F1史上初の試み、スプリント予選レースって何なんだ? イギリスGPでの初実施を前におさらい
2021年シーズンに3レースでスプリントレースを試験実施することが決まったF1。スプリントレースとはどんなものなのか、普段とどう違うのかを紐解こう。
Mick Schumacher, Haas VF-21, Nikita Mazepin, Haas VF-21, Kimi Raikkonen, Alfa Romeo Racing C41, Lando Norris, McLaren MCL35M, and others line up for practice starts at the end of FP3
Steven Tee / Motorsport Images
F1は今シーズン、次戦イギリスGPを含めて3レースでスプリント予選レースを実施することを決めた。F1史上初の試みとなるスプリント予選レースの週末がどうなるのか、紐解いていこう。
■スプリントレースとは何か、なぜF1に導入されるのか?
スプリントレースとは、基本的に通常のレースを短縮したもので、より短い距離で争われる。これを採り入れているシリーズは多くあるが、F1にとっては併催されているF2が最も身近だろう。F2ではスプリントレースが120kmで行なわれるのに対し、フィーチャーレースは170kmとなっている。そしてそのどちらも、エキサイティングな展開になることが多い。
F1に導入された理由は、週末のレース全体の興奮を高めるためだ。F1は長い間、伝統的なフォーマットの変更を検討してきた。リバースグリッドでのレースなども検討されたが、これは却下されている。
金曜日に従来の予選、土曜日にスプリント予選レースを行なうことで、グランプリ期間は毎日、予選かレースが行なわれることになるため、それぞれの日にハイライトが生まれることになる。これはファンにとってもTV関係者にとってもポジティブな変化になる可能性がある。
■スプリントレースが行なわれる週末のフォーマット・タイムテーブルはどうなる?
F1の決勝レースは305kmを超える最小周回数で争われるが、スプリント予選レースはそれが100kmに短縮される。レースの所要時間は25分から30分程度になるはずだ。また、スプリント予選レースではピットインやタイヤ交換の義務はない。
スプリント予選レースのスタート順は、金曜日に行なわれる予選で決まる。この予選は従来と同じくQ1~Q3のノックアウト方式で行なわれる。そしてスプリント予選レースの結果で、決勝レースのグリッドが決まるのだ。
それに合わせてタイムテーブルも以下の通り、いつもと違うものに変更される。
金曜日午前中:60分のフリー走行1
金曜午後:Q1、Q2、Q3セッション(スプリント予選レースのグリッドを決定)
土曜日午前中:60分間のフリー走行2
土曜日午後:100kmスプリントレース予選
日曜日:グランプリ決勝レース
金曜日は60分×2のフリー走行が1回に減り、午後には従来形式の予選が行なわれる。普段の土曜日と近いスケジュールだ。
土曜日は午前中~昼頃に60分のプラクティスを行なった後、時間を置いてスプリント予選レースを実施。日曜日は通常と同じだ。
イギリスGPのタイムテーブルを以下に示すが、全体的にスケジュールが後ろ倒しされ、プラクティス開始が午後にまでずれ込んでいる。これがこのレースだけなのか、他のレースでも同様の時間帯になるのかはまだ不明だ。
金曜日
FP1:午後2時30分~午後3時30分(日本時間22時30分~)
予選 :午後6時~午後7時(同26時~)
土曜日
FP2:午後12時~午後1時(同20時~)
スプリント予選 :午後4時30分~午後5時(同24時30分~)
日曜日
レース:午後3時(同23時~)
Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B,=C=,Sergio Perez, Red Bull Racing RB16B,Lewis Hamilton, Mercedes W12, Valtteri Bottas, Mercedes
Photo by: Erik Junius
■タイヤの使い方はどう変わる?
フォーマットの変更に伴い、各ドライバーが使用できるタイヤにも変化が生じる。通常のグランプリでは各ドライバーに13セットのタイヤが供給されるが、スプリント予選が開催されるフォーマットにおいては12セットのタイヤが供給される。
供給されるタイヤのコンパウンドはソフトが6セット、ミディアムが4セット、ハードが2セットと定められている。
まず金曜日のフリー走行で使用できるタイヤは2セットまでとなる。コンパウンドの選択は自由だ。その後の予選では、各ドライバーがソフトタイヤを5セットまで使用することができる。
土曜日のフリー走行で使用できるタイヤは1セット。コンパウンドはチームが決めることができる。この後に控えているスプリント予選レース用のタイヤを試す重要なセッションとなりそうだ。
スプリント予選レースでは2セットのタイヤを自由に使用することができる。スプリント予選におけるタイヤ交換義務はないため、100kmを走りきれるタイヤでスタートするのがセオリーだろう。
決勝は残るタイヤで戦うことになるが、スタート時のタイヤ選択はスプリント予選レースのリザルトに関わらず自由となっている。
ウエットタイヤに関しては、3セットのウエットタイヤと4セットのインターミディエイトタイヤがイベント開始時に供給される。FP1または予選がウェットだった場合、チームは追加のインターミディエイトタイヤを1セットを受け取ることができるが、スプリントレースの前に使用済みのインターミディエイトタイヤ1セットを返却しなければならない。
スプリント予選がウエットコンディションの場合、チームは使用済みのウエットまたはインターミディエイトタイヤを1セット返却することができ、新しいインターミディエイトタイヤと交換できる。ウエットとインターミディエイトのセットは合計で最大9セットまでとなる。
■ドライバーやチームはスプリント予選レースでポイントを獲得できるのか?
スプリント予選レースは上位3台までがポイント獲得対象となる。1位が3点、2位が2点、3位が1点を得る。決勝レースとは異なり、スプリント予選レースの結果で表彰式が行なわれることはなく、優勝者はパルクフェルメでトロフィーを贈られるようだ。普段、予選でポールシッターがピレリからミニタイヤを贈られるのと近い。
■ドライバーがスプリント予選レースを完走できなかった場合はどうなる?
FIAがスプリント予選レースに関する完全な競技規則を発表するまで、明確な答えはないものの、スプリント予選レースの最終的な順位に従ったグリッドで、決勝レースをスタートしなければならないと考えられる。例えば、レースを完走できず、最初にリタイアしたドライバーやスプリント予選レースをスタートできなかったドライバーは、日曜日のグランプリを最後尾からスタートすることになるだろう。
■マシンがダメージを受けた場合はどうなる?
スプリント予選レースのコストを相殺するために、3つのイベントで約50万ドル(5500万円)の予算を確保することでチームと合意がなされているという。これに加えて、スプリント予選レースでマシンにダメージを負ったチームへの補償制度もあるようだ。
金銭的な面以外では、チームは壊れた部品を交換する場合、仕様が同じパーツに交換しなければならない。これは金曜日の予選の段階で、マシンがパルクフェルメ状態となり、仕様を大きく変更することができなくなってしまうからだ。
■スプリント予選レースの今後はどうなる?
今季3度の実施が決まっているスプリント予選レースだが、これが来季以降も行なわれるかはまだ不明だ。もしスプリント予選レースが成功すれば、2022年以降も継続して実施される可能性がある。しかし、F1は全レースでこのフォーマットを採用するつもりはないと明言している。
もしドライバーやチーム、ファンが新しいフォーマットを楽しめなかった場合、スプリント予選レースが廃止される可能性は十分にある。2016年には、90秒ごとに最も遅いマシンが脱落していく”エリミネーション方式”の予選が行なわれたが、ドライバーやチーム、ファンからの反発を受けてわずか2戦で廃止された前例がある。
ドライバーやチームのスプリント予選レースへの反応はおおむね良好。この新しいフォーマットに期待を寄せている。
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