適応進めるリカルドが抱える“若くて速い”チームメイトを持つ故の苦悩「前進するために現実を受け入れなければ」

2021年シーズン9戦を終え、マクラーレンのランド・ノリスと今季加入ダニエル・リカルドの間では大きなポイント差が生じている。リカルドは、マシンへの適応に専念するべく若くて速いチームメイトを意識しすぎないようにしていると語った。

適応進めるリカルドが抱える“若くて速い”チームメイトを持つ故の苦悩「前進するために現実を受け入れなければ」

 F1の2021年シーズンは、レッドブルリンクで開催されたF1オーストリアGPで23戦中9戦を終えた。今季はレッドブル対メルセデスというタイトル争いが注目を集めているが、マクラーレンのコンビであるランド・ノリスとダニエル・リカルドの圧倒的とも言えるペース差も着目すべきストーリーのひとつだ。

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 ノリスがエミリア・ロマーニャGPやモナコGP、オーストリアGPでの3位表彰台を始め、毎週のようにF1関係者やファンを驚かせるパフォーマンスを発揮する一方、今季からチームに加入したリカルドはマシンへの適応に苦戦している。

 またオーストリアGPでの7位入賞など、リカルドが実力を発揮できたように感じられるレースでは、チームメイトがそれ以上の活躍をして話題を奪い取ってしまっている。

 もちろんチームの一員として、リカルドは今季マシン『MCL35M』の限界値を引き出すノリスの躍進を喜んでいる。しかし、適応が遅れるリカルドには冷たい視線が向けられるなど、彼は自身のF1キャリアで最も厳しいシーズンのひとつを過ごしている。

 現時点でのドライバーズランキングでは、リカルドが40ポイントを獲得し8番手に留まる中、ノリスは3番手のセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)に3点差まで迫る101ポイントを獲得し4番手に着けている。

 リカルドは、若いノリスの存在を気にし過ぎないようにしているという。

「なぜだかは分からないが、ここまでペース的に予想外に厳しいシーズンになっていると感じている」と彼はオーストリアGP後にmotorsport.comに対して語った。

「僕が前進するための一番簡単な方法は、現実を受け入れることだ。もっと期待していたかって? それはもちろん。でも、毎週末ランドよりも速く走ることなどを期待してレースに臨んでいたら、このスポーツが憎らしくなってしまう。見るからにこれは少し時間を要することだからね」

「明らかに、何かが足りていない。マシンからは良い感触を得ているし、特にここ3週はかなり良くなっている」

「何と言うか、白旗を振って屈服したりするなどとは言いたくない。そのことに執着したり、労力を割いたりせず、彼がとても上手く走っていることを受け入れようと思う。(ノリスとの)差を縮めて、チームを手助けすることが明確な目標だ」

 つまり、彼は周囲を気にせず、ただやるべきことに集中しているということだ。

「問題は、他のことに気が向くこともあるという点だ。僕の中では、それが今の”賢い32歳”の姿なのかもしれないとも思っている。でも、僕は自分のことだけに集中して、あとはコツコツとやっていくしかないと思っている」

Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M

Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M

Photo by: Charles Coates / Motorsport Images

 市街地サーキット2連戦となった第5戦モナコGPと第6戦アゼルバイジャンGPでリカルドは、第7戦以降の“常設”サーキットでの3連戦(内2戦は同会場)ではマシンの限界を引き出すコツを掴む良いチャンスだと語っていた。

 3連戦の初戦フランスGPを予選10番手からスタートしたリカルドは、ノリスから11.8秒遅れの6位でチェッカーを受け、まずまずの結果を得た。続くシュタイアーマルクGPではレース1周目で8番手に順位を上げたものの、序盤のエンジン不調が響き予選順位と同じ13位でレースを終えた。

 一週間後に同じくレッドブルリンクで開催された3連戦の締めくくり、オーストリアGPでは13番手から7位入賞。ノリスのように上位争いに加わることは叶わなかったが、激しい中団争いの中でフェラーリ勢を相手取るなど、リカルドの着実な進歩を示したレースとなった。

「良くなったよ」と彼は言う。

「こういう1日が必要だったと思う。もちろんチームにとっても、7位に入ってポイントを獲得できたのは良かった」

「でも個人的には、見るからに僕はランキング争いに加われていない。ポイントは関係ないとは言わないけど、僕にとって重要なことは、とにかく楽しんでバトルに加わって、良いポジションに自分を置くことだ」

「そうした結果、いくつかポイントを得ることができたのは良かった。僕はただ楽しんだんだ。もちろん、結果が出ていない時に心から楽しむことは難しいけど、レース自体から満足感を得ることはできた」

Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M

Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

 オーストリアGPでも、リカルドはレース1周目で順位を上げた。13番グリッドからスタートしたリカルドは、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)とカルロス・サインツJr.(フェラーリ)を抜くと、セーフティーカー終了後にはノリスとの交錯で後退したペレスとシャルル・ルクレール(フェラーリ)の前に出た。

「僕が歳を取ったからか分からないけど、最初の周のことはあまり覚えていないんだ!」とリカルドは笑顔を見せた。

「ターン7でジョージを抜いたのは覚えているけど、他はあまり覚えていない。でも1周目で2台抜いて、セーフティーカー再開後にもう2台抜いたのは覚えているよ」

「良いことだし、明らかに前進できた。予選順位が悪かったから、(オーバーテイクは)僕が求めていたことだった。楽しいレースだった」

「何人かが(コース外に)押し出されたのを見たし、ペナルティがあったというのも聞いている」

「(コース脇に)大きな観戦モニターが設置されていて、長いストレートも多いから、何が起きているのかを観ることができるんだ。だから時々、誰かが押し出されているリプレイ映像やチーム無線が放送されているのを観たよ。ファンが楽しんでくれたならいいけど」

 リカルドはオーストリアGPでのレースに満足しているものの、ノリスが5秒ペナルティを受けてもなお彼に40秒という大差をつけたという現実に向き合う必要がある。

 特にリカルドが苦戦しているのが予選ペースだ。ドライビングスタイルをマシンに適応させるべく、エンジニアと試行錯誤を続けているものの、改善の緒は見つかっていない。

「(予選で)僕がかなり満足していたのが悔しい。マシンは完璧ではなかったけど、乗った感触はとても良かった。13番手のマシンよりも良いと思ったんだ」

「すべて問題なかったと思う。ただストップウォッチには(良いタイムが)表れなかった。でもフィーリングは良くなってきている。(予選では)文字通り、各コーナーで0.05秒ずつタイムを失っていたと思う。それでこうなったんだ。理由は分からないが、大丈夫だと思った」

Daniel Ricciardo, McLaren

Daniel Ricciardo, McLaren

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

 プラスの面に目を向けると、予想通りリカルドは3連戦で多くの周回数を重ね、マシンの適応に向けたテストを行なうことができた。

「もちろん。シュタイアーマルクGPとオーストリアGPのデータを重ねてみても、僕はマシンが求めることを沢山やれている」と彼は言う。

「何て言うか、“マクラーレン用の“ドライビングがとても上達した感じだった。残念ながらラップタイムには活かせなかったから、(予選では)すこし悲しかった」

「ドライビングをまだ少し意識していて、そこにかなりの労力を割いてしまっているのかもしれない。もう少しレースを重ねれば(ドライビングを)体が覚えて、マシンを限界まで追い込めるようになるかもしれない。多分そういうことかな? どうなるか見てみよう」

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 次の第10戦イギリスGPは、リカルドが丁度10年前に今はなきHRTでF1デビューを遂げたシルバーストーンサーキットで開催される。彼にとってはあまりゲンの良いサーキットではない。というのも、F1キャリアの中でシルバーストーンの表彰台に登ったのは、レッドブルに所属していた2014年のイギリスGPで獲得した3位のみだ。

 今年のイギリスGPにはスプリント予選レースが試験導入されることになっており、リカルドは自分の得意分野を活かせると自信を見せている。

「ここ3戦のスタートでは、1周目に最低でも2ポジションずつ上げることができている。だから予選スプリントレースがあるということは、日曜日(の決勝レース)はもっと上からスタートできるかもしれないってことだね! レーススタートが2回あるのは嬉しいよ」

「恐らく、決勝レースのように扱う必要があると思う。(スプリント予選レースで)独りよがりになったら、最終的に日曜日はかなり後ろからスタートする羽目になる。その日曜日では全てのリスクを負うことになり、フロントウイングを失う可能性も出てくる」

「だからいつも通りの気持ちで臨んで、可能な限り攻めて最大限チャンスを活かすだけだ」

Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M, makes a pit stop

Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M, makes a pit stop

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 リカルドは新たなフォーマットの試験導入に期待しているものの、不安が残っていることも認めている。

「ピットストップがレースを面白くするんだ。僕はピットストップをするのに慣れてしまっているし、チームが深く関係することでもある」

「もしピットストップが上手くいったり、アンダーカットが成功したりすれば、チームの誰もがその勝利や結果に貢献したことになる。僕はそのチームの要素が好きなんだけど、どうなるか見てみよう」

 低迷期から体制を改め、上昇気流に乗るマクラーレンの躍進が今後も続くことは、かなりの確度で高いと言えるだろう。それを考えると、リカルドはマクラーレンに加入したことに後悔はないはずだ。

「現時点で、ランドはペースはもちろんスピードも兼ね備えている」と彼は言う。

「マシンにもスピードがある。だから新レギュレーションが導入される来年に向け、チームにとっても良いモチベーションになると思う。マシンはキマっている。それが励みになっているのだと思うよ」

 
 

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