ハミルトン、F1に未だ残る人種差別的風潮に「時代遅れな声を聞き続ける必要はない」と苦言。具体的な行動促す
ルイス・ハミルトンは、ネルソン・ピケからの人種差別的発言を受けて、F1界は「時代遅れな声を聞き続ける」のを止め、”具体的な”行動を起こすよう呼びかけた。
写真:: Andy Hone / Motorsport Images
ネルソン・ピケからの人種差別的発言を受けたルイス・ハミルトン(メルセデス)は、F1界は「時代遅れな声を聞き続ける必要はない」と語った。
3度のF1世界チャンピオンであるピケは昨年のポッドキャストの中で、2021年のイギリスGPでのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)との交錯について語る際に、ハミルトンをn***aと”Nワード”で呼称。今年のイギリスGPを前にこの発言に注目が集まり、ソーシャルメディアを騒がせた。
ハミルトンはソーシャルメディアを通じて「今が行動の時」だとF1を取り巻く状況の改善を訴えた。
ピケはこの発言について謝罪した一方で、人種差別的な意図はなかったとその受け取られ方には異論を呈した。しかしこの発言によりピケはF1パドックから”追放”。また既に英国ドライバーズクラブの”名誉会員”資格が剥奪されるなどの影響も現れた。
ハミルトンはイギリスGPに先立って木曜日に行なわれたFIAの定例記者会見に出席した際、この件について初めて公に言及。F1やFIAを始め、他チームやドライバーなどライバルからも示されたハミルトンを支持する声に感謝の意を表した。
「僕は人種差別や非難、ネガティブで古臭い考え方、差別を暗に意味するモノをずっと受けてきた」とハミルトンは言う。
「だから僕にとっては目新しいモノじゃない。それよりも、もっと大局的に見るべきなんだ」
「僕は、なぜ今も時代遅れな声を聞く場を設けているのかが本当に分からない。彼らは僕らのスポーツについて話しているけど、僕らは全く違う方向を向いているんだから」
「僕らはアメリカや南アフリカなどその他の国で成長を遂げようとしている。そして僕らは未来を見据え、今の時代を代表するような若い人たちの声を聞く場を設ける必要があるんだ」
「一個人に限った話じゃないし、その言葉遣いだけのことでもない。もっと大局的な話だよ」
F1とFIAはピケの発言に対して非難の声明を発表。F1はこれまでも#WeRaceAsOne のスローガンを掲げ、人種差別の撲滅や多様性・包括性の向上を目指しているが、ハミルトンは”姿勢”だけでは「不十分」だとしてこう続けた。
「今こそ、実際に行動することが重要だ。僕らはちゃんと行動し始めなきゃダメだ」
「F1にも、メディアにも言えることだけど、ああいう人たちにプラットフォーム(ソーシャルメディアやマスメディアなどを通じた発言の場)を与えるべきじゃないんだ」
「ああいう時代遅れな考えは、それが無意識的であれ意識的であれ、僕のような人がスポーツに参加することや女性がこのスポーツにいることについてこれないんだ」
「差別は、生み出し助長すべきモノじゃない。差別を生み出し、人々を分断するためにプラットフォームを与えるべきじゃないんだ」
「この数週間、このスポーツから何十年も離れている人がネガティブな発言を行ない、僕を貶めなかった日はないように思う」
「それでも僕はまだここにいる。まだ力強く立っているんだ」
前戦カナダGP以降、ハミルトンは3度のF1世界チャンピオンであるジャッキー・スチュワートや元F1最高責任者のバーニー・エクレストンからの非難に晒されてきた。
ハミルトンは将来的な包括性に焦点を当て、F1チームやF1に関わる企業が「毅然とした態度で」F1の多様性を改善するための行動を起こす必要性を訴えた。
これまでもハミルトンはF1のみならずモータースポーツにおける多様性向上を訴え、行動を起こしてきた。モータースポーツ界における多様性などの現状把握を目的とした「ハミルトン委員会」を設置し、イギリスの王立工学アカデミー主導で調査を行なった。
その報告書の中には「多様性、包括性に関する憲章づくり」や「黒人のコミュニティにおけるSTEM(科学、技術・工学・数学)教育の充実」などが提言されていた。
「グリッドに立ち、包括性について話すのは良いことだ」とハミルトンは続ける。
「でも実際の行動に起こさなきゃ、空っぽの言葉に過ぎない」
「これ(F1)は成長著しいビジネスだ。チームはこれまで以上に収益を挙げているし、それにより今後も成長し続けるだろう」
「D&I(多様性・包括性)のために使われた他の投資額の全容を僕は把握していないけど、僕らがこれまで、そしてこれから投資する額ほど多くはないと見て間違いない」
「F1憲章に参加することに同意した全てのF1チームと電話で話をしたが、彼らはまだ署名していないし、進行中でもない」
「これ以上、分裂を生み出すような声を増幅させてはならないんだ」
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