ピークパワーはどうでもいい? アルピーヌF1、パワーユニットは「最高のマシンに合ってこそ」
アルピーヌは2022年型パワーユニットで大幅な出力改善を果たしたと言われているが、最も重要なことはマシンとの一体感だとして、ピークパワーのみを追求することはないという。
写真:: Alpine
アルピーヌのブルーノ・ファミンは、パワーユニット(PU)開発ではピークパワーのみを追求するのではなく、マシンとの一体感が重要になると語る。
2022年シーズンのように勢力図が大きく変動した中では、シャシーとパワーユニットそれぞれのパフォーマンスを正確に比較することは難しい。
例えば、今季大きく低迷しているメルセデス。その原因はPUで後れを取っているからとも噂されてきたが、シャシー側の不調やドラッグの多さなど、その他の要因もあるため、PUのパフォーマンスそのものは見えてこない。
その一方で、時折トップチームにも匹敵するパフォーマンスを発揮するアルピーヌは、シャシーの空力とルノー製PUの両面で進化。特にコンセプトを刷新した2022年型PUは、飛躍的な進歩を見せたように見える。
F1が1.6リッターV6エンジン+回生システムを採用して以来、出力の面で後塵を拝していることが多かったルノー。しかし今年のルノー製PUは、内燃エンジンだけでなくMGU-KやMGU-Hなどのハイブリッドシステムも、他メーカーと遜色ないレベルにあることは間違いない。
ハイブリッド時代最強と言われてきたメルセデスやそれに追いついたホンダ(現レッドブル・パワートレインズ)などの「トップ勢に対して10馬力以内」の出力まで改善したと、チーム代表のオットマー・サフナウアーがかつて語っていたのもそれを受けてのことだ。
しかし、アルピーヌのヴィリー・シャティヨンにあるファクトリーでPU部門のエグゼクティブ・ディレクターを務めるファミンは、馬力そのものの値には全く興味がないという。彼にとって重要なのは、グリッドで最もパワフルなPUを手にすることではなく、そのPUを搭載することで、今季のマシン『A522』が最強になることだという。
ルノーのPUが今年、出力面でどのような進化を遂げたのか、ファミンに質問を投げかけてみた。すると即座に彼はこう答えた。
「正直に言って、そんなことはどうでもいいのだ。私が気になるのは、マシンのパフォーマンスだ」
「最高のマシンを創り上げるためにPU(開発)で選択をしている。テストベンチでもっと良い数字を出せたが、それでは最終的にマシンは遅くなってしまう」
「その代わり、A522はPUと一緒に設計が行なわれており、最高のマシンにすべくベストな妥協点を取った。我々はこれからもそういう形で作業を続けていく」
Esteban Ocon, Alpine A522
Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images
PUのピークパワーよりもマシンとしての改善を目的にした今季のPU。ルノーがメルセデスやホンダと同様のスプリットターボコンセプトのPUに移行したこともその一環だろう。
コンセプトの刷新は非常に大きな変更ではあるが、チームはこの決断が利益をもたらすと確信していたという。
「私が言っていたことが良い例だ。重要なのは、より良いマシンパッケージだ」とファミンは続ける。
「エンストン(アルピーヌのファクトリー)と一緒に行なった決断だが、それだけではない」
「より良い空力、より低い重心が最終的により良いマシンに……つまり、アルピーヌのマシンが結果を出し、ポイントを獲得するために、マシンパッケージでの改善の一例に過ぎない」
ファミンは、アルピーヌのローラン・ロッシCEOによるオフシーズンの経営陣改革の一環として、今年の始めにチームに加入した。
彼は加入前の3年間はFIAでオペレーションディレクターを務めていた。それ以前はプジョーのテクニカルディレクターとして、ル・マン24時間を制した『908』プロジェクトや2013年のパイクスピーク・ヒルクライムを制した『208』プロジェクトで重要な役割を果たしてきた。
そして、フランスのヴィリー・シャティヨンにあるPUファクトリーの改善と、イギリス・エンストンのファクトリーとの一体化を促進すべく、アルピーヌに起用されたのだ。
ヴィリーのファクトリーは、1976年以降ルノーのモータースポーツ活動の拠点として機能してきたが、その施設にも変更が加えられ続けている。
「我々は施設に投資し続けている」とファミンは言う。
「内燃エンジンやPUの組み立てのために、我々は新しい社屋を建てた」
「歴史のある社屋の1階部分を全て刷新した。それ以上に、新しい設備に新しいテストベンチなど、次世代の(PU)開発に必要なモノには投資し続けているのだ」
ただ設備への投資以上に、アルピーヌがF1の頂点にたどり着くためには、シャシーとPUの完璧な一体化が欠かせない。
シャシーをエンストンで製造し、PUをヴィリーで製造することによる地理的な問題を取り除くことは不可能だが、マシンとして統合する際の状況は数年前よりも改善されているとファミンは言う。
というのも、新型コロナウイルスのパンデミックによりテレワークが当たり前となったことで、シャシーとPUの担当者が何100km離れていてもあまり関係がないからだ。
「新型コロナウイルスは、そういう意味で我々の助けになったのかもしれない」とファミンは言う。
「あらゆる場所で、誰もが一緒に仕事をするための新しい手段を与えてくれた」
「エンストンにひとり、ヴィリーにもうひとりいたとしても、それはヴィリーにひとり、ヴィリーから20km離れた自宅にいるもうひとりいるという状況とほとんど変わらない」
「もちろん、これは新しい共同作業の手段だ。オットマーや(チーフ・テクニカル・オフィサーの)パット・フライ、(テクニカル・ディレクターの)マット・ハーマンといった経営陣からも、正しいサインが送られている」
「我々は歩みを共にしており、仲間同士で正しいメッセージを送っている」
「2022年型PUとマシンが戦えているということは、コンセプトが成功したことを証明している。全てにおいて、これが進むべき道だとみんな理解してくれている」
「全てが正しい方向に向かっていると思う。オットマーとすることに関して、失敗することはないだろう」
「それが勝利への道だと理解しているし、そこに向けてみんなの背中を押していく」
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