F1 エミリア・ロマーニャGP
F1チーム間の技術共有は不公平? 姉妹チームvsプライベーターの埋まることのない“溝”
フェラーリとハースやレッドブルとアルファタウリなどのトップチームと“Bチーム”の蜜月関係に対し、プライベーターチームが不満を抱き続けている中、あるF1チーム代表はチームの技術共有レギュレーションを再考するよう求めている。

Jonathan Noble
編集: 2022/04/22 14:03
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F1では、上位の“Aチーム”とそこから技術共有を受ける“Bチーム”との関係に対して、プライベーターないし他チームと協力関係を持たないチームが度々不満を呈してきた。そしてチーム代表の中からは、FIAに対し技術共有レギュレーションの変更を求める声も聞こえてくる。
この議論が2022年に再び加熱する要因となったのは、今年印象的なシーズンスタートを切ったハースだ。昨年コンストラクターズランキング10位に沈んでいたチームが、第3戦を終えた時点で7番手に浮上。開幕戦ではケビン・マグヌッセンが5位入賞を果たしている。
基本的に全てのパーツをチーム内で製造しなくてはならないという原則を持つF1(それがコンストラクターと呼ばれる所以)ではあるが、コスト削減を目的として「トランスファラブル・コンポーネント(TRC)」という他チームへの譲渡が許されているパーツも存在する。代表例として、クラッチやギヤボックス、フロント・リヤサスペンションシステムなどが挙げられる。
ハースは2016年のF1参戦以降、フェラーリからレギュレーションで許される範囲で可能な限りのパーツを購入してきた。小規模ながらも、アウトソーシングを活かしてF1を戦うという戦略を取ってきた。
さらにハースは、イタリア・マラネロにあるフェラーリのファクトリーの近くにデザインオフィス“ハース・ハブ”を設置し、フェラーリのシャシーエンジニアリングの責任者を務めたシモーネ・レスタを始め多くのフェラーリスタッフを迎え入れるなど、これまで以上に関係は密接になっている。
しかしその関係の深さから、移動したスタッフの頭の中にある知的財産までもが共有されているとして、ハースが完全に独立した“コンストラクター”たり得ないのではないかと疑問視するライバルチームもいる。
FIAはハースとフェラーリのパートナーシップに問題はないと認めているものの、将来的に技術共有のレギュレーションを厳しくするべきだという声もあるのだ。
メルセデスのトト・ウルフ代表は、2020年の“ピンクメルセデス事件”を引き合いに出し、こうした論争を終わらせるためにも変化が必要だと述べた。
「改革の必要があると思う。今のような議論や、ここ数日、数週間の論争をしなくて済むからね。誰もが良いパフォーマンスを発揮する資格があるし、良い働きをした際は称賛を受けるべきだ」
Toto Wolff, Team Principal and CEO, Mercedes AMG, Frederic Vasseur, Team Principal, Alfa Romeo Racing, Otmar Szafnauer, Team Principal, Alpine F1, in the team principals Press Conference
Photo by: FIA Pool
「ただし、同じ敷地内で職を変えたり鞍替えしたりするのは、F1に必要のない論争を引き起こすだけだ。例えば2年前、同じ風洞をアストンマーチン(当時のレーシングポイント)が使っていた時のようにね。あの件に関しては、かなりの騒ぎになった。我々としては、最大限の注意を払って対処してきた」
「しかし今後、我々の“収入能力”とも言うべきモノを妥協していく必要があるのならば、改革していく必要がある。今日いくつかのチームに見られるように、協力していくことは許されるべきではないからだ」
メルセデスのカスタマーパワーユニット(PU)を使用してはいるものの、基本的にはプライベーターを貫いてきたマクラーレン。そのチーム代表を務めるアンドレアス・ザイドルは、チーム間の技術共有に対して厳しい姿勢を取っており、チーム間のいかなる協力関係も許されるべきではないと考えている。
「F1は10つのコンストラクター、あるいは11、12のコンストラクターで争われるチャンピオンシップであるべきだ。コアパフォーマンスに関連するいかなる知的財産の移転もあってはならないというのは明白だ」とザイドルは言う。
「共有が許されるのは、PUとギヤボックス内部だけ。インフラ整備の共有などは言語道断だ」
「FIAも分かっている通り、知的財産の移転を取り締まることは難しい。取り締まりが不可能なモノであれば、禁止する必要がある」
「Bチームが我々のようなチームに対して過剰な競争力を持つようになり、同時にAチームもその恩恵を受けることになる。我々にとっては大きな心配事なのだ」
「F1やFIA、そしていくつかのチーム間で行なわれている対話を通じて、この状況の是正に向けて今後数年のうちに何らかの措置が取られることを期待している」
無論、全てのF1チームが現状を変化させたいと考えているワケではない。
フェラーリと深く関わりを持つアルファロメオでチーム代表を務めるフレデリック・バスールは、現行レギュレーションは十分に効果的だと考えている。
「レギュレーションを変える必要があるのかは分からない。財政面でも同じ話だ。『我々はレギュレーションを適用しなくてはならない』とね」
「そしてレギュレーションには公平性を保つのに十分な厳しさがある。レギュレーションを守っていれば、問題はない」
「FIAは統治者としての仕事をしなければならないし、彼らは実際そうしている。私としては、このままで良いと思っている」
一方で、Bチームを持たないアルピーヌのオットマー・サフナウアー代表は、FIAがチーム間の知的財産権の移動を適切に取り締まることが重要だとして、ザイドルの意見を支持している。
「理想的な世界ならば、フレッド(バスールの愛称)に賛成できた。レギュレーションは非常に明快だ。しかし難しいのは、その取り締まりだ」とサフナウアーは言う。
「仮にレギュレーションで取り締まることが不可能ならば、競争の場を均等にすべく、取り締まりが可能なレギュレーションにするべきだと思う。FIAともっと話し合う必要があると思うし、取り締まりが可能なレギュレーションに少し変える必要があるだろう」
しかしハースのギュンター・シュタイナー代表は、マクラーレンやアルピーヌの考えを一蹴。最終的に重要となるのは、FIAがハースとフェラーリのパートナーシップに満足していることだという。
チーム間の技術共有をPUとギヤボックスに限定すべきだというザイドルの提案について意見を求められたシュタイナーは次のように答えた。
「幸い、アンドレアスはFIAの運営じゃない。彼が提案することは可能だが、それ(レギュレーション)を決める統治機構が存在する」
「レギュレーションの中には、自分たちにとって不都合なモノもあるが、自分で変更することはできない」
「メルセデスは、8年連続で(コンストラクターズ)チャンピオンを獲得し、非常に強いPUを保持してきたし、彼らにとっては良いことだった。でも『メルセデスが全部勝っているから、PUレギュレーションを変える必要があるんだ』とは誰も言わなかった」
「統治機構があるのだ。特定の人たちが口先だけで全てを変えられると思っていても、そんなことは起きないと私は思う」
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