパウロでアロンソが12位。ホンダ折原エンジニア「コンディションに合わせてPUを調整できた」



アロンソ12位、マシンは想像以上で驚き「フェラーリやメルセデスと互角な時もあった……まだストレートが遅いから、コーナーは驚異的だ」

F1

F1 F1

サンパウロGP

2 時間前

アロンソ12位、マシンは想像以上で驚き「フェラーリやメルセデスと互角な時もあった……まだストレートが遅いから、コーナーは驚異的だ」



サンパウロの空は気まぐれ……しかし動じずノリスが今季3勝目でシャンパンボトル粉砕! メルセデス製造者王者に輝く。アロンソ奮闘|F1サンパウロGP決勝

F1

F1 F1

サンパウロGP

3 時間前

サンパウロの空は気まぐれ……しかし動じずノリスが今季3勝目でシャンパンボトル粉砕! メルセデス製造者王者に輝く。アロンソ奮闘|F1サンパウロGP決勝

Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.

フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。

次の 2 つのオプションがあります。

購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします

広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード

お知らせの管理

登録