F1
かつて最先端と謳われたトヨタ風洞……しかし技術提携先ハースF1は使用せず。その理由とは?
ハースは、技術提携を結んだトヨタの風洞ではなく、最近改装されたフェラーリの風洞施設を使用し続ける。この選択は、ハースの長期的な目標に合致している。

Stuart Codling
公開日時: 2025/02/05 2:31
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Kevin Magnussen, Haas VF-24
写真:: Steven Tee / Motorsport Images
ハースは2024年、トヨタと技術提携を結んだことで注目を集めた。提携の中には設計、技術、製造の面でチームがサポートを受けることとなる他、人材面でも交流が生まれることとなったが、フェラーリの風洞施設での作業は継続される。
2000年代、トヨタのF1チームは1勝も挙げることなく撤退。ドイツ・ケルンにある研究開発施設が残される形となったが、そこの風洞はかつて最先端と言われ、他F1チームが率先して使うほどだった。
しかしハースは2016年のF1参戦以来使用してきたフェラーリの風洞を継続して使うことを決めた。
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この決定は戦略的なモノで、現在アメリカ、イギリス、イタリアに分かれるパフォーマンス業務を合理化できる新しい本部探しにも関係している。これには、トヨタからの投資の一環としてハースが建設する新しいドライバー・イン・ザ・ループ・シミュレータ(DIL)も含まれている。
仮にケルンに空力チームを設立したり、そこへスタッフを通わせたりすることはコストを増加させ、ロジスティクスを複雑なモノにしかねない。またトヨタの風洞には、グラウンドエフェクトの研究に直接影響する、とある欠点もある。
シーズン前のブリーフィングで、ハースのチーム代表を務める小松礼雄はmotorsport.comを含む一部メディアに対して、次のように語った。
「”絶対に”という言葉は強いですが、当面はマラネロの風洞から出る予定はありません」
Wind tunnel
Photo by: McLaren
トヨタが2009年末にF1から撤退した後、マクラーレンやウイリアムズ、フォースインディア(現アストンマーティン)を含むいくつかのチームがトヨタの風洞を使用してきた。フェラーリもそのひとつだが、彼らの場合は、マラネロのファクトリー裏口にあるレンゾ・ピアノ設計の巨大建屋内にある自社風洞を改修する間の一時的な措置だった。現在ケルンで作業を行なっているのは、2026年からF1に参戦するキャデラックだけだ。
当時、トヨタの風洞は煙の代わりにレーザーシートで照らされた微粒子を用いて空気の流れを可視化する粒子画像流速測定法(PIV)を提供していたため、他の風洞よりも大きな優位性を誇っていた。
トレーサー粒子がスモーク粒子よりも気流に与える影響が少なく、PIVはより正確だと考えられており、現在ではほとんどのチームがPIVを導入するために設備をアップデート。トヨタの風洞は陳腐化してしまった。
さらにF1チームは、風洞のムービングベルト形状に注目。現代F1はマシン下面から多くのダウンフォースを発生させるグラウンドエフェクトが大きなパフォーマンス要因となっており、車高が路面スレスレで設定される現行レギュレーションではなおさらだ。
2024年の夏、フェラーリは風洞施設を閉鎖して、従来のスチール製ベルトよりも耐久性に劣るものの、路面の質感をより正確に反映できる新しい“ラバーライズド”ムービングベルトを導入。トヨタが同じ競争力を提供するためには、フェラーリと同等の研究と投資プログラムを実施しなければならないのに対し、ハースは現時点でフェラーリの改修に恩恵を受けている。
2024年のコンストラクターズランキングをリードし、シーズンを通して空力的な問題が比較的少ないチーム、つまりマクラーレンとフェラーリが最近、風洞施設をアップデートしたことは、F1関係者なら誰でも知っていることだ。
「我々とフェラーリはもちろん同じ選手権で戦っているので、WIN-WINの関係です。風洞のハードウェアに具体的な問題があったとしても、それはこの世代の(グラウンドエフェクト)レギュレーションの仕様に関係しています。フェラーリは研究し、取り組んでいますし、我々は研究をすることなく恩恵を受けることができます」と小松代表は言う。
「マラネロから、現時点でそれ(ラバーライズドムービングベルト)がないトヨタの風洞に移動する利点がありません。もちろん、アンドレッティ(キャデラック)はそこを使っていますが、彼らはまだF1に参戦していません」
「なので当面の間は、マラネロの風洞から移動する意味がないと思います」
ハースの2025年マシンはフロントサスペンションをはじめフェラーリから採用する最新パーツ数が少なくなるものの、潜在的なパフォーマンス上のメリットに加え、マラネロでの活動を継続はハースが“ひとつ屋根の下”でより多くの開発を実施することを目指す中で、ロジスティクスの継続性という利点を生むこととなる。
1月末、チームオーナーのジーン・ハースに対して新しいイギリスの本拠地についていくつかの選択肢が提示されたことが分かっている。現在、ハースがフェラーリのシミュレータを使用する場合には、スタッフがイギリスから移動する手間があるが、この新しい施設にはトヨタの投資の一環として新しいDILが導入される予定だ。
「シミュレータを見てみると、昨年は間違いなく15日以上走っていません」と小松代表は言う。
「15日しかシミュレータ作業をしていないチームが他にあるでしょうか?」
「レースウィーク中は、シミュレータ走行を全くしていません。繰り返しになりますが、他チームはやっています」
「そうした機能は全て、我々にはありません。マラネロにシミュレータがあるとしても、我々が使用できるシミュレータはそれだけです。単純にはいきません」
「ここからもスタッフを送っていますが、マラネロのオフィスは直接オペレーションに携わらない人たちのために設計されています。そのためシミュレータがここにあれば、効率という点では日夜を問わず作業ができることになります」
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