MotoGP

MotoGPで厳しい戦いが続くHRC。課題の空力面での躍進なるか……F1やeVTOLの知見を活かし、まさにオールホンダで研究開発中

MotoGPマシンの空力とは実に複雑。その難題に取り組む、HRC(ホンダ・レーシング)に話を訊いた。現在オールホンダ体制で取り組んでいるという。

田中 健一 永安陽介

公開日時: 2025/01/23 10:44

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Honda bike detail

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写真:: Gold and Goose / Motorsport Images

 F1をはじめ、四輪レースを戦う車両には、羽……つまりウイングが装着されているのが常である。これは、平たく言えばダウンフォース……つまり車体を路面に押し付ける力を、空気を使って生み出そうというものだ。そうすることで、高いスピードでコーナーを曲がることができるわけだ。

 最近ではこのウイングが、MotoGPのマシンにもつけられることが当たり前になりつつある。もちろんこのウイングも、マシンを路面に押し付ける力を得るためのものである。しかし四輪マシンとは異なり、二輪車は右に左にと大きく車両を傾けることになるため、ダウンフォースを安定して得るのは容易ではない。

 MotoGPマシンに取り付けられたウイングは、一体どんなことを目指しているモノなのか? 改めてホンダ・レーシング(HRC)に尋ねた。

 2024年のMotoGPでHRC勢は大苦戦。トップ10フィニッシュを一度も記録できないという、最悪のシーズンを過ごすことになった。

 この原因のひとつについてHRCの佐藤辰レース開発室長は「タイヤを他社よりもうまく使えなかった」と説明する。

 しかし「タイヤをうまく使えない」とは、一体どういうことなのか? そう尋ね、さらに詳しく説明を求めた。

「タイヤをグリップさせるためには、当然荷重をかけなければいけません。その荷重をかけることが、ある意味うまくできていませんでした。エアロとエンジンという2大要素があると考えています。2024年には、その部分を開発してきました」

 では二輪のエアロとは、どんなモノを狙ったものなのか?

「基本的にはタイヤをグリップさせるためのものです。F1と同じですね」

 そう佐藤開発室長は語る。

「でも、二輪の場合にはダウンフォースではなくなってしまいます」

「四輪では、車体が左右に倒れることがありませんよね? そしてピッチングとか、ヨーイングという、横方向の動きもそれほど大きくありません。だからとにかくダウンフォースをかけて、タイヤを路面に押し付ける力を生み出せば、クルマが速く走るということになります」

「でも二輪では、前後にとんでもなく動きます。左右にも60度くらいずつ傾きます。究極で言うと、ライダーがぶら下がるような格好にもなります。つまりわけの分からない動き方をするんです」

「その中でタイヤに荷重をかけるとなると、ダウンフォースだけではだめ……ダウンフォースをかけても、タイヤにうまく荷重がかからないんです」

 だからこそ、四輪車のウイングとは異なり、カウルの両側に輪っかのような空力パーツがついている……それにより、様々な状況に対処しようとしているのだ。実に複雑なことが起きている。

「タイヤに荷重をかけるということ自体は四輪と変わらないものの、F1や四輪レース車両とは違うかな……二輪独自の形に変えていかないと、タイヤのグリップをうまく発生させることができません」

「車体がこう動いたら、こう働くとか、ライダーが動いちゃったらその羽って荷重を生み出せるんだっけとか、そういう色んなことが起きています。空力はかなり難しいです。でも、そこをやらないと、今のMotoGPではなかなか速く走れません」

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 HRCの空力開発は、MotoGPマシンの開発拠点である朝霞でも行なっているものの、今では四輪レースの開発拠点であるHRC Sakuraでも行なわれているという。

「当然風洞実験もしますし、CFD(計算流体力学)もやっています。あらあゆるシミュレーションをしていますよ」

「朝霞でもやっていますし、Sakuraにも風洞施設があるので、そこも使うようになっています。F1などのリソースも使わせていただいてやっています」

 2022年、それまでは二輪のレース専門会社であったHRCに、ホンダの四輪レース部門も取り込まれ、新生HRCとなった。その協調関係が徐々に現れつつあるようだ。しかもそれに留まらず、オールホンダ体制でMotoGPでの強さを取り戻そうとしている。

「四輪の方と人の交流もやっています。でもどう見ても、F1の方がすごいんですよ。解析、設備……お金のかけ方も含めてですね。彼らの方がやっぱり最先端を行っています。ただ我々としては、世界の最先端の技術を知れるというのはすごく有益なので、それを教えていただいたり、協力してもらっています。二輪にそのままフィードバックできるもの、できないものがありますけどね」

 そう佐藤開発室長は語り、さらに次のように続けた。

「ホンダは四輪、汎用、飛行機と色々やっていますんで、オールホンダで技術を共有してもらっているというのは、非常に重宝しています」

「例えば空力の面では、eVTOL(いわゆる空飛ぶクルマ)をやっていた方にも入っていただいています。彼はシミュレーションも含めてやっておられるので、それをそのままHRCに活かしてもらっています。(2024年9月の)ミサノテストで投入された新しいカウル等も、彼にやっていただきましたね」

 ここ数年、MotoGPでは苦しい戦いが続いてしまっているHRC。しかしF1やスーパーGT車両、そしてeVTOLと、まさにオールホンダでの復活が目指されている。

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