F1 Hungaroring Pirelli test

FIA、2026年新レギュレーションに、ドライバーから批判が集まるのは分かっていたと明かす……しかし「今年のレースは面白い」と主張

FIAのニコラス・トンバジスは、2026年に導入されたF1の新レギュレーションに関して、事前にしっかりと調整できなかったことは「残念だ」と語った。

Ronald Vording

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公開日時: 2026/08/06 10:11

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 2026年のF1は、パワーユニットにおける電動モーターの出力比率が大きく引き上げられたことで、パドックの内外で大きな議論を巻き起こした。これについてFIAのシングルシーター部門ディレクターを務めるニコラス・トンバジスは、批判的な声が挙がるのは事前に分かっており、それを調整できなかったことは残念だと語った。

 まさに新時代を迎えた2026年のF1。史上最大級のレギュレーション変更が行なわれ、シャシーもパワーユニットも、昨シーズンまで使われていたものとは、大きく異なっている。

 中でもパワーユニットは、エンジンと電動モーターの出力が均等となった。ただその結果、エネルギーマネジメントがこれまで以上に重要となり、このエネルギーマネジメント戦略の違いによる抜きつ抜かれつのバトルが展開されるようになった。

 この新時代のF1については、ファンからは概ね好意的な評価が集まっていると、F1は主張している。しかしその一方で、ドライバーたちからは批判的な意見が圧倒的に多い。

 レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、実際に新世代マシンを走らせると、この新しいPUを猛批判。テスト時には「ステロイドを投与したフォーミュラEみたいだ」と表現し、マクラーレンのオスカー・ピアストリはベルギーGPの際に「予選グリッドがコンピュータの挙動によって決まってしまう」と語ったりもした。

 FIAのトンバジスは、ドライバーからこれだけ批判の声が挙がるのは、予想していたことだと語った。

「ドライバーたちはそもそも要求の厳しいお客さんたちだ。彼らが遠慮したり、本音を言わないことを期待していたわけではない。だから、予想以上の声が上がっているとは思わない」

 ドライバーからのエネルギーマネジメント、スーパークリッピング、そしてアルゴリズムなどに関する苦情は、想定していた通りだったようだ。

「今シーズン開幕までの2年間で、ドライバーたちから寄せられた苦情の多くは、我々も想定していたことだ。調整を試みたが、当時のガバナンス体制ではタイプできなかった」

 そうトンバジスは語った。

「だから現実的に考えて、この状況は当然の結果だったと思う」

■ドライバーたちの意見を聞いた。しかし……

Energy-starved circuits such as Silverstone and Spa-Francorchamps have highlighted the shortcomings of the 2026 regulations

 トンバジスは、PUにおける出力割合をエンジン60%、電気モーター40%に段階的に引き下げていく案は、もっと早く導入されるべきだったと語る。

「5月に議論を重ね、2027年と2028年のパッケージにたどり着くまで待たねばならなかったのは、少々残念だ。理想的には、2年ほど前に合意できていれば、これほどの議論は必要なかっただろう」

 2026年シーズン開幕までの間に、ドライバーたちは新レギュレーションの潜む問題点について、度々発していた。フェルスタッペンは2023年の段階で、シミュレータで2026年型PUを走らせた際の感想を、非常に辛辣に語っていた。

 ここからすれば、ドライバーの要求が聞き入れられなかったように見える。しかしトンバジスは、ドライバーの声を軽んじたわけではなく、ガバナンスの枠組み上、レギュレーションを大幅に変更することができなかったと説明する。

「自動車メーカーがPU製造者として参加することを決定すると、FIA、FOM、そしてPUメーカーを含む全ての関係者を拘束する、ガバナンス協定に署名することになる。これはチームにおけるコンコルド協定と同様のモノだ」

 そうトンバジスは説明した。

「そして2022年には、2023年から2025年のPUメーカーに対する要件を概説するための、別のガバナンス協定が締結された。これはシーズン開幕前のもので、初めてコスト制限が導入されたためだ」

 この協定により、各PUメーカーは、たとえ新規参入メーカーであったとしても、無尽蔵にPU開発に資金を投入できることはないと規定された。

「たとえばアウディのように、F1に参戦していないPUメーカーであっても、レギュレーションに拘束されることになる。『F1に参戦していないから、5倍の費用をかけられる』などと言うことはできないんだ。それは不公平だ」

「このガバナンス協定が締結されたのは、予算制限や運営の規則などを遵守することを義務付けるためのものだった」

 しかしこの協定が結ばれたことにより、レギュレーションを見直すのがとても難しくなった。変更を行なうためには、参戦予定のPUメーカーから、圧倒的多数の賛成を取り付ける必要性が生じたのだ。

「FIAが一方的に変更できる範囲にも制限が設けられた。いかなる変更も、PUメーカーの相当数の承認を得る必要があったんだ」

「だから(5月に実施したような)変更を行なうには、少なくとも4社の同意が必要だった。そしていくつかの調整について議論をしていた時には、4社の同意が得られなかった」

■重要だった電動出力”50%”

Tombazis had hoped that the changes for the coming years could have been implemented sooner

Tombazis had hoped that the changes for the coming years could have been implemented sooner

Photo by: Lars Baron / Getty Images

 なぜPUメーカーは調整に賛成しなかったのか? それは、自動車業界の状況と密接に関わっている。

 特にレギュレーションが策定された当時、世界中の自動車業界は、電動化へとシフトしていた。そのため、F1において電動領域を拡大することは、非常に重要だった。近年では自動車業界の電動化への流れはやや鈍化しているものの、完全に潰えたわけではない。

 また電動化への流れが鈍化したとはいえ、ハイブリッド車を主力としている自動車メーカーも多い。そういう意味では今をもってしても、F1のPUにおいてある程度高い電動比率確保し、エネルギーマネジメントを”鍛える”というのは重要であり続けているはずだ。

「全体として、エンジンと電動モーターの出力をほぼ均等にするのは、常に難しい目標であった」

 トンバジスはそう語った。

「しかしこれは、参戦するメーカー各社にとっては非常に重要な問題であった。率直に言って、F1に参戦するか否かを決断するための要素であった。もしPUメーカー各社が参戦していなかったら、F1にはパワーユニットが2種類しか存在せず、それは少々困ったことになっただろう」

「つまり、電動出力の割合を増やすという要件が、こういう難しい状況を生み出したのだ」

 トンバジスは、2022年の時点で現状の課題を認識していたものの、その時点ではレギュレーションを根本的に変更するには手遅れだったと説明した。

「2022年頃にシミュレーションが行なわれた時点で、こういう問題があることは認識していた。しかし開発がかなり進んでいたので、変更を加えることは難しかった。一部のメーカーは、既に多くのリソースを投入していた」

「そのためシーズン序盤は、この問題について議論する上で、やや不利な立場に置かれてしまった」

 しかしトンバジスは、こういう状況があるにもかかわらず、今シーズン前半のレースは素晴らしかったと強調した。

「そうは言っても、ほとんどのレースはかなりエキサイティングなモノだったと思う。激しいバトルが繰り広げられた」

「そして現状では、支配とまでは言わないが、あるメーカーが明らかに優位に立っていると言える。ただ過去の新レギュレーション導入初期にそういう状況だった場合、レースは単調なものになっていた。だが、今はそうではない」

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