トップ3チームで考え方が分かれた……2020年F1マシンのサスペンションレイアウト
2020年シーズンのF1は、前年からレギュレーションの変更がほとんどないため、各チームのマシンのコンセプトは似たようなモノになると考えられていた。しかし蓋を開けてみると、トップチームのアプローチは大きく異なっていた。
Mercedes W11 Red Bull RB16 Ferrari SF1000 suspension comparison
Giorgio Piola
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
Analysis provided by Giorgio Piola
今のF1のトップ3チームであるメルセデス、フェラーリ、レッドブル。彼らはそのマシンのフロント部分で、それぞれ異なるアプローチを示した。ステアリングアッセンブリー、サスペンションアーム、ヒーブダンパー……それらの配置について、各チームが独自のレイアウトを採用してきたのだ。
この記事では、これらのチームが何をしてきたのか、パフォーマンスをわずかでも向上させるために何をやってきたのかを分析していくこととする。
メルセデスがやったこと
今やどのチームも、サスペンションをコントロールして、空力性能を向上させるようにしている。メルセデスは、10年前にF1に復帰して以来、この分野での先駆者となっていた。
Photo by: Giorgio Piola
2020年シーズンに向けては、DAS(二重軸ステアリング)を登場させ、テストでの話題をさらった。メルセデスはこれを取り付けるために、バルクヘッドとサスペンションのデザインに変更を加えた。
その形状は昨年型とは大きく異なっており、左右のラック&ピニオンは非対称である。そのため、DASの油圧制御ユニットが内包されているかもしれない。
しかしこのシステムのサイズ、そして重量増を考えれば、それを正当化するだけのパフォーマンス上でメリットがあるということなのだろう。
Photo by: Giorgio Piola
彼らがまず登場させたのは、前後のサスペンションをリンクさせて動かす、FRICというシステムだ。このシステムは、サスペンション改革について、チームが考える方向性を示したと言える。しかしこれは、2014年に禁止されることになった。
Photo by: Giorgio Piola
2011年のW02のリヤサスペンションレイアウト。左右のリヤダンパーを繋ぐための、油圧アクチュエーターが存在していた。
Photo by: Giorgio Piola
2019年シーズンの後半には、フリー走行を活用して、新たなヒーブダンパーのレイアウトを試した。
フェラーリの異なる選択
Ferrari SF1000 front suspension
Photo by: Giorgio Piola
フェラーリは、トップ3チームの中でフロント部分の最適化について、最も保守的なチームと言える。大胆な変更を行なって失敗するよりも、デザインを継続し、セットアップが容易であることを優先させているようだ。
現在のフェラーリのフロントサスペンションデザインは、2017年に端を発する。同チームのサスペンションアッセンブリーは、カバーを外せばすぐに見えるようになっており、セットアップ変更を容易に行なうことができる。
SF90のフロントエンドのデザインは、今年のマシンとほとんど同じだ。しかしパッケージを最適化するために、小さな変更が加えられている。
フェラーリはフロントサスペンションの性能は十分であると判断。過去数シーズンにわたって、マシンの他の部分の開発を重視するようになった。
レッドブルの独自デザイン
レッドブルは2020年シーズンを、メルセデスとの差を縮める絶好の機会だと考えていた。そしてそのために、アグレッシブなフロントサスペンションレイアウトを実現している。
ステアリングアッセンブリーは、シャシーの内部に収められ、ステアリングアーム(3)もそれに伴って、後方に配置されている。このレイアウトにより、ロワウイッシュボーンの後脚と効果的にリンクされている。
このロワウイッシュボーンはマルチリンクの一部を成しており、特に前脚はバルクヘッドを横切るような形で逆サイドに伸び、左右のアームが一体型となっている。
Red Bull Racing RB 16 front suspension
Photo by: Giorgio Piola
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