15年前とは大きく変わった、F1レースエンジニアのお仕事……気弱な人に務まるような業務ではない??

F1で様々なテクノロジーが活用されるようになった結果、レースエンジニアの仕事内容は大きく変わることになった。

15年前とは大きく変わった、F1レースエンジニアのお仕事……気弱な人に務まるような業務ではない??

 F1チームのレースエンジニアの仕事は、ドライバーからのフィードバックを聞き、それをマシンの調整に活かすということだった。しかし今では、非常に複雑な役割になっている。

 彼らはドライバーに対峙するだけでなく、リアルタイムで分析を行なうために、ピットウォール、ガレージ、オンラインで繋がるファクトリーのオペレーションチームのコミュニケーションのトップに立ち、それを取り仕切らねばならないのだ、

 ある意味今やレースエンジニアは、リアルタイムのデータをドライバーに供給する”連絡役”となったわけだ。

 最近行なわれたロシアGPとトルコGPは、天候に左右されるレースとなり、判断力が大きく影響を及ぼすことになった。その結果、ドライバーとピットウォールの間の関係性が非常に重要であることを、改めて際立たせることになった。

 この2レースは、レースエンジニアがドライバーのフィードバックだけでなく、ストラテジスト、気象予報士、データアナリストらから寄せられる情報を全て聞き入れ、判断する必要がある完璧な証拠となったのだ。

 我々がネット配信やテレビの放送中に聞くことができるドライバーとエンジニアの無線更新は、成功と失敗の一例に過ぎず、全てを理解する上での氷山の一角でしかない。

 かつての役割であった、ドライバーの意見を取り入れ、マシンの調整に活かすという”一方方向”のコミュニケーションは、今のレースエンジニアの役割とは程遠い。今や絶え間なく対話を行なう必要があり、そしてレースエンジニアの役割は、コース上でのあらゆる瞬間に成功を確保するための、基盤になることだった。

 現在フェラーリでレーシングディレクターを務めるローレン・メキーズは、これまでアロウズやミナルディ、トロロッソ、そしてFIAなどで働いてきた豊富な経験を持つ。そして彼曰く、10年ほど前から、レースエンジニアの仕事は変わってきたという。

「レースエンジニアの役割で最大の変化は、ドライバーをコーチングするという仕事が加わってきたことだ」

 そうメキーズはmotorsport.comに対して語った。

Laurent Mekies, Racing Director, Ferrari, in the Team Principals Press Conference

Laurent Mekies, Racing Director, Ferrari, in the Team Principals Press Conference

Photo by: FIA Pool

「15〜20年前には、今では利用できるようになったリアルタイムデータが存在しなかった。そのため、エンジニアがドライバーに対して、今のようなドライビングにおけるアドバイスを提供することはほとんどできなかったんだ」

「F1は大きく進化した。現在のリアルタイムの分析と評価に関するレベルは、タイヤについてのより深い知識を与えてくれるようになった。また、より多くのリアルタイム・パラメータが存在していて、マシンにはより多くのセンサーが取り付けられている」

「これにより、マシンから受け取ったデータをリアルタイムで解釈し、情報をしてドライバーに渡すことができる」

 F1チームが大きくなり、そしてレースエンジニアは様々な外部関係者からもたらされる情報を取捨選択し、ドライバーに提供するということになる。そういう意味では、通信回線が非常に重要だということになる。

 このプロセスで何らかのミスがあったりすれば、素晴らしいリザルトと完全な失敗を分けてしまう可能性すらあるのだ。

 また与えられた役割が拡大し、複雑さが増すということは、コミュニケーションスキルのトレーニングも必須であるということを意味する。そしてそのパフォーマンスを、継続的に分析していく必要がある。

「各チームはそれぞれ独特のコミュニケーション手段を整えている。それは、個々のエンジニアの適正という範囲を超えている」

 そうメキーズは言う。

「我々はいくつかのテストを行ない、ある種のトレーニングも用意している。さらにレースウィークエンドが終わった後、エンジニアとドライバーの間の無線交信と、チーム内部のネットワークで行なわれる通信の両方を聞き直し、再分析する」

「ソチのレース(ロシアGP)を例に挙げれば、これには天気の情報およびコース上にいる全てのドライバーのタイヤコンディションの情報、そしてマシンに関する情報とライバルのペースなどが含まれていた。そして全てのデータがリアルタイムで読み取られることになる」

「これはサーキットのガレージ、ピットウォール、そしてドライバーに対して、リモートで繋がっているガレージから渡される対話と決定の流れに関する、通信手順を組み合わせた一連の指示なんだ。そのために話し合い、決定、コミュニケーションのための時間が必要なんだ」

Toto Wolff, Team Principal and CEO, Mercedes AMG, and colleagues on the pitwall

Toto Wolff, Team Principal and CEO, Mercedes AMG, and colleagues on the pitwall

Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images

 しかしドライバーの好みに応じて、その手順、そして話し方などを調整する必要がある。レースエンジニアはそれに対処するための独自のアプローチを考え、情報の流れを、コクピットにいる”個性の強い”ドライバーに、最適なモノにしなければいけないのだ。

 メキーズは次のように語る。

「全てのドライバーが、同じ量の情報を望んでいるというわけではないんだ。そして全てのドライバーが、同じタイミングでその情報を求めているわけでもないんだ」

「モチベーションを上げさせたいと思うドライバーもいるが、放って置いて欲しいというドライバーもいる。常にラップタイムを求めるドライバーがいれば、さらに攻めなければいけないという情報は参照として機能するだろう。しかし、コミュニケーションを最小限に抑え、より静かなアプローチを好む人もいる」

「しかし、エンジニアとドライバーの関係性が基本だ。そしてドライバーを最高の状態で走らせるために、正しいアプローチを理解する必要がある」

「コミュニケーションの撮り方と言葉のトーンは、話していく中で理解する必要がある。時には、より興奮しているように見える対話が、ドライバーの個性を活かし、ドライバーが最善の形で走るために必要とすることを提供するのが目的なんだ」

 ドライバーがコース上を走る際、ミスのないドライビングを求められる。それはレースエンジニアも同じであり、決して簡単な仕事などではない。

「それは、気弱な人に務まるような仕事ではない」

 そうメキーズは説明する。

「誰もがミスを犯す可能性がある。そういう意味では、誰かよりもミスを少なくなるようにすることが課題なんだ」

 

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