F1 オーストリアGP

F1分析|オーストリアGPは本来、アントネッリが勝つべきレースだったのでは? それを阻止した3つの要素

F1オーストリアGP決勝レースのペースを分析すると、アントネッリが圧倒的なパフォーマンスを発揮していたことが分かる。

田中 健一

編集: 2026/06/29 9:08

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Andrea Kimi Antonelli, Mercedes, George Russell, Mercedes, Toto Wolff, Mercedes

Andrea Kimi Antonelli, Mercedes, George Russell, Mercedes, Toto Wolff, Mercedes

写真:: Andy Hone/ LAT Images via Getty Images

 F1オーストリアGPは、メルセデスのジョージ・ラッセルが優勝。実に開幕戦以来となる今季2勝目を挙げた。これで今季絶好調のチームメイト、アンドレア・キミ・アントネッリを止めた格好となるわけだが、各車のレースペース推移を見ると、本来ならばアントネッリが勝つべきレースだったように見える。

 アントネッリはオーストリアGPで初日から好調だった。FP1とFP2でいずれもトップタイム。FP3こそチームメイトのラッセルに首位を譲ったが、予選ではQ1、Q2ともに最速。ポールポジションの可能性がグッと高まった。

 しかし予選Q3の最終アタック、アントネッリの直前を走っていたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がクラッシュ。アントネッリはこれを見て減速したことで、予選4番手となった。

 決勝では絶好のスタートを決めたが、前をいくマシンを抜こうとしてコースオフを繰り返した結果、5番手まで後退。最終的には3番手でフィニッシュしたものの、トップ2台には届かなかった。

 ただレース中のアントネッリのペースは、実に秀逸だった。

F1第8戦オーストリアGP決勝レースペース推移

F1第8戦オーストリアGP決勝レースペース推移

写真: Motorsport.com Japan

 このグラフは、オーストリアGPの決勝レースにおける、上位5台のレースペースの推移である。

 アントネッリのペースの良さが見えるのは、特に第2スティントだ。緑色の点線がアントネッリのレースペースの推移を示した折れ線だが、赤丸で囲った部分を見ていただくと、周囲のライバルのペースから頭ひとつ抜け出しているのがよくお分かりいただけるだろう。

 しかもライバルたちの折れ線が激しい右肩下がりであるのに対して、アントネッリのそれはかなり緩やかな右肩下がりとなっている。これはタイヤのデグラデーション……つまり性能劣化がかなり小さかったということがわかろう。

 このデグラデーションは、ライバルにとってはかなり驚異的だったはずだ。

 そして最終スティントの速さも、アントネッリは他を圧倒していた(グラフ青丸の部分)。タイヤのコンディションが近いのはフェルスタッペンだったが、1周あたり0.5秒ほどフェルスタッペンよりも速かった。やはりデグラデーションも小さかった。

 そういう意味では、順当なレースを戦っていれば、今回のレースで勝ったのはアントネッリだっただろう。

 ただ順当には行かなかった。

 ひとつは前述の予選での減速だ。フェルスタッペンのクラッシュ直後にダブルイエローが出なかったことで、FIAを批判する意見も多いことは事実である。しかしシングルイエローであることをしっかりと見極め、一瞬アクセルを緩めるだけでアタックを続行したラッセルとの差が出たのもまた事実である。

 予選でアタックを完遂し、フロントロウからスタートできていれば、決勝レースのスタート直後にあんなにとっ散らかることはなかっただろう。

 そしてあの迷走したレース序盤も、アントネッリの勝利を奪う一因になった。アントネッリは少しでも早くポジションを上げようと、半ば強引に前を行くマシンをオーバーテイクしていこうとしてオーバーランを繰り返し、ポジションを落とした。その時先行を許したのはフェルスタッペンである。

F1第8戦オーストリアGP決勝レースギャップ推移

F1第8戦オーストリアGP決勝レースギャップ推移

写真: Motorsport.com Japan

 こちらのグラフは、レース中の首位からの差の推移を折れ線で示したモノである。

 赤丸の部分をご覧いただきたい。アントネッリを抜いていったフェルスタッペンは、すぐにルクレールを攻略し、ハミルトンに迫っていった。しかしその一方でアントネッリはルクレールに抑え込まれてしまい、タイムを失った。ルクレール攻略後はフェルスタッペンに近づいたが、やはり攻め手を欠いた。

 その間にラッセルは逃げ、しかも先にピットストップを済ませた。ラッセルはアンダーカットを成功させたのと同じ格好となり、結局アントネッリが1回目のピットストップを済ませた時には、ラッセルの15秒後方になった。

 ただこのピットストップも、アントネッリはほんの少しのタイミングのズレで絶好期を逃した。

 ウイリアムズのカルロス・サインツJr.が、マシントラブルによりメインストレートにマシンを止めた。メルセデス陣営はこれでセーフティカー(SC)もしくはバーチャル・セーフティカー(VSC)が出ると判断し、まだピットストップを終えていなかったアントネッリをピットに呼び込んだ。通常の走行時にピットストップすれば、20秒ほどタイムをロスすることになるが、SCもしくはVSC中ならばそのロスタイムは10秒ほどとなるからだ。

 しかしVSCが宣言されたのは、アントネッリがコースに復帰してからだった。そのため、VSCの恩恵を受けることはできなかった。

 その1周後にハミルトンがVSC中にピットストップ。11秒ほどのロスタイムでコースに復帰している。アントネッリとしてはもう1周後にピットストップしていれば、フェルスタッペンの前でコースに復帰できた可能性もある。アントネッリのピットストップ前、フェルスタッペンはアントネッリの12.062秒後方だったのだから。

 今回のグランプリでは、おそらく最高のパフォーマンスを持っていたのはアントネッリであったことは間違いないだろう。ただ予選での黄旗、スタート直後の混乱、そしてVSCのタイミングが、彼の勝利を阻んだといえよう。

 その3つの要素が全てミスだったとは言い難い。確かにスタート直後に混乱したことは、アントネッリのミスであるといえよう。しかし予選とVSCのタイミングは、不運とミスの紙一重だったと言える。

 メルセデスのトト・ウルフ代表は、予選での判断やスタート直後の迷走は、アントネッリの経験が不足していたからこそだと語った。確かに経験が備わっていればこのふたつの要素は避けられたはずであり、それがなければ勝利を掴むことができたはずだ。

 アントネッリがF1デビュー2年目でチャンピオンを獲得できるかどうかは、その経験不足をどう補うことができるか……ということにかかっているだろう。ちなみにチームとしても、VSCが出るタイミングを見極めることができていれば、アントネッリを手助けすることができたはずなのだが……。

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