さらなる成功のため、F1はアメリカのスポーツから学ぶべき? ドメニカリCEOが語る、ビジネスを大きくするために必要な構造とマインド
F1のステファノ・ドメニカリCEOは、F1がNFLのようなアメリカスポーツのビジネス面から学べる点があると考えている。
Oscar Piastri, McLaren
写真:: Steven Tee / LAT Images via Getty Images
近年、特に商業面で急速に成長しているF1。世界的なファン数も大きく増加しており、若年層や女性など新たな層にもリーチするようになった。中でも、アメリカでの人気が非常に高まっている。
コアファンの間では、「F1はどこまで商業化に傾倒すべきか」という疑問も生まれているが、F1のビジネス戦略が成功を収めているのも事実だ。その代表例がNetflixのドキュメンタリー『Drive to Survive(栄光のグランプリ)』や、映画『F1/エフワン』であり、こうした新しいプラットフォームへの展開が多くの新規ファンを取り込んできた。
こうした取り組みには、パドック全体で共有される商業ビジョンが不可欠だが、F1としてもこの点についてはまだ改善の余地があると考えているという。motorsport.comの独占インタビューに応えたF1のステファノ・ドメニカリCEOは、F1がNFL(アメリカンフットボール)やNBA(バスケットボール)といったアメリカのスポーツリーグから多くを学べると語った。
「チームとの議論から学ぶべきなのは、彼らが自分たちを有利にしようとするような、いわゆる戦略的議論ではない。アメリカンスポーツからすべてをコピーすることはないが、ひとつ学ぶべき要素がある。それはオーナー会議だ」
「アメリカではオーナーたちが集まり、ビジネスについて話し合う。ビジネスとは、どれだけの収益を共に生み出せるか、そしてそのために最適な規則は何かということだ。我々もその方向には進んでいるが、まだ十分ではない」
「コース上では競い合わなければいけないことは皆が理解している。エンジニアやドライバーを他チームから引き抜くこともあるだろう。しかし、このスポーツのビジョンを考えるならば、全体としては同じ方向を向いているべきだ」
またドメニカリは、この点ですでに進歩は見られると強調する。各チームは『Drive to Survive』やF1映画による商業的効果を、リーチ拡大やスポンサー契約の面で実感しているからだ。
「数年前、名前は出さないが、いくつかのチームはNetflixのような商業プロジェクトに消極的だった。しかし自己中心的になってはいけない。全体に大きなプラス効果をもたらすプロジェクトがあるなら、積極的に関わるべきだ」
「そして映画についてプレゼンした時。大いに理解を得ることができた。あの映画は、これまでF1を知らなかった地域で認知を大きく高める上で成功を収めた」
F1とアメリカンスポーツの違い
ただし、F1における商業面の意思決定がアメリカンスポーツよりも複雑になる理由がふたつある。まずひとつはチームの構造。現在ではチームオーナーではなく、チーム代表がこれらの議論に関与していることがほとんどだ。
チーム代表たちは、その立場上当然のことながら、商業的な側面よりも競技面を優先して考える傾向がある。それはまさに、ドメニカリCEOが先のコメントで指摘していたことでもある。
ドメニカリCEOは言う。
「F1のオーナーシップは多様でバラバラだ。一方でアメリカンスポーツでは、各チームにオーナー陣の代表者がいる。例えばNFLの全チームのオーナーが集まる場合、各チームからひとりずつ、ビジネスのことをよく理解した人間が出てくる」
「これは批判ではなく単なる事実として言っているので誤解をしてほしくないが、F1のチーム代表はチームオーナーではないことがほとんどだ。そのため彼らは、ビジネス的には良いこととは言えない事柄に関心を持つこともある」
「だからこそ、ビジネスレベルでの関わりが強まるほど、時にはチームの利害を一旦脇に置いて考えないといけない……そういう理解を共に深めていかないといけない」
オーナーシップ以外にも、価値観の違いもある。アメリカンスポーツには、「日曜日はリーグ戦、月曜日はビジネス」といった考え方が染み付いているという。コース上では共に激しく戦いながらも、サーキットを離れればより大局的な視点を持たなければならないのだ。
「マインドセットの点では、我々はレース屋なのでなかなか難しい面もある」
「“我々”と表現したのは、私自身もレース屋出身だからだ。レース屋は常にパフォーマンスを追い求める……それは素晴らしいことだが、時には長期的なビジョンを持つ必要がある」
しかしF1において、これらのバランスをとるのは容易ではないだろう。Netflixの参入といった大きな話題に限らず、旧車テストなどの些細なことにおいても、F1チームというものは自分たちやライバルの競技上の有利不利を互いに気にしているのだ。
その中でF1とFIAは、商業的利益とスポーツのDNAのバランスを常に取り続けなければならない。従来のファンを遠ざけることなく、新たな若いファン層を取り込む必要がある。この難しいバランス感覚は、今季から新しい技術規則が導入されたF1にとって重要なテーマとなっている。
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