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2020年のF1開催カレンダーはどうなる? まだ未知の障壁も……簡単ではない調整作業

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕が遅れている2020年シーズンのF1。今も開幕が延期されているが、その状況は非常に流動的な状況にある……。

Romain Grosjean, Haas F1 Team VF-20

写真:: Zak Mauger / Motorsport Images

 今週月曜日(4月27日)、F1のCEOであるチェイス・キャリーは、7月のオーストリアGPを無観客で開催し、シーズンをスタートさせることを目指すと公式に語った。しかしその後の開催スケジュールは、依然として曖昧なままである。

 キャリーは声明の中で、7〜9月上旬にかけてヨーロッパでのレースを開催し、9〜11月にフライアウェイ戦、そして12月に中東でレースを行ない、シーズンを締めくくるとした。しかしそれが本当に可能なのかどうかは、今も不透明な情勢だ。

 では最終版の開催スケジュールはどうなるのだろうか? インターネット上では様々な憶測がなされている。

 肝心なのは、新型コロナウイルスにまつわる状況が変化するにつれて、F1の予定スケジュールは、日毎とはいかないまでも、週ごとに変化していくということだ。

 序盤と終盤の日程は、ほぼ決定的であるとみられる。キャリーCEOはオーストリアで開幕することを目指しており、ここで2レースを開催する見込みのようだ。その後シルバーストンに移動して2レースを開催することになりそうだ。

 シーズンは前述の通り中東でフィナーレを迎えることになるが、バーレーンとアブダビが、12月の最初のふたつの週末を埋める可能性が高いだろう。特にアブダビは、最終戦の開催を保証する契約を保持している。

 その間の全てが今も交渉が進行中であり、最後の最後まで同様の状況である可能性がある。

 また正式に中止が決まったモナコとフランスに加え、当初は開幕戦として組まれていたオーストラリアGPも、今年は中止ということになるだろう。

 この3戦が開催されないことにより、レース数は少なくとも当初の予定である22戦から19戦に削減されることになる。しかしキャリーは最大18戦の開催を目指していると話しており、オーストリアとイギリスで2戦開催されることになれば、必要となる開催地は最大で16……つまり前述の3会場の他、さらに3会場での開催がなくなるということになる。

 すでに延期が決まっているのはバーレーン 、ベトナム、中国、オランダ、スペイン、アゼルバイジャン、カナダの7戦。この他の12戦は元の日付のままとなっている。ただこれらの12レースも、当初のスケジュールのまま開催される保証はないということだ。

 一部のレースは、他のレースよりも小回りが効かない立場にある。特にシンガポールGPは公道サーキットでの開催であるため、常設コースよりもロジスティクス面での問題は大きく、かなりの準備期間が必要だ。

 他の常設サーキットは比較的柔軟性があるが、いくつかの制限もある。例えばCOTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)は、現在F1の開催が予定されている2週間後にはMotoGPのレースが予定されている。

 次に天候の問題がある。多くのサーキットは、10〜11月になると、日照時間の問題が生じ、レース距離に制限が出てくるため、開催が現実的ではなくなる。ただ中東はナイトレースが可能なため、これには当てはまらない。

■現状の代替カレンダーの可能性は?

Charles Leclerc, Ferrari SF90, leads Valtteri Bottas, Mercedes AMG W10, Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W10, Lando Norris, McLaren MCL34, Kimi Raikkonen, Alfa Romeo Racing C38, and the rest of the field at the start

Charles Leclerc, Ferrari SF90, leads Valtteri Bottas, Mercedes AMG W10, Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W10, Lando Norris, McLaren MCL34, Kimi Raikkonen, Alfa Romeo Racing C38, and the rest of the field at the start

Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images

 オーストリアとイギリスでそれぞれ2レースを行なうということになれば、それだけで7月の週末は埋まってしまうことになる。その後、8月2日から12月13日が2020年のF1シーズンの残りということを考えると、その間に週末は20。その中で14レースを開催するということになる。

 いくつかの週末を開催なしとし、いくつかの2週連続開催があれば、合計で18戦に到達する可能性は確かにある。

 しかし、現実は大きく異なる可能性がある。新型コロナウイルスに関する状況がどう変化していくのか、そしてレースを開催する国での規制がどうなっていくのか、さらに輸送業者はヨーロッパの国の中を通過しなければならない……それらの状況に依存することになるのだ。

 現在の制限を緩和し、経済活動を再開しようとする動きを見せる国もある。しかしグランプリを開催するのに必要な条件を備えている場所は、現時点では世界的に見てもあまりない状況だ。

■各国の規制は、問題をどのように複雑にするのか?

Lance Stroll, Racing Point RP19, leads Daniil Kvyat, Toro Rosso STR14, Antonio Giovinazzi, Alfa Romeo Racing C38, and Nico Hulkenberg, Renault F1 Team R.S. 19

Lance Stroll, Racing Point RP19, leads Daniil Kvyat, Toro Rosso STR14, Antonio Giovinazzi, Alfa Romeo Racing C38, and Nico Hulkenberg, Renault F1 Team R.S. 19

Photo by: Gareth Harford / Motorsport Images

 大規模集会の禁止という規制が、最大のハードルということになるだろう。カナダ、ベルギー、オランダでは、少なくとも8月末までは同様の規制が実施されている。そのため、ベルギーGPを現時点で予定されている8月30日に開催するのは、難しそうな情勢だ。一部の国では、無観客でレースを開催する余地が残っているかもしれない。しかし、例えファンが訪れなかったとしても、F1を開催するだけで数千人もの人々が関与することになる。

 もうひとつ複雑な問題は、国境が閉鎖されていたり、特定の国に出入りした人の入国を制限していたり、強制的な検疫措置があるという問題だ。そういう規制がすぐになくなることを期待することはまず不可能であり、F1が2週連続開催もしくは3週連続開催を計画すれば、それは信じられないほど複雑になるはずだ。

 アジア/ユーラシア大陸を例に挙げれば、シンガポール、ロシア、中国、日本、ベトナムを転戦するという組み合わせは、今のところ事実上不可能。カナダ、アメリカ、メキシコ、ブラジルを転戦する南北アメリカ大陸も同様だ。そのため、9〜11月のスケジュールがどうなるのか、今の時点で予測するのは不可能である。

 F1チームのうち7チームはイギリスを拠点にしており、その他2チームがイタリアに、そして1チームがスイスに本拠地を置いている。ピレリのスタッフもイタリア出身者が大多数であるが、イギリスを拠点とする人員のみが働くバックアップ計画もあるという。

 ホンダのスタッフは多くがイギリスに住んでいるものの日本に住む人もおり、フランスとスイスから訪れるFIAのスタッフもいる。また、ドライバーを含む他の人員は、ヨーロッパ中から集まることになる。無観客でグランプリを行ない、人員を最小限……メディアの取材が許可されなかったとしても、多くの国籍の人間が関与するということになる。

 移動のためにチャーター便を使用したとしても、ほとんどの国では入国管理当局との難しい交渉が必要となるはずだ。

 アブダビやバーレーンのように、国の政府がレース開催に直接関与している場合には、比較的その話し合いはスムーズに進むだろう。しかし、国があまり関与していない中国やアメリカ、そして日本の場合は、そうはいかないかもしれない。

 またフライアウェイレースの合間にイギリス、イタリアに帰宅するスタッフは、検疫などにより大変な問題に直面することになるはずだ。

 これらの問題は、F1がコントロールできるようなものではない。キャリーCEOにできる唯一のことは、時間が経過するにつれて、現在の制限が緩和されることを望むということだけだ。

■プロモーターは、まだ開催権料を支払う必要があるのか?

Chase Carey, Chairman, Formula 1

Chase Carey, Chairman, Formula 1

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 キャリーCEOが重視しているのは、会場および放送局などからの収入に関することだ。

 収入は、開催カレンダーを組み立てる上で最も重要視されること。無観客であったとしても、可能な限り多くのレースを開催しなければならない。レースの合計数が15を下回れば、各放送局から支払われた放映権料を払い戻ししなければならないのだ。

 DHLやハイネケンといったF1のスポンサーたちとどのような話し合いが行われているのかはわからない。とはいえ、支払った金額に見合うだけの露出を得られるよう、妥当な数のレースが開催されることを期待しているのは間違いないはずだ。

 言い換えれば、レースを行なうことにより、F1とチームの収入が保証されるということになるのだ。

 レースの開催権料は、F1にとってもうひとつ重要な要素であり、通常とは異なる形であっても、可能な限り多くのレースを開催したいのだ。

 当初予定されていた22レースは、それぞれが異なるビジネスモデルで動いている。シルバーストンや鈴鹿などは、民間団体によって運営されている。しかし、その他のイベントは、地方や地域、および国などが運営に関わっている。それらのレースは、観戦券の売り上げによる収入を期待するのではなく、約2時間にわたってレースが世界中に放映されるという、広告的な面を重視しているのだ。

 その他のレースでは、ホテルやレストランで、観戦に訪れるファンがお金を使うことを目指し、公的資金が使われる。

 いくつかのレースは、開催権料の一部がチケット販売によって相殺される契約になっている。他のレースは、たとえ観客がいなくても、全額を償却する余裕がある。

 シルバーストンのような開催地は、無観客でレースが行なわれる場合には開催権料を払うことはないだろう。しかし、2つの無観客レースを開催する費用を補うために、補助金を支払う必要があるかもしれない。

 オーストリアは少し異なるケースだ。コースの所有者であるレッドブルは、レッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファタウリというふたつのF1チームを所有していることもあり、シーズンを進めるために2レースを開催することに関して強い関心を持っている。また、観客がいなくとも、レースを開催することにより、レッドブル本体にとって重要なマーケティング活動になるはずだ。

 したがってレッドブルは、何らかの開催権料を支払うことになるだろう。ただチケット収入は期待できないため、当初定められた全額ということにはならないはずだ。おそらく、最低でもランニングコストを吸収するための金額程度にはなるはずだ。

 バルセロナ、ハンガリー、モンツァ、スパ、ザントフールトなどのヨーロッパの他のサーキットも、無料もしくは非常に低い金額を支払い、レースを開催することになるはずだ。そうでなければ、レースを開催する意味はほとんどない。

 しかしフライアウェイ戦は、ヨーロッパでのレースとは状況が異なる。第一に、そこに移動するのに、大きなコストがかかる。第二に、前述したように政府が後援している例が多く、チケット収入ではなくテレビで世界中に配信されることをメインに考えているレースが多いということだ。

 フライアウェイ戦にかかるコストは膨大である。通常は7機のボーイング747に、各チームのマシン、スペアパーツなどをのせ、FIAやF1が使う機材も同梱される。これには、2台のセーフティカーと2台のメディカルカーも含まれる。

 通常、これらにかかる費用は、フライアウェイ戦が支払う開催権料によって賄われることになる。そのためF1は、たとえヨーロッパ以外の国でのレースが無観客で行われたとしても、当初と同額の開催権料を手にしようとするだろう。

 これらについては、各プロモーターとの交渉が進められているとみられる。求められた金額を支払うことができない場合には、開催スケジュールからずらされ、開催権料を支払えるグランプリが優先されることになるだろう。

■最も開催の可能性が低いレースはどれか?

Valtteri Bottas, Mercedes AMG W10, leads Max Verstappen, Red Bull Racing RB15, Sebastian Vettel, Ferrari SF90, Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W10 Alex Albon, Red Bull Racing RB15, Charles Leclerc, Ferrari SF90, Carlos Sainz Jr., McLaren MCL34 and the rest of the pack tab the start

Valtteri Bottas, Mercedes AMG W10, leads Max Verstappen, Red Bull Racing RB15, Sebastian Vettel, Ferrari SF90, Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W10 Alex Albon, Red Bull Racing RB15, Charles Leclerc, Ferrari SF90, Carlos Sainz Jr., McLaren MCL34 and the rest of the pack tab the start

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 今年、最も開催が不安視されるレースのひとつは、アメリカGPだろう。サーキット・オブ・ジ・アメリカズで行なわれるこのレースは、その開催権料の一部をテキサス州が支払っている。これは、レースを観戦するために多くの観客が訪れることで、地元に経済効果をもたらすことを期待してのモノ。もし無観客で行なわれることになれば、州政府の支出を正当化できないのは明らかだ。

 カナダとシンガポールも、レース観戦に多くのファンが訪れる経済効果を期待している。これらのイベントも、今は開催カレンダーに残されているものの、実施される可能性が非常に低いか、あるいは開催の構想から既に外れているとの情報もある。

 シンガポールの場合は、公道レースであるということが、もうひとつの足かせになっている。前述のように公道レースの場合は、準備が非常に大変。最悪のシナリオは、オーストラリアのように全ての準備が行なわれ、開催権料が支払われたにもかかわらず、最後の最後にはレースが行なわれないというモノだ。

「シンガポールGPは新型コロナウイルスの状況を注意深く監視しており、F1、シンガポール政府、および関係者と対話を続けている」

 シンガポールGPの広報担当者はそう語る。

「2020年シーズンのF1開催カレンダーは、今見直されている。シンガポールGPは今後も状況を注視し、ファンや観客、クルーやスタッフの健康と安全を最優先事項としている」

 カナダのジル・ビルヌーブ・サーキットは半常設サーキットであるため、準備に関する問題はやはりある。しかし、天候を考えれば、10月下旬や11月にレースを行なうのは難しいだろう。とはいえ、しばらくの間は延期日程を見極める候補のひとつとして、リストに残ることになるだろう。

「F1が発表した情報は、彼らと話していることと一致している」

 カナダGPの広報担当者はそう語る。

「チェイス・キャリーは、『未知のウイルス次第なんだ』と言っている。これは非常に重要なことだ」

 準備に関する面で不安定に見えるのは、アゼルバイジャンも同様だ。アゼルバイジャンGPもやはり公道コースで実施されるため、その準備には3ヵ月ほどの期間がかかる。そして、無観客レースとなったとしても、7000人もの人々が運営に携わることになる。国の手厚いサポートがあったとしても、レースの日程が保証されない限り、準備作業をスタートすることはできないはずだ。

 今年初開催の予定だったベトナムGPは、F1とベトナムにとって巨大なプロジェクトである。延期が決定された時点で、コースの準備はほぼできていた。南北アメリカ大陸でのレースと中東でのレースの間、11月の空いたタイミングで、開催を実現するための努力を惜しむことはないだろう。

■サーキットは、それでもまだレースを開催したいと思うのだろうか?

Empty grandstands

Empty grandstands

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 規制や政治、そして財政的な問題以外にも、検討材料に加える必要があるモノがある。それは、道徳的な側面だ。

 他のスポーツと同様、F1シーズンをスタートさせることは、世界を正常に戻す一歩であり、自宅待機を余儀なくされている人たちに娯楽を提供できると主張することもできる。

 しかしその一方で、一部のプロモーター、特に政府との関係が密接なプロモーターについては、軽薄と捉えられかねないスポーツイベントの開催を嫌うかもしれない。しかも開催の結果として、市民を危険に晒すことにも繋がりかねない。

 新型コロナウイルスの危機が緩和し、理論的には無観客でレースを行なうことにより、制限を交わすことはできるかもしれない。しかしそれは適切ではないと思われるかもしれないのだ。開幕戦オーストラリアGPの時でさえ、新型コロナウイルスの感染が拡大していたイタリアから、フェラーリのスタッフを受け入れることについては、否定的な意見もあった。現在の状況は、当時以上にエスカレートしている。それを忘れてはならない。

 こういった要素は、状況が絶えず変化する中で、開催カレンダーを構築していくにあたって、難しい状況に直面することになるだろう。

 今の状況では、どんなことでも起こりうる。既存のイベントに加え、かつてサンマリノGPを開催していたイモラも、代替レースの開催に名乗りを挙げた。ドイツのホッケンハイムも然りだ。もし9〜10月のフライアウェイ戦の実現が難しいとなった場合には、ふたたびヨーロッパに舞い戻り、レースを開催することになるという推測すらできる。

 リバティ・メディアが今検討している開催カレンダーは、決してその通りに開催されることはないだろう。状況は絶えず変化し、未だ克服すべき予期せぬハードルが多数あるはずだ。

 今は幸運を祈るしかない。

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