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“史上最高”のF1を目指すためには何が必要か? 元敏腕エンジニアがF1の未来を語る

かつて敏腕エンジニアとして活躍したボブ・ベルは現在、F1の技術を広く社会に役立てようと奔走している。そんな彼に、F1の目指すべき道、未来について語ってもらった。

Lewis Hamilton, Mercedes F1 W11, Valtteri Bottas, Mercedes F1 W11, Max Verstappen, Red Bull Racing RB16, Daniel Ricciardo, Renault F1 Team R.S.20, Esteban Ocon, Renault F1 Team R.S.20, and the rest of the field at the start

写真:: Andy Hone / Motorsport Images

Thinking Forward

Thought leadership series

 ボブ・ベルは、マクラーレン、ベネトン、ジョーダン、ルノー、そしてメルセデスでF1のトップエンジニアとしての輝かしいキャリアを歩んできた。彼はルノーのテクニカルディレクターとしてフェルナンド・アロンソのタイトル獲得に貢献し、フラビオ・ブリアトーレの離脱後はチーム代表も務めた。そして現在のメルセデスF1チームを築き上げた立役者のひとりでもある。

 ベルはかねてより、F1の技術を広く社会のために活用することを熱烈に支持してきた。彼はその想いを実際に行動へと移し、F1チームのレース以外に関する問題を無償で解決するための団体『Grid4Good』を立ち上げた。同団体はF1における新型コロナウイルス感染症対策に関与し、重症患者向けの呼吸器の開発促進にも貢献した。

 モータースポーツ界をリードする人材の思想に迫る『#ThinkingForward』シリーズのインタビューの中でベルは、『Grid4Good』の目指すものについて説明。そして、彼はなぜF1が今後黄金期を迎えると考えているのか、なぜF1とフォーミュラEが合併すると考えているのか、それについても話してくれた。

Bob Bell, Renault Sport F1 Team Chief Technical Officer, at a media roundtable.

Bob Bell, Renault Sport F1 Team Chief Technical Officer, at a media roundtable.

Photo by: INFINITI Performance Team

ーーボブ、『Grid4Good』の構想はどのようにして生まれたのですか?

「私は数年前に60歳を迎えたが、それからはレースから離れて、社会のために何か違うことをしようと誓っていたんだ。モータースポーツは社会のためになっていると思うし、それを誇りに思っている。しかし個人的には、もう少し直接的なことをした方がいいのではないかと思った。そして2019年の初めに、F1での同僚数人と共に『Grid4Good』を立ち上げた」

「我々は非営利セクターのプロジェクトを引き継ぎ、モータースポーツ界の無料または低コストなソリューションプロバイダーと提携している。我々はイギリスの慈善団体のPRやマーケティングの手伝いをしたが、F1のPR会社がそういったことを無償でやってくれたこともあった」

「そして今年初めに新型コロナの危機が起こった。その際にピットレーンの面々は団結し、政府に技術的な支援を提供した。『Grid4Good』は“プロジェクト・ピットレーン”の一部を担っていたのだ。これにより、我々の予期せぬ形で我々のコンセプトが証明される形となった。現在もコロナに関する医療関係のプロジェクトをいくつか進めているし、常に新しいプロジェクトを検討している」

ーー先ほど、“プロジェクト・ピットレーン”について言及しましたね。F1チームの対応の速さには驚かされました。通常のプロセスでは人工呼吸器を作るのに時間がかかると思いますが、F1の対応の速さは際立っていたのではないですか?

「その通りだ。F1がもたらしたのは“できる”という姿勢だ。世界はより複雑になり、活動が難しくなっているが、その中で重要だったのは技術ではなく、モータースポーツのコミュニティがそれを期間内に実現できたということだ。我々に課題を与えてくれれば、我々が持つツールを使って誰よりも早く解決策を見つけ出すだろう。それが我々の仕事なんだ」

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Ferrari valves for lung respirators

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Photo by: Ferrari

ーーあなたはモータースポーツの技術が社会に浸透していくことが非常に重要であると長い間信じてきた訳ですよね。シートベルト、ディスクブレーキ、衝撃吸収構造など、日常生活にあるものの多くがモータースポーツから生まれたことに多くの人が気付いていません。そういった意味で、今回の件はあなたにとっても喜ばしいことなのではないですか?

「ああ、この業界全体を誇りに思う。先ほど広く社会に浸透した技術について具体的に名前を挙げてもらった。しかしモータースポーツ、特にF1がもたらす技術や方法論については、やはりあまり取り上げられていない。例えば、F1はマシンの空力デザインにおいてはCFD(数値流体力学)が活用されているが、コロナの流行以降は、治療を受けている患者のエアロゾル粒子(空気中の微粒子)の動きを解析するためにCFDが用いられた」

「患者が咳をした時など、エアロゾル粒子はどういう動きをするのか? 部屋から完全になくなるまでにどのくらいの時間がかかるのか? これらはCFDを使ってしか解析できない、本当に難しい問題だ。我々はこのような問題を迅速に解析し、信頼度の高い答えを導き出すための専門知識を持っている」

ーー私たちは、モータースポーツが目的を持って動くようになってきているのを感じています。これは全てのスポーツで言えることですが、特にミレニアル世代(1980年代初頭から1990年代中盤に生まれた世代)にとってはエンターテイメントのプラットフォームだけでは不十分です。持続可能性や多様性など、これらに対する需要が加速しています。このスポーツに、社会正義的な要素がますます求められるようになっているこの状況をどう捉えていますか?

「F1チームを所有している大企業にとっては本当に大きなことだ。彼らには大きな社会的責任があるからだ。こういった組織は世界の社会問題をより深く認識する必要があり、それがレースチームにも反映される」

「社会が変化している今、これは本当に重要になってきている。我々がファンとして獲得したいと思っている若い世代は、これまでの世代とは異なる何かを我々に求めている。それを認識して行動しなければ、その世代のファンを失うことになる」

「リバティ(メディア/F1オーナー企業)の新たなリーダーシップの下で、ロス(ブラウン/F1モータースポーツ担当マネージングディレクター)やチェイス(キャリー/F1 CEO)は、F1がそういったものの頂点に立てるように取り組んでいる。環境問題だけでなく、包括性や、STEM(科学・技術・工学・数学)のような話題、多様性、平等、公平性……多くのことが関係しているんだ」

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Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

ーー昨年、メルセデスの若いエンジニアの何人かと会いましたが、その多くが女性でした。パドックを見渡すと、今では多くのチームのシニア・レースストラテジストが女性です。このスポーツにおける女性の参加は増えていると感じますか? また5年後、10年後のピットウォールの顔ぶれは異なるものになっていると思いますか?

「ああ、もちろんだ。それは歓迎すべきことだ。しかし問題は、モータースポーツの世界にたどり着く前に始まっていると思う。社会の中で、エンジニアや科学者になることに早くから関心を持ってもらう必要がある。伝統的に白人男性の領域とされてきた分野に関心を持てるよう、初等教育から取り組まないといけない。F1やモータースポーツ界でも少しはできることがあるが、もっと草の根レベルでの変化が必要なのだ」

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ーー今季はF1にとって重要な1年でした。新たなコンコルド協定の締結、予算上限の設定など、これまでのF1ではなかったレベルの措置が講じられ、困難な時期に安定をもたらしました。あなたの経験則から、F1はこれらを活かして将来的に過去最高のものになっていくと予想しますか?

「もちろん。F1は常に良いものだ。F1が今取り組んでいること、進化させようとしていることで、過去最高のものになっていくだろう」

「コストをかけないという方向性は間違いなく重要だ。F1に参戦するための持続可能でない予算額を正当化することはできないからだ。そして戦力の均衡化を図る必要があるが、これは強力な統治体制があってこそ実現するもので、リバティのオーナーシップとFIAなしには実現できない。そして、そういったことがF1の面白さを損なうとは思わない。素晴らしいレースになるだろうし、偉大なチャンピオンや優秀なドライバーもいる」

「さらにF1ファンにとっては、コース内で起こることだけでなく、コース外で起こることも大きな関心事になってきている。Netflixの『Drive to Survive』シリーズの成功、ソーシャルメディアでのアクセス数の増加などからも、人々が日曜のレースだけを求めている訳ではないことが分かる。持続可能なF1であるためには、潜在的なファンのニーズを反映させて変化していかなければならない。そうしなければ、F1は衰退していくだけだ」

「では、技術的なF1の未来はどこにあるのだろうか? F1は基本的にハイブリッドであり、現在でも内燃機関が主流だ。そしてその一方で、完全な電気自動車によって競われるフォーミュラEというカテゴリーもある。この二項対立はいずれ解決しなければならない。私はF1について楽観的に考えているし、その見通しも良好だと思っている」

Oliver Rowland, Nissan e.Dams, Nissan IMO2

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Photo by: Alastair Staley / Motorsport Images

ーー今ではF1とフォーミュラEの予算額が近くなってきています。あなたが言うように、いずれは両シリーズがひとつにならなければいけない日が来るでしょう。しかし、フォーミュラEはご存知の通り、電動シングルシーターシリーズとしてのライセンスを長期的に独占しています。15年後、20年後のモータースポーツを想像した場合、ル・マンなどでは水素エンジンのプロトタイプカーが活躍していると思いますか? また、NASCARやツーリングカーなどの選手権に関してはどうお考えですか?

「私としては、この市場は最終的に、限りなく“CO2ゼロ(カーボンニュートラル)”になっていくだろうと思っている。F1とフォーミュラEはその違いを解消して、最終的にはどんな形であれ、ひとつの選手権になるだろう。それはル・マンについても同様で、こういった規格のマシン(プロトタイプ)は電気自動車か水素自動車といった方向に向かうだろう」

「多くの人たちの心の中には、今とは違った時代のレースが残っていくと思う。特に草の根レベルのレースには、まだ少し時代遅れの要素が多くあると思うが、そういった遺産が残ることは大事だ。持続可能性など、そういった大きなスケールのことは、上位に位置するカテゴリーのみが成し遂げていくだろう」

「F1とその他のビッグカテゴリーは、先頭に立って世界に通用する技術を示し、できるだけ早く技術の発展を助けるということで、(他のカテゴリーと)差をつけることができる。そうすることで、世界の国々に手本を示すことができるのだ」

 

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