海外F1記者の視点|レッドブル昇格のチャンスを掴んだ角田裕毅……彼はこの判断が正しかったことを証明するのに十分な結果を残しているのか?
日本GPからレッドブルのシートを掴んだ角田裕毅。彼はレッドブルの首脳陣が「昇格させる」と決めた判断が正しかったことを証明するに足る成長を成し遂げているだろうか? motorsport.com各国のF1担当ライターが評価する。
Yuki Tsunoda, Red Bull Racing
写真:: Red Bull Content Pool
角田裕毅は、F1日本GPを前に急きょレッドブルに昇格するチャンスを掴んだ。ここまで3戦……彼が獲得したのは、バーレーンGPでの9位2ポイントのみである。この結果だけで見れば、前任者であり、レッドブルをわずか2戦限りで更迭されたリアム・ローソンのそれとそれほど変わらないように見える。
角田はこれまでの4年間と2レースをレッドブルのジュニアチームで過ごし、そしてついにレッドブルのメインチームのドライバーとして戦うチャンスを得た。しかしその挑戦は簡単ではなく、まだ目覚ましい成績を残せてはいない。日本GPでは12位、バーレーンGPでは9位2ポイントを獲得したが、サウジアラビアGPでは1周目にクラッシュしてリタイアしてしまった。レッドブルのドライバーとしては、決して誇れるような成績ではない。
しかし、少なくともローソンよりは将来性があることを示した。予選Q1で敗退することはなく、3戦中2戦でQ3進出を果たしている。
レッドブルが、ローソンに変えて角田を起用したのは、正しい判断だったと言えるのだろうか? motorsport.com各国のライター陣が分析する。
■安定したスタートを切った。しかし慌てず、改善を続ける必要がある(ロナルド・ボーディング)
Yuki Tsunoda, Red Bull Racing
Photo by: Peter Fox - Getty Images
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコに、角田のこれまでの印象について尋ねた。その答えは「ポジティブだが、Q3でもプレッシャーの中で力を発揮する方法を学ぶ必要がある」というものだった。
確かにサウジアラビアでの角田のQ3でのパフォーマンスは、ベストなモノではなかった。しかし、バーレーンに続いて2週連続でQ3に進出できたということは、すでに大きなプラスであると言える。”2台目レッドブル”が2戦連続でQ3進出を果たしたのは、実に半年ぶりなのだ。それだけでも、このシートが抱えてきた苦しみを物語っている。
角田はすぐにその価値を証明して見せた。彼は「Q3を走った」ことで、チームメイトのマックス・フェルスタッペンにスリップストリームを使わせ、予選アタックをサポート。これにより、ポールポジション獲得を後押しした。そういう積み重ねこそ、レッドブルの首脳陣が求めているものだ。
誰もが心のどこかで考えているように、レッドブルが今年のコンストラクターズタイトルを争うのは、もはや難しいかもしれない。しかし、フェルスタッペンのドライバーズタイトル5連覇達成のために必要なサポートは、マルコ博士やクリスチャン・ホーナー代表にとって大歓迎なのだ。
角田は今の道をそのまま進み続けるだけでいい。Q3に進出し、着実にポイントを獲得して、チームに貢献するのだ。
リスクは、扱いづらいマシンを限界ギリギリまで攻めようとして、クラッシュを繰り返してしまうということだろう。特にフェルスタッペンとの差を埋めようと、無理にペースアップしてミスを犯してしまうこと……それを避けなければいけない。
角田はチームメイト(つまりフェルスタッペン)をあまり気にしすぎるべきではない。落ち着きを保つことさえできれば、レッドブルが下した昇格させるという判断は、結果的に正しかったと証明されることだろう。
ただ、ローソンに対するレッドブルの扱いが厳しすぎたということに変わりはないが……。
■レッドブルは正しい選択を下した。しかし遅すぎた(ロベルト・キンケロ)
Yuki Tsunoda, Red Bull Racing
Photo by: Red Bull Content Pool
マックス・フェルスタッペンのチームメイトとして相応しいドライバーを見つけることは、レッドブルにとって長年の課題である。そして今回、2台目のマシンを角田裕毅に託したという選択は、”チームメイト探しのドラマ”の最新の1ページであり、その選択は正しかったと言える。
角田はレーシングブルズ(旧名RBもしくはアルファタウリ)で適切な経験を積み、今やレッドブルという大きなプレッシャーがかかるチームでも、しっかりとその困難に立ち向かえる状態にある。ここ2戦連続して予選Q2進出を果たし、マシンに対するフィーリングをさらに高めることができれば、レッドブルにとっては貴重なポイントゲッターとなるであろう。
今回の角田の抜擢は間違っていない。本当の過ちは、昨年の12月にあった。
当時マルコ博士とホーナー代表は、F1フル参戦の経験すらなかったローソンをレッドブルに昇格させるという判断を下した。基礎が整っていない状態でトップチームに放り込まれたローソンは、ほとんど不可能に近い任務を課され、たった2戦で更迭されるという”屈辱的な結果”で終わってしまった。
レッドブルは今も、「新しいフェルスタッペン」を探している。かつてフェルスタッペンで成功したような、”あの方法論”を再び追い求めているのだ。
だかそれは、フェルスタッペンにのみ通用したこと。その結果、同じ方法論を適用されてしまったドライバーたちは、次々と燃やし尽くされてしまった。もしほかの環境でチャンスを与えられていたなら、もっと大きな可能性を引き出せていたかもしれないのに。
■運に恵まれ、時間も与えられた。しかし結果は追いつかず(ホセ・カルロス・デ・セリス)
Yuki Tsunoda, Red Bull Racing
Photo by: Lars Baron - Motorsport Images
角田のレッドブルでのここまでのレースは、大きく期待されたもののそれが現実となることはなかった。バーレーンでは入賞したが、サウジアラビアでは1周目にレースを終えるという展開。これは「僕の起用は正しかった」と証明しようとしている時には、理想的とは言えない。
確かにサウジアラビアGPのFP3までは、フェルスタッペンとの差を縮めているように見えた。しかし予選ではまるで別世界のような差をつけられてしまった。Q3での差は、1秒近かった。マルコ博士がレッドブルの2台目に求める基準からすれば、それは到底許容できないレベルだ。
しかしそれでも角田は、予選をトップ10で終えることができており、レースでもポイント獲得を狙える位置にいた。つまり、昇格は正しかったと主張できる状況にはあったのだ。
角田にはふたつの運が味方している、ひとつは、レーシングブルズに降格したローソンが、その”裁定”が不当だったと証明できるだけのパフォーマンスを発揮できていないという点だ。ローソンはサウジアラビアGPの予選で新人アイザック・ハジャーに後れを取った。もしレッドブルが角田を交代させようとするならば、次の候補はローソンではなくハジャーであろう。
もうひとつは、1年で2度もドライバーを交代するのは、さすがにレッドブルでもやりすぎだということだ。そういう状況から見れば、角田がRB21から降ろされる可能性は低いと言えよう。今季はあと19戦も残っており、これはローソンに与えられたチャンスよりもはるかに多い。
数字だけを見れば、ここまでの角田が獲得したポイントは、ローソンよりもたった”2ポイント”多いだけである。しかも角田は、ローソンよりも既に1レース多く走ったのだ。これは、レッドブルが望んでいる貢献に値するとは、とても言い難い。特にフェルスタッペンのドライバーズタイトル5連覇を狙い、さらにコンストラクターズランキング4位転落のリスクがある現在の状況でならなおさらだ。
■進化している途上。しかし、プレッシャーは高まっている(オレグ・カルポフ)
Yuki Tsunoda, Red Bull Racing
Photo by: Peter Fox - Getty Images
正直に言って、角田がレッドブル昇格後戦った数戦は「素晴らしい」とは言い難い。しかし「ギリギリ許容範囲内」だったと言え、情状酌量の余地もある。F1で”もっとも難しい仕事”と言われるレッドブル2台目のシートに、3連戦直前に突然放り込まれたのだから。これは、歓迎できるような状況ではない。
今のところ角田にとっての最大の問題は予選でのパフォーマンスである。角田は2戦連続で予選Q3に進出しているものの、フェルスタッペンとの差は依然として大きい。そして決勝では、ここまでの3戦全てで、遅いマシンの後ろに詰まってしまっている。
予選パフォーマンスは、角田にとって解決すべき最大の課題である。レッドブルがマイアミGPの前に、角田のためにTPC(旧車テスト)を実施したのも、この点への対処を目的としたものだった。
とはいえ彼には、さらなる時間が必要だ。そしてレッドブル首脳陣のコメントからは、ローソンのようにプレッシャーに潰されないよう、負担を軽減しようとする意図も読み取れる。
いくつかのセッションでは、角田の高いパフォーマンスの兆しも見られた。ブレイクスルー直前とも言える状況ではあるが、課題はそのスピードを”最も重要なセッションで確実にまとめ切ること”にある。
マイアミGPはスプリントフォーマットで行なわれるため、走行時間は少ない。しかし、重要なセッションは多い。これを最大限に活かすことが、角田にとっての最重要課題だ。
その課題を達成するまでの時間が長引けば長引くほど、彼が感じるプレッシャーはさらに大きくなっていくことだろう。
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