スーパーフォーミュラ 合同テスト・ルーキードライバーテスト

ドゥーハンが3日連続で餌食に……鈴鹿サーキットのデグナーはなぜ難所なのか? スーパーフォーミュラテスト参加ドライバーが解説

鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーフォーミュラの合同・ルーキーテストでは、ジャック・ドゥーハンが3日連続デグナーでクラッシュするという出来事があった。デグナーは鈴鹿サーキットの中でも難所と言われるが、どこに難しさがあるのか?

戎井健一郎

編集: 2025/12/14 6:21

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Degner

写真:: Masahide Kamio

 スーパーフォーミュラの合同テスト兼ルーキードライバーテストが行なわれている鈴鹿サーキットで、信じがたい光景が目に飛び込んできた。KONDO RACINGから参加のジャック・ドゥーハンが、初日、2日目、3日目と全てデグナーでクラッシュ。3日連続同じコーナーでクラッシュというのは、プロフェッショナルなレース界では前例がないのではなかろうか。

 ドゥーハンの3回のクラッシュはいずれも同じようなシチュエーションで起こった。デグナーひとつ目のカーブであるターン8(デグナー1、通称“デグ1”)でアウトに膨らんで、外側のタイヤをグラベルに落としてしまった形だ。初日はなんとかコースに戻ろうとしたところでスピンしてしまい、リヤからスポンジバリアにクラッシュ。2日目、3日目はなす術なく、フロントから初日と同じスポンジバリアに吸い込まれていった。
 
 デグナー1は非常に高速で通過するコーナーであり、スーパーフォーミュラ車両であればアクセルオフしてほんの少しブレーキをかける程度で曲がれてしまう。ただターンインの過程で少しでもミスがあると、バリアの餌食になってしまう難しいコーナーだ。2025年シーズンのスーパーフォーミュラでも、ルーキーのオリバー・ラスムッセンがデグナーでクラッシュして序盤戦を負傷欠場することになったのも記憶に新しい。

 ドゥーハン陣営は今回、3日間を通してメディア対応をシャットアウトしていたため、本人の談話を聞くことは叶わなかったが、今回スーパーフォーミュラのテストに参加したその他のドライバーからも、デグナーは非常に難しくチャレンジングだという声が口々に聞こえてきた。改めて、デグナーが難所たる所以を探った。

 話を聞いたのは、ThreeBond Racingで初日セッションを走った小出峻、San-Ei Gen with B-Maxで2日間走った野村勇斗、KDDI TGMGP TGR-DCから3日間参加の小林利徠斗の3名だ。

縁石はご法度

写真: Masahide Kamio

 まずデグナーは、NIPPOコーナー(旧ダンロップ)の立ち上がり〜コーナー進入にかけてコース幅が狭くなっており、そこを非常に高い速度域でクリアしていかないといけない点に難しさがある。その中で3人のドライバーが口を揃えて指摘していたのが、イン側にある縁石に乗ってはいけないということだ。

「イン側の縁石は使わないです。乗ったらヤバいです(野村)」

「縁石に乗ると、開幕戦でクラッシュした彼(ラスムッセン)のようになってしまいます。縁石に乗ってるのは86レースでしか見たことがないですね(小林)」

「もちろんクルマによりますが、今のダウンフォースの出るビッグフォーミュラであれば100%NGです(小出)」

 オンボードを見ると、確かにドゥーハンは特に2日目、3日目のクラッシュでは縁石に派手に乗っているように見える。その結果、アウト側に弾かれるような格好となり、ダートまでタイヤを落としてしまったようだ。

 小出はそのオンボードを見ていたとして、「右フロントタイヤは確実に(縁石に)触れていますし、多分リヤも触れています。フロントだけであれば、ブレーキやアクセルオフで耐えられると思いますが、リヤも乗ってしまうと右側の2輪がほぼ接地していないような状態になるので、そのまま外側に行ってしまいます」と解説した。

写真: Masahide Kamio

 一方で小出は、F1のような「よっぽど高性能なクルマ」なら逆に縁石を使えるのかもしれないと考察。実際、近年のF1オンボード映像の中には縁石に乗っているように見えるものも。ドゥーハンは今年鈴鹿サーキットで行なわれたF1日本GPにも出走しており、そこでの経験が仇となった可能性もありそうだ。

 いずれにせよ、スーパーフォーミュラ車両で縁石に乗るのがNGであることには変わりないだろう。今回がスーパーフォーミュラ初走行となった野村は、縁石に乗らないギリギリのところを狙っているのだと話す。

「(縁石に乗らない)ギリギリを狙っていきたいですが、それを狙うのが難しいです」

「あそこは狭くなっているので、僕もイン側はなるべく空けたくないと思っています。だからドゥーハン選手もクリップは外したくないという思いがあったと思います。ただ、やっぱりSFの速度域だと、ちょっとでもタイミング早くステアリングを切っちゃうと……僕も何度もそういうことになりそうでした」

 では、ドライバーたちはどうやってその“ギリギリ”を狙い、ミスなくコーナーを回っているのか? これについて野村は「感覚ですね。考える時間もないので。切り始めた瞬間に『やばい!』と思ったら緩めます」と説明。小出は「そこの感覚は経験によるものが大きいかなと思いますね」と語った。

 また興味深い回答をしたのは小林。彼は自身の中で刻む“リズム”に沿って走っているのだという。

「僕も感覚の部分はありますが、運転中は常に、自分の中で刻まれたリズムがあって、そこに沿って走ってますね。ステアリングを切り返すタイミング、ブレーキを踏むタイミングはリズムに乗ってやっています」

もうひとつの“落とし穴”

写真: Masahide Kamio

 ただ、縁石を避けることさえできればオールオッケーというわけではない。コーナーのクリッピングポイント付近にある“落とし穴”について、小出が解説してくれた。

「あそこのクリップ付近にはちょっとくぼみがあって、段差になっているんですよね」

デグナー2側からの視点。下り勾配から、デグナー1イン側縁石付近がくぼんでいるのがお分かりいただけるだろうか

デグナー2側からの視点。下り勾配から、デグナー1イン側縁石付近がくぼんでいるのがお分かりいただけるだろうか

写真: motorsport.com Japan

「それがなだらかならいいのですが、結構ボコっとへこんでいる印象で、そこに着地するような形になるので、ちょっと衝撃があります。その衝撃に耐えないといけないので、段差での挙動を意識した上でコーナーに飛び込まないといけないイメージです」

「ハイスピードな次元の中で、クルマの向きもうまく調整して、タイミングよく一瞬でコーナーに飛び込ませないといけないので、難しいんですよね」

 確かにコース上を歩いてみると、NIPPOコーナーから下り勾配で突入するデグナー1のイン側縁石付近がややくぼんでいるように感じられた。そのため、アウト側にかけてややバンクがついているような印象を受ける。小林も「縁石のあるところが一番窪んでいて、そこを起点にまた盛り上がってくるので、軽くバンクになっています」と言う。その付近には、通過する車両が底打ちするためか、路面が荒く削られたような跡があった。

デグナー1側からの視点。縁石部分が最もくぼんでおり、バンクのような形状に

デグナー1側からの視点。縁石部分が最もくぼんでおり、バンクのような形状に

写真: motorsport.com Japan

 実はドゥーハン、初日のクラッシュに関してはオンボードを見る限りは縁石にほとんど乗っていないように見える。強いて言えばかすめた程度か。そのため、この“段差”への対処がうまくいかず、アウト側に飛び出してしまった可能性がある。

 いずれにせよ、そういった状況を鑑みて対処するのがレーシングドライバーの仕事であり、「どんな理由があれ3日連続のクラッシュはいただけない」という声が出るのも仕方ないだろう。ただ、「何度クラッシュしても怖気づかないのがすごい」と、ドライバー目線からそのメンタルを称賛する声もあった。またKONDO RACINGも、今回のクラッシュに対する懸念はないと述べている。ドゥーハンの来季参戦が正式に決まった暁には、2月の鈴鹿テストで大きな注目を浴びることは間違いないが、次こそはノーミスで走り切ることができるだろうか。

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