2026年から日本でF1を独占放送・配信するフジテレビに、可能性と意気込みを訊く「日常にF1を……そして新たな視聴者を失望させないものにします」
フジテレビが今年から、日本でのF1の放送・配信権を独占取得。いったいどんな形態になるのか? そして彼らがF1にかける意気込みとは?
フジテレビ本社
写真:: Motorsport.com / Japan
2026年からの日本でのF1放送/配信権を、フジテレビが独占的に取得。従来のフジテレビNEXT(CS放送)に加え、配信プラットフォーム『FOD』でF1全セッションがライブ中継/配信されることになった。さらに地上波でも年間5戦がダイジェスト放送される予定だ。
ただ一方で、昨年までDAZNでF1中継を視聴していたファンは、引き続きF1を観るならばフジテレビのいずれかのサービスに新たに加入しなければいけない。そのため、「フジテレビでいったいどんな放送/配信を観られるんだ?」という不安とも言える声が聞こえていたのも事実である。
motorsport.comではフジテレビのF1中継担当者にインタビューを実施。配信権を独占取得するに至った経緯、そしてコンテンツ内容などについて話を聞いた。
「1980年代後半、日本でのF1人気は、フジテレビと共に全盛期を迎えました。しかしその後しばらくして視聴率が低下し、地上波での放送から一旦撤退。CSだけでの中継に切り替えました。その過程で、DAZNも配信権を取得するに至り、独占的にお送りすることができなくなりました」
そう語るのは、フジテレビの プラットフォーム事業センター、野村和生室長である。
「当時も、フジテレビに放送・配信権を独占取得しませんかというオファーはあったそうです。ただその時のFODは、F1を配信するのに耐えうる基盤を持っていなかったので、泣く泣くあきらめたわけです」
「そしてCSはフジテレビ、配信はDAZNという2極体制が続いていくわけですが、これは不幸な側面もありました。我々には地上波もありますが、積極的な情報発信ができませんでした。例えば地上波のニュースでF1の情報を伝えても、DAZNさんに送客してしまうだけ……そんな形になってしまっていたからです。CS放送はどうしても、配信サービスに比べると、申し込みが難しいですからね」
「そのことが、海外でF1人気がすごく盛り上がっている時に、日本が一歩乗り遅れてしまう一因になったのではないかと思います」
なぜ今独占配信権なのか?
Circuit entrance overview
写真: Clive Rose / Getty Images
でもなぜ今、F1の放送権と配信権を独占的に取得することになったのか? そう尋ねると、野村氏はこう語ってくれた。
「今のCS放送やケーブルテレビの市場は非常に苦しいです。その中でチャンネルパワーを維持していくために、制作費と放映権料をFODでも負担して、有料メディア全体でコンテンツの質と量を担保していこうという方針を立てました。まさにF1がこの方針に沿ったコンテンツとなります」
「そんな中、今から3年ほど前、初めてF1日本GPを見に行きました。名古屋に着いて近鉄の駅に行くと、そこからはもう別世界……鈴鹿サーキットに着いたらフェスでもやっているような感じ。『ただレースを行なっているだけ』という印象を覆されました。CS/有料放送が苦しんでいる中ですが、あのF1の熱狂とか、エンターテインメント性を見て、放送・配信権を独占しなければ乗り遅れてしまう……そういう焦りを覚えました」
「放映権料は値上がりました……もちろん額は言えませんが、すごい金額ですよ。それでもF1側に、放送・配信権を独占したいという意志を伝えたんです」
フジテレビは昨年、一連の事案を発端とした大混乱が生じ、多くのCM出稿がストップされるなど収益的にもかなり厳しい状況に陥った。今もそのダメージからは完全には回復できていないとされる。そんな中で超高額のF1放送・配信の独占権を取得するという判断は難しかっただろうことは、容易に想像できる。
「F1側にも、フジテレビの状況については情報が入っていたと思います。そんな中で独占契約したいという提案を、よく真摯に受けてくれたなと思っています」
そう野村室長は言う。
「権利料は、我々が想定していた額ではとても収まりませんでしたが、経営陣に確認しなければいけないという段階になったので、清水(賢治)社長に直接説明に行きました」
「清水社長には、放送・配信の権利だけでなくて、周辺のことも含めて考えなくてはいけないと厳しい言葉をいただきましたが、放映権取得に関してネガティブな発言はありませんでした。社長はかつてCS放送担当部署の責任者でしたので、F1に対する理解がありました。そしてF1には多くのファンがおり、今後の可能性もあると、実感してくれたのだと思います」
「世界中の一流企業の多くが参画しているF1が、日本でのパートナーにフジテレビを選んでくれたということは、我々の信頼を回復する大きな一歩になるのではないか……そのように捉えてくれたのではないかと思います」
日常の中にF1を
フジテレビの清水賢治社長(右)とF1のステファノ・ドメニカリCEO(左)
写真: Fuji TV
20日に行なわれたホンダとアストンマーティンF1のパートナーシップ始動記者会見の際に、F1のステファノ・ドメニカリCEOは「サーキットやメディアの中だけでなく、あらゆる場所でF1に触れていただくための新しいアイデアを探していく」と語っていた。フジテレビとしても、日本でのF1人気を復権するためのアイデアを練っていた。そしてその可能性こそが、F1がフジテレビとの契約を選んだ理由であるかもしれない。
「我々はスポーツ専門ではない、総合編成チャンネルを地上波として持っています。バラエティ番組でF1を扱ったり、月9『エンジン』(2005年)のようなドラマを放送したり、フジテレビならではの取り組みができると考えています。そのような実績が評価されたのではないかと思っています」
放映権の取得を発表したプレスリリースの中には、フジテレビ社内に「F1ブームアップ委員会」を発足させるという記載もあった。すでにこの委員会は始まっているようだ。
「先日、社長にも出席していただき、ブームアップ委員会を開催しました。そこでも、バラエティ番組やドラマなど、様々なアイデアを話し合っています。他にもコミカライズやアニメ化、さらにはイベントに関しても議題に上がっています。フジテレビ全社を上げて取り組めないかと、まさに今話し合っています」
「F1側からも、『フジテレビに期待するのはまさにそういうところだ』ということを、直接言われています」
またFOD事業部の広瀬裕太郎主任も、F1を普段の生活の中に溶け込ませる、そんな環境を作りたいと語った。
「私たちが小学生くらいの頃は、それこそセナプロ全盛期。フジテレビがF1をガンガン活用していた時期でした。あの頃、学校で使う筆箱や下敷きに、F1マシンの写真がよく使われていました。F1のことは詳しく知らなくても、『速いクルマのレースがあるんだな』というくらいの距離感ながら、生活圏内にF1が存在していました。その頃の雰囲気を醸成させたいという気持ちが、我々には強くあります」
「それ以外にも、ファンが集まれるコミュニティを作るというようなこともできたらと思います。そのような新しいチャンネルを展開していき、新しい層を取り入れていきながら市場を膨らませていきたいです」
フジテレビの新しい配信形態
では実際にどんな放送体制になるのか? 詳細は2月に発表する予定だというが、その一端を明かしてくれた。
「今年から我々はCSとFODで中継をしますが、それぞれの番組内容を分けるということもできると思います。配信ではさまざま対応ができますから、可能性を色々と検討しているところです」
「そして1月のテストはそもそも非公開なので中継できませんが、2月のテストからは配信する予定にしています」
またプレスリリースにもあったF1 TVとの連携についても、準備が進んでいる様子。こちらも2月の正式発表までお待ちいただきたい。そこでは、FIA F2やFIA F3も見られるようになる予定だという。
最後に、今年からフジテレビのサービスでF1を見ることになる人たちに対してメッセージを乞うと、野村氏はこう語ってくれた。
「今回縁があってフジテレビが独占配信権を取得することになりましたが、DAZNさんで見られていた方々を失望させないような番組作りをするということを念頭に置いています」
「そこにさらにプラスアルファで、『こんなモノも観られるんだ!』というモノをもっとやっていきたい。ぜひご加入いただければと思います」
また広瀬氏も、次のように語った。
「コアファンの皆さんに引き続き楽しんでいただくのはもちろんですが、新規ファンの方々が受け入れやすい環境、状況を作っていきたいと思っています」
「ルールが難しいとか、自分には向いていないと思われるような方にも振り向いてもらえるような、そういうコンテンツも取り揃えながら、カジュアルに楽しんでいただける……そしてこの値段は高いと思わせないような、そういう新体験をしていただけるよう、動画配信プラットフォームとして頑張っていきます」
記事をシェアもしくは保存
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。