ウイリアムズの新代表が直面する問題は山積み。前任のカピト「マラソン中の患者の心臓手術をするレベル」

ウイリアムズは、チーム代表の座が空席のまま2023年を迎えることになったが、新チーム代表は難しい挑戦に直面することになりそうだ。

Alex Albon, Williams FW44

 ウイリアムズは、2022年12月にこれまで2年間F1チームを率いてきたヨースト・カピトと、テクニカルディレクターだったフランソワ-グザビエ・デメゾンの退任を発表。重要なポストが空席のまま、新年を迎えることになった。

 チーム上層部の大きな変化は、オーナーであるドリルトン・キャピタルが体制を一新し、チームの方向性を変えたいと考えたことを示している。

 後任のチーム代表は追って発表されるとしており、まだ明らかになっていない。だが誰がチーム代表を引き継ぐにしても、その課題は重大だ。

 ウイリアムズは2022年にいくつかの分野で一歩前進し、訪れたチャンスを活かして5レースでポイントを獲得した。それでも、コンストラクターズランキングでは8位から10位に後退し、他チームから大きく離された。そのためチームは、早々に2022年マシンである『FW44』の開発を中止している。

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 カピトは、チームを去る前にアブダビで行なわれたインタビューで、チームがイギリスGPが行なわれた7月ごろに2023年に向けて開発体制をシフトしたことで、言い訳ができない状態になったことを意味していると語った。

「2023年は一歩前進しなければならないし、そうでなければ何かが間違っている」

「我々はまだ、他の人たちがいる場所に到達できていない」

 カピトの言葉は、ウイリアムズの現状を率直に評価したものだ。2019年や2020年といった低迷期と比べれば、チームはそれなりの進歩を遂げたかもしれない。ジョージ・ラッセルがウイリアムズで活躍したことは明らかであり、復活ではなく生き残りを優先した長年の過小投資から回復している途上なのだ。

 そのためウイリアムズは、他のチームがすでに整備しているインフラやソフトウエアといった分野に投資し、追いつかなければならない。

「色々な理由、主に財務的な理由があって、ウイリアムズは少し過去にとらわれていたんだ」

 デメゾンはブラジルで、チームの内部改革についてそう語った。

「だから風洞への投資、ファクトリーへの投資、そして人材への投資を優先させた。少しずつだが、チームを作るには2~3年必要で、このチームから最大限の力を引き出すにはさらに2~3年必要だ。長い道のりだ」

 一方で、ライバルも立ち止まっているわけではない。ウイリアムズが他チームに追いつこうと整備を進める中で、ライバルたちはよりパフォーマンスを発揮できる分野にお金を使っているのだ。予算による制限がある今はその影響がより顕著となっている。

「だからこそ、バランスが取れるまで本当に長期的な視点が必要なんだ」と、カピトは言う。

「『みんな同じお金(予算)を持っているのだから、みんな同じレベルにあるはずだ』と言われるかもしれないが、それは違う。各チームは、それぞれ異なるレベルで予算制限に臨んでいる。そして予算制限が導入される前のウイリアムズは、何年もの間ほとんど何も投資していなかったことが分かる」

「だから後れを取ってしまったんだ。今、みんなが持っているモノと同じレベルに追いつくためには、ただお金をつぎ込めばいいというわけではないんだ」

 ウイリアムズはチームの整備に時間をかけている間、何に投資するかを賢く選択する必要があるのと同時に、コース上で前進し続けることも必要だ。ウイリアムズが過去5年でコンストラクターズランキング最下位を脱したのは、2021年のみ。この傾向は早急に変えたいと考えているはずだ。ドリルトンはチームを立て直すための資金を持っているかもしれないが、同時にパートナーにとって魅力的な選択肢であり続けたいとも思っているはずだ。

 今に目を向けながら、将来のために投資するというのは、なかなか難しいトレードオフになるだろう。

「今やっていることは、患者がマラソンをしている間に開腹手術をするようなものだ」とカピトは言う。

「それをマネジメントしなければならないんだ。『OK、2年間チームをシャットダウンして再構築し、カムバックする』なんて無理な話だ。だから、シーズン中のプレッシャーもあるし、ホームでもプレッシャーがある。それが現代F1だ。どうやってチームを運営していけばいい?」

 その疑問は、もはやカピトが解決しなければならない問題ではない。彼は2020年末にチームに加入した際、チームのあらゆる部署を回って最大の問題領域は何かを突き止めたのである。

 しかし今回の退任劇は、彼の持つビジョンに対する上司の信頼が失われたことを指摘している。チームをまとめるための”北極星”を見つけ、新しい文化を浸透させることは、誰がチーム代表を引き継ぐにしても大きな課題である。

 チーム代表はF1で最も過酷な仕事のひとつであることは、カピトを見ても分かる。しかし、最もやりがいのある仕事であるとも言える。

 マクラーレンのチーム代表だったアンドレアス・ザイドルは、チームの状況を好転させたことで称賛され、ザウバーのCEOにステップアップする道を開いた。アウディはF1に参入する何年も前から彼にアプローチしていたのだ。

 もし誰かがウイリアムズで同じようなパフォーマンスを発揮することができれば、チームにとっても新代表にとっても良い結果が訪れるはずだ。

 
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