F1テスト総合2番手の角田裕毅、3番手以下を大きく突き離した要因に“DRS”あり?
F1プレシーズンテストで総合2番手タイムを記録した角田裕毅。なぜ彼は、同じく予選シミュレーションをしていた3番手以下のライバルたちに、大きなタイム差をつけることができたのだろうか?

バーレーンで行なわれたF1プレシーズンテストではレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが総合トップタイムを記録したが、その姉妹チームであるアルファタウリ・ホンダの角田裕毅も印象的なパフォーマンスを見せた。
角田はテスト最終日の午後に1分29秒053というベストタイムをマーク。これはトップのフェルスタッペンからわずか0.093秒差に迫るもので、3番手のカルロス・サインツJr.(フェラーリ)にはコンマ5秒以上の差をつけてみせた。この結果から、アルファタウリの新車AT02のみならず、ルーキーの角田の活躍にも大いに注目が集まっている。
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各チームの燃料搭載量などの諸条件が分からないとはいえ、なぜ角田は同様に予選シミュレーションを行なっていた多くのライバルに対し、これほどのタイム差をつけることができたのだろうか? そこには何か“秘密の仕掛け”があったのだろうか?
目の肥えた一部の視聴者は、角田が最後の予選シミュレーションの際、メインストレート上で通常よりもかなり早くDRSを作動させていることに気付いたかもしれない。

Sergio Perez, Red Bull Racing RB16B
Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images
昨年のバーレーンGPでは、ホームストレート上のDRSゾーン開始地点は最終コーナー出口から170mのところにあった。映像を確認すると、角田は最終コーナーを立ち上がってすぐにDRSを開いている。バーレーンGPでのDRSゾーン開始地点が、芝の上に置かれた『aramco』の青い小さなボード付近にあったことを考えると(上図参照)、いかに角田がDRSを早く作動させたかが分かる。
これは1周に限ったことではなかった。オンボード映像を見てみると、角田は最終コーナーでマシンの体勢が真っ直ぐになったと同時にDRSを作動させる、ということを定期的に行なっていたのが確認できる。
角田がDRSを早く作動していることはデータからも読み取れる。角田はスピードトラップで最高速度322km/hを記録。これはシャルル・ルクレール(フェラーリ)に3km/hもの差をつけて悠々のトップであった。
この事実はF1パドックでも話題になっていたようで、マクラーレンのランド・ノリスは、角田がInstagramに公開した「レースシミュレーションとショートランの両方でスムーズな1日になりました」という投稿に対して、「DRSはどうだった?」と笑顔の絵文字付きで茶目っ気たっぷりにコメントしている。
プレシーズンテストはF1の公式レースウィークエンドではないため、DRSを周回のどこで使用しても問題はなく、昨年のバーレーンGPのように3つの限られた箇所でしか使用できないという訳ではない。したがって角田のベストラップは、仮に通常のレースウィーク以上にDRSの恩恵を受けていたとしても間違いなく有効なのだ。
とはいえ、DRSの使用タイミングの差だけでコンマ5秒ものギャップが作れるわけではない。アルファタウリと角田の実力はライバルたちから見ても決して軽視できない存在だと言える。
ノリスは角田の印象的な走りについてどう思うか尋ねられ、次のように語った。
「あなたが言うようにとても印象的だ。彼は良いドライバーだね! この結果には驚かないよ」
「アルファタウリは良さそうだ。オンボードを見ても、データを見ても、彼らはかなり良いマシンに思える。走っていて気持ち良さそうだよね。どんなコンディションでも調子が良いんだ」
「アルファタウリを見る限り、強そうだと言える。彼らはここ数日クリーンに走っていて、どの走行でも調子が良さそうだ。間違いなく多くの燃料を積んでいるであろうロングランだってそうだ。良さそうに見えるよ」
また角田自身も、最終日のパフォーマンスへの満足感を口にした。
「とても良い1日でしたし、トラブルもなく良い進歩がありました」
「僕は自分自身のドライビングに集中していました。これまでの2日間は少し不運なこともありましたが、今日は全てをまとめることができましたし、メカニックとホンダがとても良い仕事をしてくれたおかげで問題は起きませんでした」
「自分としても、レースシミュレーションやタイヤマネジメントという面で進歩を遂げることができましたし、バーレーン(での開幕戦)に向けて良いデータが取れました。とても良かったと思います」
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