ニッポンのモノづくり技術を結集! 次世代フォーミュラ『JNFP-1』はどんなマシン? 2026年F1規則がベース……年内にテスト実施へ
日本自動車レース工業会が開発を進めている次世代フォーミュラカーのプロトタイプ『JNFP-1』が公開された。その設計コンセプトや、今後の計画について聞いた。
写真:: Motorsport.com / Japan
日本自動車レース工業会(JMIA)によって進められてきた、次世代フォーミュラカー開発プロジェクト『NEXT-FORMULA-PROJECT』。この度プロトタイプ車両の『JNFP-1』が、人とくるまのテクノロジー展/モータースポーツフォーラムが実施されているパシフィコ横浜で5月27日(水)に公開された。
このプロジェクトが発表されたのは、今から2年前の2024年初夏。この時点ではCFD(計算流体力学/コンピュータシミュレーション)による空力設計に取り掛かっていることが明かされたが、その後風洞実験やシミュレーションを通した開発作業を経て、ついにプロトタイプのお披露目に至った。今夏には実走行テストも予定されているという。
プロジェクトにはJMIA加盟企業のうち約50社が参画。日本のモノづくりの技術を結集させ、“TOP FORMULA”に位置付けられる高性能フォーミュラカーの開発に取り組んできた。現在まで、具体的にどのカテゴリーをターゲットにしているのかについて、JMIA側からオフィシャルに語られたことはないが、F1とFIA F2の中間にある車両性能、テスト用にスーパーフォーミュラやスーパーGT・GT500で使われるNREエンジンを搭載していたことなど様々な情報や背景を踏まえると、将来的なスーパーフォーミュラでの採用を見据えているものと思われる。
では、今回お披露目されたJNFP-1は、どのようなコンセプトで作られた車両なのか? 車両開発に携わるひとりで、モノコックやその周辺パーツの設計を担当した東レ・カーボンマジックの萱原淳一氏に話を聞いた。
前述の通り、NEXT-FORMULA-PROJECTには約50社が参画しているが、その中でも開発に中心的な役割を担ったコア企業が数社存在する。童夢は風洞施設を活用した空力開発を担当、また同社の天澤天二郎開発部シニアマネージャーがプロジェクト全体を統括している。そしてTOYOTA GAZOO Racing ディベロップメント(TGR-D)がCFD解析やサスペンション設計、東レ・カーボンマジックがモノコック周り、M-TECがエンジン周り、戸田レーシングがトランスミッションを担当した。
サイドポッドの企業ロゴが示す通り、非常に多くの企業が参画している
写真: Motorsport.com Japan
車体については、F1の2026年規則をベースに設計されている。「作ろうとしているクルマの車格がF1マシンそのものであるので、2026年の最新規程を流用するのは自然な流れであった」と萱原氏は言う。
安全基準もF1の最新基準に則っている。2019年のFIA F2で、アントワーヌ・ユベールが車両側面から他車に突っ込まれるTボーンクラッシュで命を落としたこともあり、現在ではモノコックのサイドインパクトに対する基準が大幅に引き上げられている。
「現行のF1規則では、30tの荷重で耐えられるように作る必要があります。一方でグラウンドエフェクトカーになる前の規則では、これが3tでした。つまり10倍厳しくなっているんです」と萱原氏。ちなみに国内でも、東レ・カーボンマジック製のFIA F4車両、童夢製のフォーミュラ・リージョナル車両など、比較的最近投入されたレーシングカーはFIAの厳しい耐荷重基準をクリアしており、これは何も上位フォーミュラに限った話ではない。
一方で、モノコック周りがよりユニバーサルな作りとなっているのはF1と差別化されている部分と言える。大柄なドライバーも許容できるコクピット容積が確保されているほか、女性ドライバーでも操縦ができるようなサスペンションジオメトリになっているという。もちろん電動パワステも搭載されている。
続けて、車両のスタイリングもチェック。まず目を引くのは大きく太いノーズ。これもF1基準の安全性に準拠したことが大きな要因だと萱原氏は言う。
ノーズ部
写真: Motorsport.com Japan
ホイール径は現行のF1やFIA F2と同じ18インチになっており、国際的なトレンドに追従。横浜ゴムがリム径18インチのタイヤを専用に供給している。
18インチタイヤを横浜ゴムが供給
写真: Motorsport.com Japan
ドライバーの真後ろには、台形でやや大きめのインダクションポッドが。スーパーフォーミュラでは、右側面(正面から見て左)のサイドポッドにスリット状の吸気口が設けられているが、JNFP-1ではロールフープ部のインダクションポッドからエンジン吸気用、冷却用の空気をまとめて取り入れる構造になっている。
インダクションポッドを流れた空気が、エンジン吸気と冷却に充てられる
写真: Motorsport.com Japan
そして最も特徴的と言えるのが、リヤカウルの後端。リヤウイングにかけてコークボトル状に狭まる形状のものが大きい中、むしろ後端にかけて膨らんでおり、メインプレーン下のビームウイングに覆い被さるという独創的なデザインとなっている。これについて萱原氏は次のように説明する。
特徴的なリヤカウル
写真: Motorsport.com Japan
「通常のフォーミュラカーのルールではビームウイングの前でカウルが終わっていないといけないので、このようなレイアウトにはできないのですが、我々がCFDと風洞実験を積み重ねてきた中で、ここは独自に追求できるだろうと考えました」
「安定したダウンフォースを出すことはもちろん、オーバーテイクを促進するために後方に向けて乱れた空気を流さないという意味合いもあります。そういったことを実現する上では、今回のようなデザインが数値的には有望でした」
その他、サスペンションにおいてはフロントのトーションバーを整備性重視の作りに。カウルには、発泡体をCFRP(炭素繊維強化プラスチック)でサンドイッチした超軽量の構造板を採用するなど、工夫も満載。車両の完成は当初の予定(※2024年初夏の段階では2025年秋の完成を目指していた)よりも遅れることとなったが、その分随所で加盟企業の技術や知恵を結集させている。
写真: Motorsport.com Japan
車両重量はドライバー込みで750kg。これはF1並の重量であり、スーパーフォーミュラと比べると100kg以上重い。車格が大きくなったこと、それに伴いサスペンションやトランスミッションも強化したことを踏まえると、ある意味当然といったところか。最新の安全基準に準拠するとなると、“クイック&ライト”を突き詰めた現行のスーパーフォーミュラ車両と同等のラップタイムを叩き出すことは難しそうだ。
このマシンが実際にレースシリーズに投入される場合はかかるコストも気になるところ。萱原氏は「現状は空力や安全要件を疎かにせず、最新の要件に見合ったものを作ることに注力しています。これから走行テストを繰り返す中で、簡略化できるものも見つかるかもしれませんし、プロトタイプだからこそコストがかかっている部分もあるかと思います」と語る。
また、パーツを輸入に頼らず国内で調達できる素材で製造することも、海外情勢の影響を受けづらいという点で、コストダウンに繋がる可能性もある。これは“国産レーシングカー”ならではの強みだ。国内の様々なモノづくり企業にお金が流れるようになれば、業界活性化の一助にもなるかもしれない。
萱原氏は今後の具体的なタイムラインについては言及しなかったものの、「今後数年単位で、このクルマが実際にレースをしている状況となることを目指して、開発テストと量産を行なっていきます」と話した。
ちなみにスーパーフォーミュラは、少なくとも2027年までは現行車両を使う意向を示しており、2028年以降については「何も決まっていない」としている。近い将来、スーパーフォーミュラとJMIAは共鳴することになるのだろうか?
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