F1分析|衝撃の大クラッシュから、グロージャンはどうやって生還できたのか?
F1バーレーンGPで激しいクラッシュを経験したにもかかわらず、コクピットから脱出し、軽症で済んだロマン・グロージャン。この事故と彼の生還劇は、F1がこれまで進めてきた安全性向上策を裏付けることになった。
F1バーレーンGPの決勝レース1周目、ハースのロマン・グロージャンはターン3の立ち上がりでガードレースに激しくクラッシュ。モノコックはガードレールを突き破り、マシンのリヤエンドは千切れ飛んでしまった。そして漏れた燃料に引火し、マシンは爆発的に炎に包まれることになった。
この状況にグロージャンの安否が心配されたが、彼は炎の中から自力で這い出すことができた。彼は軽度の火傷を負ったものの命に別状はなく、多くの人々は奇跡だと評した。
確かに、今回の事故には幸運なところもあった。グロージャンがクラッシュの衝撃で意識を失わず、しかもマシンは上下正しい形で止まった。とはいえ、F1の安全手順は、彼の命を守る上で大きな役割を果たしたと言えるだろう。
F1とFIAは、この事故を徹底的に調査することになるだろう。そのためにはビデオ映像、写真、残された物理的な証拠など、調べるべきモノは多岐に及ぶ。結果が出るまでには、数ヵ月かかるかもしれない。
ハースは、FIAが調査を行なうまで、グロージャンが乗っていたモノコックの残骸をそのままの状態にしておくと語っている。チーム代表のギュンター・シュタイナーは、「とにかく今は触れたくないので、そのままにしておく。なぜなら我々は、全員が何をしたいのか、それを確認する必要がある」
「とにかくあのクルマはもう使えないので、急ぐことはない。そのままなら、片付けて箱に入れておいても同じだ。とりあえずそのままにしておき、次の週末に向けて別のマシンを組み立て始める」
事故の時に何が起きていたのか、その詳細を知るまでには時間がかかるだろう。でも、事故後に撮影された写真を見れば、グロージャンの命を救うために活きた要因のいくつかが見て取れる。
■衝撃吸収構造
ハースのノーズと衝撃吸収構造は、ガードレールを突き破った際に壊れたのは明らかだ。
吊り下げられた事故車のモノコックを見ると、コクピット横に取り付けられた衝撃吸収構造が押し潰されているのが分かる。これが潰れることで、衝撃を分散させることになるのだ。
グロージャンのマシンは746kg。そのマシンが221km/hでバリヤにぶつかり、50Gがかかったと見られている。そんな状況でドライバーを守るためには、多くのエネルギーを取り除く必要があった。
The remains of the car of Romain Grosjean, Haas VF-20
Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images
ドライバーを覆うサバイバルセルは、本来の形状を保ち、ハロもしっかりと保持されている。これらがグロージャンを守ることになった。しかしコクピットの前方では裂けているように見える部分もあり、実際には間一髪だった可能性もある。
■ハロとロールフープ
モノコックがバリアを突き抜けた際、ハロがガードレールの隙間を引き剥がしたように見える。そうすることで、グロージャンの頭部がガードレールの金属に直接当たるのを避けた。
ロールフープには、一部凹みが残されている。ここがガードレールに引っかかり、モノコックがそれ以上滑っていくのを阻止した可能性がある。
コクピットが停止した位置から引き剥がされると、ロールフープの損傷がより目立つ。これは、マシンのこの部分が途方もない力を受けたことを示している。
The remains of the car of Romain Grosjean, Haas VF-20
Photo by: Andy Hone / Motorsport Images
またコクピット前方が受けたダメージも、この下の画像ではより明確になった。コクピットの前方、ハロの前方の取り付けと同じ位置でヒビが入っている。またバルクヘッド上部のバニティパネルも失われてしまっている。
The remains of the car of Romain Grosjean, Haas VF-20
Photo by: Andy Hone / Motorsport Images
ハロは、ガードレールに接触したことを考えれば、比較的無傷であると言えるかもしれない。表面には亀裂が確認できるが、これは化粧パネルにすぎないため、今回のような衝撃を受けた際には、損傷することは予想されていたものだ。
Marshals remove the wreckage after a huge crash for Romain Grosjean, Haas VF-20, on the opening lap
Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images
■エンジンと燃料
事故の重要な側面は、ガードレールにぶつかったことで、マシンが前後に真っ二つに折れてしまったことだ。モノコックはガードレールを突き破ったが、パワーユニットを含むリヤエンドは、コース側に止まり、大きな火災には見舞われなかった。
Ferrari F60 chassis, fuel tank and KERS battery (bottom)
Photo by: Giorgio Piola
モノコックの後方には、パワーユニットが6本のボルトで直付けされている。これらのボルトが、かかったとてつもない力によって千切れてしまったのだ。
Marshals remove the wreckage after a huge crash for Romain Grosjean, Haas VF-20, on the opening lap
Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images
事故直後に上がった炎は、クラッシュの衝撃で燃料タンクが破裂したか、燃料の供給ラインが引き裂かれたことが原因だと考えられる。
マシンに搭載されていた燃料の全てが燃えてしまったか、それは定かではない。しかし回収されるモノコックを見ると、燃料バッグは空になり、押し潰されているように見える。
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