コラム

F1 アブダビGP

レッドブルF1更迭か、あるいは勇退か……崖っぷちペレスに迫られる”決断”

セルジオ・ペレスはF1最終戦アブダビGPを前に、自らの意思でレッドブルを去るのか、それとも不本意な形でチームを追い出されるのか、決断を迫られるかもしれない。

Christian Nimmervoll

編集: 2024/12/05 10:52

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Christian Horner, Team Principal, Red Bull Racing, talks with Helmut Marko, Consultant, Red Bull Racing, Sergio Perez, Red Bull Racing

 セルジオ・ペレスのF1キャリアが、今シーズン限りで幕を閉じることを示唆する要素がたくさんある。カタールGPが行なわれた日曜日の夕方、レッドブルの代表であるクリスチャン・ホーナーとアドバイザーのヘルムート・マルコの話では、少なくとも彼らだけで決断を下せるのであれば、決定したも同然であるような口ぶりだった。

「アブダビでチェッカーフラッグが振られるまで、我々は彼を全面的にサポートする。その後、彼が何を決断しようとも、最終的には彼が決めることだ」とホーナー代表はSkyのインタビューで語っていた。

「彼は十分な年齢だし、自分で結論を出すのに十分な賢さを持っている。でも、まだ1レース残っている。アブダビを無事に終えて、それから自分たちの立ち位置を確認しよう」

「チェコ(ペレス)は我々にとって偉大なドライバーだった。彼は2022年と2023年のコンストラクターズ選手権、そして2021年のマックス(フェルスタッペン)のドライバーズタイトル獲得に貢献してくれた。彼は偉大な男だ。しかし、彼が置かれている状況は良いものではないし、彼はこのビジネスにおけるプレッシャーを知っている」

 まるでペレスが自ら退任することを望んでいるかのようなコメントだ。当然これについてはさらなる質問が飛び交ったわけだが、ホーナー代表はそれを「今はアブダビを終えよう」と言ってエレガントに交わした。

Sergio Perez, Red Bull Racing RB20

Sergio Perez, Red Bull Racing RB20

Photo by: Red Bull Content Pool

 ペレス自身が何らかの決断を下さなければいけないという事実は新しいモノだ。ではもし、ペレスが2026年まで契約を結んでいると主張し、絶対にシートを譲らないと主張するならば、レッドブルはどうするのだろうか。

 日曜日のレース前、ホーナー、マルコ、ペレスが3人で会話しているところが写真に収められた。そこではすでに、レッドブルがペレスとの関係継続を望んでいないことを告げられていたのかもしれない。

 ペレスが契約解除に同意し、2025年にレッドブルのマシンのコックピットに座らないことを選ぶとしたら、どれほどの報酬が必要なのだろうか? レッドブルはおそらく、数日中に提示される金銭的オファーをペレスが受け入れることを望むはずだ。そうすれば、アブダビでの最終戦では、盛大な”送別会”が行なわれることになるだろう。

 もちろん、現時点ではすべてが憶測にすぎない。しかし、マルコはもはやペレスについて語ることはほとんどなく、来年誰がレッドブルのセカンドシートに座るべきかについて進んで質問に答えている。

 一時有力な候補となっていたウイリアムズのルーキー、フランコ・コラピントの名前は「リストの上位にいない」とマルコは言う。そしてRBの角田裕毅やリアム・ローソンの方が可能性が高いのではないかという質問には、「そうだ」と答えた。

「アブダビの後、月曜日にミーティングがある。すべての主要人物、株主がそこにいて、そこで決定が下される」とマルコは語った。

「我々は常に、あるいはほとんどの場合、レッドブルのプログラムを通じて自分たちのドライバーを起用してきた。レッドブルの株主たちの意見から私が理解したのは、レッドブルはその方向に進むだろうということだ」

 つまりペレスの後任は、角田とローソンのどちらかが選ばれるということだ。ただホーナー代表は角田について、レッドブル・レーシングにふさわしい人物だとは思っていないと言われているため、現状ではローソンが最有力候補であるように思える。

 ペレスにまつわる噂に関連して、マルコはチームのコンストラクターズ選手権についても言及。レッドブルがカタールGPでタイトル獲得の権利を失ったことについて、「自分のために働いてくれている人々の支持や信念がなければ難しい」と付け加えた。

 またホーナー代表も、2024年が事実上マックス・フェルスタッペンのワンマンチームとなったことで、メカニックたちが不満を抱いているという問題を認識している。なにしろ、レッドブルが今季これまでに記録した9勝はすべてフェルスタッペンによるもの。他に勝利を記録しているマクラーレン、フェラーリ、メルセデスはいずれもふたりのドライバーが優勝している。

「3位という結果は……まだ2位になる可能性も残っているが、そこには大きな差が残っている。コンストラクターズタイトルを狙う権利は失ってしまった。その順位に応じて収益が分配されるのだから、とてもフラストレーションがたまる」

Sergio Perez, Red Bull Racing RB20, in the pit lane

Sergio Perez, Red Bull Racing RB20, in the pit lane

Photo by: Dom Romney / Motorsport Images

 ただレッドブルとしては、ペレスとの仕事を続けていくことを望んでいたはずだ。なぜならば、契約を途中で解除することとなれば、その違約金が非常に高額となる可能性があるからだ。また前述の通り、ホーナー代表は角田を起用することには消極的であり、ローソンはまだF1での経験が10戦のみ……もう1年RBのドライバーとして走り、経験を積んだ方が理想的だったはずだ。

 しかしペレスの今季ここまでの獲得ポイントは152。フェルスタッペンが429ポイント獲得しているのと比較すれば、起用し続けるのは難しい。そしてカタールGPでも、懸念を払拭するために何もできなかった。

 全てはカタールGPの土曜日から始まった。前日のスプリント予選でSQ1敗退を喫したペレスは、F1スプリントに向けてサスペンションのセッティングを変更したため、ピットレーンからのスタートとなった。

 しかしペレスは、ピットレーン出口のシグナルがグリーンになった後もなかなか走り出さず、同じくピットレーンスタートだったコラピントに抜かれた。このシーンは、SNS上で多くの非難を浴びた。

 これについてペレスは、決勝に向けたセットアップを”クリーンエア”で試すため、スタートを遅らせたのは意図的だったと説明した。たしかにこの説明は、彼の車載カメラ映像によっても裏付けられている。ペレスは故意に後方を走り、テストの準備をすべく、ジグザグに走行している様子も見えた。

 ただ不思議なのは、ホーナー代表がこのF1スプリントでのテストについて、ほとんど語らなかったことだ。ペレスの発言について問われたホーナー代表は、「我々が理由があって、コラピントよりも7分早くピットレーンの出口に彼を送った」と説明。これはペレスの説明とは矛盾しているように感じられ、混乱を引き起こすことになった。

 決勝レースでペレスは、セーフティカー走行中にスピン。隊列に戻ろうとした際にクラッチにトラブルが起き、リタイアとなった。ホーナー代表はこれについても、「我々が置かれている状況は、彼にとってもチームにとっても辛いものだ」と語るだけだった。

 ペレスはスピンの後、無線で「ドライブを失った」と伝えたが、チームとしてはすぐに問題の原因を認識することができなかった。そしてホーナー代表は、次のように語った。

「我々は正確な故障の原因を調査しているところだ。どうやら彼はマシンをスピンさせてしまい、クラッチを切ったところでクラッチに過度の熱が加わってしまったようだ」

 2024年は厳しい1年になった。その状況をペレスも認め、次のように振り返った。

「これ以上良くなることはない。間違いなく、今回のスプリントイベントから多くのことを学んだと思う。見ていて素晴らしいイベントだった。そのことから、我々が分析し、マシンから理解すべきことがたくさんあると思う」

 ペレスは確かに、パフォーマンスの面では苦しんでいる。しかしその一方で、献身的な姿勢は評価されるべきものであり、レッドブルもそれは認めている。その典型例が、カタールGPのF1スプリントである。

 ペレスは自ら進んでセットアップを詰めるためのモルモットとなった。そのF1スプリントでは、フェルスタッペンをもってしても、ハースを攻略することすらできなかった。しかしペレスの貢献によりチームは勢いを取り戻し、決勝レースでは優勝を手にした。フェルスタッペンがドライコンディションのレースで勝ったのは、6月のスペインGP以来のことだった。

 カタールGPでのペレスの貢献は、チームを離れる前の最後の偉業だったのだろうか?

 ひとつハッキリしているのは、ペレスが今週、自らの判断で退くことを決断すれば、レッドブルは偉大な英雄としてアブダビGPに送り出し、フィニッシュ後にはテレビを通じて、何百万人もの視聴者を前に盛大なセレモニーが開かれることになるだろうということだ。

 しかし、月曜日の予定されている会議、そして株主の判断に委ねることになれば、ペレスはF1からひっそりと去っていく……ということになるかもしれない。

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