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【コラム】ミッキーにレゴにハローキティに……ド派手な演出で度肝を抜いたラスベガスGP。F1が目指す将来の姿は「常にON」……一方で課題も

リバティ・メディアが見据えるF1の将来の姿の一端が、今回のド派手だったF1ラスベガスGPに見えたような気がする。

Max Verstappen, Red Bull Racing

Mickey and Minnie Mouse in the Paddock

写真:: Rudy Carezzevoli / Getty Images

 2025年のF1ラスベガスGPは凄かった。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)の強さももちろんそうだが、何よりもF1を完璧なエンターテインメントに昇華させようとするその姿勢が色濃く、なるほどリバティ・メディアはこういうF1を目指しているのか……その一旦が見えた。

 F1は2026年から、ディズニーとのコラボレーションを本格的にスタートさせる。このコラボは”Fuel the Magic(魔法に燃料を!という意味か)”と名付けられたキャンペーンとして実施される予定で、その先行イベントがラスベガスで行なわれたわけだ。

 まさに圧巻だった。

 ミッキー・マウスがパドックを歩いたり、スタートセレモニーに登場したのはまあ考えられるところだったが、極め付けは決勝レース後、トップ3インタビューと表彰式の間に、ベラッジオホテル前の池でミッキー・マウスによる噴水ショーが行なわれたことだ。

 
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 ミッキーの指揮に合わせて噴水が飛び跳ね、上空ではドローンショーが展開。花火も頻繁に打ち上げられ、スフィア(サーキット脇にある球形の超巨大アリーナ)も演出に活かされた。

 あれ? ディズニーシーに来ていたっけ? と錯覚してしまうような本格的なものだった。

 しかもショーで使われた音楽も、ディズニーらしさを色濃く出しながらF1のテーマ曲をアレンジ。ドローンでもF1マシンが描き出された。まさにF1とディズニーが一体化したような瞬間だった。

 しかもディズニーだけを使ったわけではない。今回はラスベガスGPであるから、そのカジノ街のネオンや建造物を、グランプリに存分に活かした。レースをフィニッシュしたトップ3の選手をインタビュー会場まで輸送する際にはLEGOで作られたピンク色のキャデラックが使われ(重いだろうに……ちゃんと走るのがすごい!)、併催のF1アカデミーはハロー・キティとコラボレーション(日本発のキャラクターであることが嬉しい!)。優勝したフェルスタッペンには、豪華なルイ・ヴィトンのケースに入れられたトロフィーが贈られた。至るところにエンターテインメントが散りばめられていた。

 これであれば、サーキットにいらっしゃった観客の皆様は、飽きる時間などないだろう。次から次へと繰り返されるエンターテインメント……息つく暇もなく、1日が過ぎ去ったはずだ。そして満足度も高かったに違いない。

■リバティ・メディアが見据えるF1の将来

Mickey and Minnie Mouse in the Paddock

Mickey and Minnie Mouse in the Paddock

写真: Rudy Carezzevoli / Getty Images

 今回のグランプリを見ると、リバティ・メディアが目指すF1の姿が徐々に見えてきた感がある。F1を単なる自動車レースとしてではなく、その3日ないしは4日を、ひとつのエンターテインメント・イベントとして捉えるのだ。

 そうすれば観客の満足度も上がるし、これまでサーキットを訪れることがなかった新たな層にとっても、魅力的に映るモノとなっていくだろう。またグランプリ期間中のひとつひとつの催しにスポンサーやパートナーがつけば、F1が得られる収入もさらに莫大なモノとなっていくだろう。まだまだ隙間があるように感じられたため、今後より一層充実したものとなっていくはずだ。

 ただ規模こそ違えど、これはF1に限ったことではない。どんなスポーツイベントも、こういった方向に進んでいる。

 今回F1とのコラボレーションを先行スタートさせたディズニーは、他にもメジャーリーグ(野球)やNBA(バスケットボール)とのコラボレーションを実施中。ディズニー・コンシューマー・プロダクツのタシア・フィリパトス社長は「スポーツは、世界で最も人々を結びつける、文化的な力のひとつであり続けている」とコメントしている。

 そして日本でも、プロ野球やサッカーのJリーグ、バスケットボールのBリーグ、さらには競馬など様々なスポーツで、来場者の満足度を上げるための施策に躍起になっている。つまり、来場してから帰宅するまで決して飽きさせず、そして帰宅した後もその感慨にふけってもらうためにどうするか……そこまで、いやそれ以上のことを考え、実行しなければいけないということだろう。試合、モータースポーツであればレースだけよければそれで良いという時代は、はるか昔に過ぎ去った。

 こういう方向性は、ラスベガスGPに限らず、全24戦で求められることになるだろう。何も全てのグランプリでミッキー・マウスのショーをやらなければいけないと言っているわけではない(やるかもしれないが)。それぞれのグランプリが、それぞれ独自の色を背負い、週末をひとつのエンターテインメント・イベントとしてまとめ上げる……おそらくそういうことが、今後各グランプリには今まで以上に求められるはずだ。そしてその”参考”となるイベントが、今回のラスベガスGPだったということだろう。

 そんな中で、鈴鹿サーキットでの日本GPはどんなモノになるのか? そこはホンダモビリティランドをはじめとした、関係者の皆様の手腕に期待したい。

 F1の放送に関しても、同じ方向を向いていると言える。2026年からアメリカでのF1放映権はAppleTVが取得した。AppleとF1は、映画『F1/エフワン』で協力体制を築き、興行的にも大成功。そして今後は放映権だ。

 この放映権契約について尋ねられた際、リバティ・メディアのデレク・チャンCEOはこう語っている。

「今重要なのは、日曜日のレース中の1時間半の放送枠の中で何が起きるかということだけではない。常にONであること……つまり常に存在感を示すことだ」

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 この事と、今回のラスベガスでのド派手な演出とは、きっと無関係ではないだろう。確かに強い存在感を示したのだから。

 こういう意見には批判的な方もいらっしゃるかもしれない。F1は今までの形でいいのだと。しかし私は、世界中で新しいファンを今まで以上に呼び込むためには、こういう変革が必要だと考える。

■課題も……しかし文句を言ったコラピントも賛同?

 今回、ドライバーたちから批判的な声が上がったのも事実だ。しかし彼らが文句を言っているのは、レースそのものの問題が中心だ。

 ただアルピーヌのフランコ・コラピントはレース後、打ち上がった花火に対して「クリスマスじゃないんだぞ……あんなのに金を使うなんて……」などと辛辣な言葉で酷評したという。

 しかしそのコラピントとて、F1のエンターテインメント化に対して完全に批判していたわけではないようだ。チームのSNSでは、こんな写真が発信されている。

 

 ミニー・マウスの前で跪き、求婚しているようなシーンだ(ちょっと待って。ミッキー・マウスはどこにいった?)。こういう写真を撮ること、つまりF1がエンターテインメント化することについては、コラピントも特にネガティブな想いを抱いていないようだ。

 とはいえ彼らが言うように、F1がスポーツ・イベントである以上、レースがイベント全体の中のメインディッシュであることも間違いない。だからそのメインディッシュをさらに良いモノにしていくための施策も怠ってはならない。

 ドライバーたちが全力で走ることができるフィールドや道具をしっかりと整え、その上で安全性はもちろんのこと、競技運営の安定性もしっかりと担保されなければいけないのは当然のことだろう。

 ラスベガスGPは、確かにエンターテインメントとして素晴らしいイベントになった。しかし路面があまりにも滑りやすすぎたり、マンホールの蓋が外れかけたり(今年も起きた!)というネガティブな要素は、徹底的に排除しなければいけない。F1ラスベガスGPというイベントなのであれば、あくまでメインディッシュはF1なのだから。

 そういう意味では、残念な部分も残ったグランプリだったと言えるが、それでもエンターテインメントとしての完成度は、将来のF1の存在感を感じさせるには、十分な迫力だったのではないだろうか?

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