ようこそ、F1と新幹線のディープな世界へ1:京都鉄道博物館でF1イベントが実現した理由……担当者の情熱が繋いだ縁
京都鉄道博物館で、10月23日からイベント「レーシング&レールウェイ ヒストリー」が開催される。なぜ異色の組み合わせのイベントが実現したのか?
本館:京都鉄道博物館
写真:: 京都鉄道博物館
1964年のことである。日本を代表する乗り物が同じ年にふたつ誕生した。新幹線とホンダF1マシンである。
新幹線は、世界初の高速鉄道としてこの年から東京〜新大阪間を走り始め、今や北海道から九州まで、その鉄路が張り巡らされている。その間、営業最高速度は210km/hから320km/h(東北新幹線区間)に引き上げられ、なくてはならない交通手段となった。いや、日本の文化の一部といってもよかろう。
一方F1はホンダが1964年から参戦をスタートして、翌年には勝利。1986年〜1991年はこのホンダ製のエンジンを積んだマシンがF1界を席巻し、日本にはF1ブームが巻き起こった。今もホンダ(厳密に言えばホンダ・レーシング/HRC)製のパワーユニットを搭載したレッドブル・レーシングのマシンが、タイトルを争っている。
新幹線0系
写真: Motorsport.com Japan
新幹線もF1も、速さを極限まで追求した乗り物。乗車した際の快適性を重視するかどうかというところは真逆と言えるかもしれないが、その”究極”を目指した造形美は、相通ずるモノがある。本稿をお読みいただいているF1ファンの皆様の中には、「新幹線もやっぱり良いよねぇ、好きだなぁ」という方も少なくないだろう。いやもしかしたら、「新幹線が熱烈に好き」とか「いや、実は新幹線の方が好きなんです」という方も、数多くいらっしゃるかもしれない。
そんな新幹線をはじめとした鉄道車両とF1マシンが共演するイベントが、10月23日から京都鉄道博物館で開催される。「レーシング&レールウェイ ヒストリー」である。このイベントでは、ホンダRA271やマクラーレンMP4/4、ロータス99TといったF1の名車が、歴代の新幹線電車の0系、100系、500系などと並べて展示されるのだ。このイベント実施が発表されるや、F1好きの鉄道ファン、鉄道好きのF1ファンを中心に、SNS上などで大きな話題となった。かくいう私も、小躍りして喜んだものだ。
新幹線とF1のコラボレーションは、今回が初めてというわけではない。2024年と2025年には、鈴鹿サーキットで開催されるF1日本GP”観戦専用”の特別新幹線が運行された。また、F1マシンが東海道新幹線の線路横を走り競争するという企画が実現したこともあった。
しかし、鉄道車両とF1マシンが同時に展示されるということは、これまで行なわれることはなかった。前述のように近しいところもある、しかし大きくかけ離れたところにいるようにも見えるF1と鉄道車両。今回のコラボはなぜ実現したのだろうか?
今回のイベントを主催する京都鉄道博物館とHRCに話を聞くと、担当者の熱意がこの企画の実現につながったようだ。
鉄道博物館担当者が、大阪の岩佐歩夢イベントを直撃
Honda Racing Fan Meeting in Osaka
写真: HRC
話は2024年の8月に遡る。大阪・門真市のららぽーと門真で、岩佐歩夢プロデュースのイベント「Honda Racing Fan Meeting in Osaka」が開催された。このイベントを、京都鉄道博物館の北野高宏氏が訪れた。北野氏は幼少期からF1を観て育った熱狂的なF1ファン。以前からF1と鉄道を絡めたイベントをやりたいと画策していた。
「我々京都鉄道博物館は、異業種とのイベントも積極的にやるような、そういう風潮があります。その中で私は、F1を含めてモータースポーツが大好きなので、何年も前からF1のイベントをやりたいという気持ちがありました」
そう北野氏は言う。
「そんな中でちょうど門真で岩佐選手のイベントがあるということを知って、そこでなんとかこの話ができないものかと思いました。そして博物館での仕事が終わった後に急いでららぽーと門真に行きまして、イベントの片付けをしているスタッフさんに話しかけて、そしてHRCさんに繋いでいただいたんです」
そこからとんとん拍子に話が進み、今回のイベント実施が決まった。
「いやぁ、興奮してますよ。常に武者震いしてますし、イベントが決まった時には、鳥肌が立ちました」
一方でHRC側の窓口となっているのが、HRC運営ブロックの田幸陽一氏である。
田幸氏は、京都鉄道博物館での企画の相談が舞い込んできた際、非常に新鮮な驚きを受けたと明かす。しかし同時に、「これまでモータースポーツに触れる機会がなかった方々に、その魅力をお伝えできる絶好のチャンスだ」と感じ、社内で前向きに検討を進めることになったという。
「サーキット以外でイベントを行うことで、さまざまな方と触れ合いたいという思いはありましたが、今回のようなお声がけをいただいたのは本当に驚きでした」
そう田幸氏は語る。
「現場でのこのようなお話は実現に至らないことも少なくないのですが、後日改めてご連絡をいただいた際は、たいへん嬉しく感じました。ぜひ良い形で実現させたいと思い、社内での検討を進めていきました」
「京都鉄道博物館という、モータースポーツファン以外の多くの方が訪れる場所で、私たちの活動をご紹介できることは大変ありがたい機会です。それ以上に、北野さんのように強い情熱を持ち、モータースポーツを愛する方に企画を立てていただけたことに、深い意義を感じています」
「ですから今回はなんとしてでも、お客様に楽しんでいただけるものにしたいという思いがあり、実現できる手応えを感じて社内の関係部門と連携しながら企画を進めました」
HRC/ホンダ社内の”隠れ鉄”が、イベントを全力後押し
扇形車庫:京都鉄道博物館
写真: 京都鉄道博物館
この企画案が通ると、HRC、そしてホンダの社内でも、協力者が雪だるま式に増えていったという。当然、有効なPRチャンスだという理由もあろうが、HRC/ホンダ社内にも、鉄道好きが数多くいるというのも、それを後押ししたかもしれない。田幸氏は明かす。
「当初は限られたメンバーで検討を始めました。でも徐々に、『これは良い企画だ!』ということで、協力者が雪だるま式に増えていきまして、今では多くの部門から協力を頂いて推進しています」
そう田幸氏は言う。
「今では渡辺(康治HRC社長)をはじめ、ホンダ本社のF1マーケティング部門など、様々な人たちがこのイベントの成功に期待しています。ホンダコレクションホール(モビリティリゾートもてぎ内)やホンダレーシングギャラリー(鈴鹿サーキット内)からも、普段は持ち出せないようなマシンを貸出してもらえることになりました」
「社内には思いのほか鉄道ファンが多く、『これは素晴らしい企画だね』『是非見てみたい』といった声があちこちから聞こえてきました。」
鉄道ファンにF1を、F1ファンに鉄道車両をじっくりと見てほしい
エントランス:京都鉄道博物館
写真: 京都鉄道博物館
イベントは10月23日から、約2ヵ月にわたって開催される。北野氏は多くの人に展示を見てほしいと語る。
「鉄道ファンの人たちに、F1マシンを見てもらって、新しい発見をしてほしいと思っています。一方でモータースポーツファンの方々には、鉄道車両を見てもらって、新しい発見をしてほしいと思います」
鉄道車両とF1マシン……それをじっくりと見比べると、近似値など様々な気付きがあるはずだ。
そしてHRCとしても、今回のイベントを基に、新しいファンとの出会いを楽しみにしているという。
「新しいお客様、新しいファンとの出会いを、すごく楽しみにしています」
そう田幸氏は語る。
「鉄道ファンの皆さんがF1マシンを見た時に、どんなことをコメントしていただけるのか、どういう発信をしてくれるのかというところを、純粋に楽しみにしています」
一体どんな光景が広がるのか……今からワクワクが止まらない。
記事をシェアもしくは保存
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。