公道を使えない! 想定外の事態が、マイアミ・オートドロームの”魅力”を引き上げた?
F1マイアミGPのサーキット設計担当者は、当初予定されていた公道を使うことができなくなったことが逆に功を奏し、修正版レイアウトで優れたことができたと考えているようだ。
写真:: Zak Mauger / Motorsport Images
F1マイアミGPの舞台となるマイアミ・インターナショナル・オートドロームは、当初は一部公道を使うレイアウトになる予定だった。しかし地元住民の反対運動もあり、公道を使うことができなくなったため、ハードロック・スタジアムの敷地内で完結するレイアウトへと変更された。
サーキットのデザインを担当したエイペックス・サーキット・デザインによれば、この変更によってコースをより良いモノにする機会を得ることができたという。
マイアミ・インターナショナル・オートドロームは、ハードロック・スタジアムの敷地内に造られた、半常設サーキット。しかしマイアミGPが終われば、従来のスポーツイベント用の複合施設に戻ることになる。
このマイアミGPは当初、2019年から開催される予定でプロジェクトが始まった。しかも最初の案では、マイアミビーチに近い、アメリカン航空アリーナ周辺の公道コースが舞台となる予定だった。しかし地元住民の反対に遭うなどしたため、開催計画が頓挫していた。今回のハードロック・スタジアムの周辺を使うコースも、そもそも199番街通りを使う予定だった。しかしこれについても、交通渋滞を引き起こす可能性があるなどとして反対運動に遭い、使うことができなくなった。
その結果、ターン8がタイトになり、199番街通りに沿うような形でゆるく曲がったターン8からターン11までの1.4kmに及ぶ全開区間が設けられることになった。またこの区間は、4月上旬に開催されたテニスの”マイアミ・オープン・トーナメント”の舞台となったテニス施設などに干渉することになる。その機能を損なわずにサーキットを設計する必要があった。
「199番街通りが選択肢ではなくなったことで、多くの変更を行わねばならなかった」
サーキットを設計したエイペックス・サーキット・デザインの創設者でもあるクライブ・ボウエンはそう語る。
「しかしそのことは、我々がさらに素晴らしいモノを作るチャンスをもたらした。そこで西の駐車場を通り抜け、199番街通りに入る代わりに少し鋭く曲がるようにした」
「そしてその後で、マイアミ・オープンのテニス施設の中心をまっすぐ走り抜けていくことになる。ご想像の通り、これはあまりやりたくはなかった」
「だからどうやって設計するのかを、考えなければならなかった。高低差を機能させ、排水路も機能させ、そしてテニスコートも引き続き使えるようにしなければならなかった。だからマイアミ・オープンが開催される前に、コースを作らなければいけなかったのだ」
「(4月の)テニスの大会が終わったら、その装置をすぐに片付け、サーキットに変えなければならなかったのだ」
A view of the track
Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images
コースのデザインは、F1のカレンダー内の他のいくつかのサーキットを連想させる。ターン8はポール・リカールのボーセ、そしてターン8からターン11の全開区間は、アゼルバイジャンの最終セクターを思わせる。
ターン11から先の低速区間は、メキシコのスタジアムセクション”フォロソル”に似ており、ターン14〜15のシケインはカナダの最終コーナー”チャンピオンズ・ウォール”のように少しのミスでウォールの餌食になってしまう可能性もある。
なおターン6と7は縁石が取り外され、サウジアラビアGPで起きたミック・シューマッハーのクラッシュと同じようなことが発生しないようにされている。
「縁石の代わりに、同じように塗装された縁石の土台を用意する。それによって、誰かがワイドに走ったとしても、同じように縁石に乗り上げてしまう問題が起きないだろう」
そうボウエンは語った。
なおターン4〜7の間は、乱流の影響を受けにくくなったマシンのおかげで、接近戦を繰り広げることができるはずだろいう。
「この部分は、マシンにとって本当に挑戦的な部分だ」
そうボウエンは語る。
「前世代のマシンの場合には、後方乱流によってマシンのダウンフォースが失われることもあった。しかし新世代のマシンのおかげでグランドエフェクト効果が高くなり、車体が生み出す乱気流が減った。つまり、接近戦を繰り広げることができるようになった」
「我々はF1とその技術者と協力し、マシンのダイナミクスがどうなるかを理解し、グラウンド・エフェクト効果の時代に対応するコースを設計した」
「我々が期待しているのは、マシンがターン8まで接近した状態となり、そのままターン11まで走ることができることだ」
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