フォーミュラE ロンドンE-Prix レース2

チームメイトを勝たせるため、狭いコースで鬼ブロックの応酬……フォーミュラE最終戦での“チームプレー”はやりすぎだったのか?

先日のフォーミュラE最終戦は、フォーミュラEらしさを凝縮したようなレースだった。しかし、コース上で繰り広げられた戦いがスポーツとして、そして倫理的な観点から見てフェアだったのかについては、議論の余地がある。

Rachit Thukral

Rachit Thukral

公開日時: 2026/08/19 9:53

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Nico Muller, Porsche Formula E Team, Mitch Evans, Jaguar TCS Racing

 ジャガーとポルシェ。フォーミュラEを代表する2大巨頭が、ロンドンでのタイトル決定戦で正面からぶつかり合う……これ以上の展開はなかったはずだ。

 フォーミュラEではこれまでにも、数々の壮絶なタイトル争いが繰り広げられてきた。そして今回、ロンドンでの最終戦で起きた出来事は、良くも悪くも、間違いなくフォーミュラEの歴史を語る上で象徴的な出来事のひとつとなるだろう。

 今季のチャンピオン争いも混戦であり、ロンドンでの2連戦を前に9人のドライバーが数字上タイトルの可能性を残していた。その中でジャガーとポルシェは、時にはカスタマーチームまでをも巻き込んでタイトル争いを繰り広げた。

 パスカル・ウェーレインの2度目のタイトルがかかるポルシェは、土曜日の第16戦でチームメイトのニコ・ミュラーが後続を押さえ込むことでトップのウェーレインを逃す作戦を敢行。もっとも、ウェーレイン自身に勝てるペースがあったことを考えれば、ここまで露骨なチーム戦術が必要だったかどうかは疑問が残るが、これによって異なる戦略を採ることを強いられたジャガーのミッチ・エバンスはバーチャル・セーフティカー(VSC)導入時に大きな不利を被ったため、結果的にはポルシェの作戦成功となった。

 ジャガーはポルシェの戦術に憤り、日曜日には報復することを決意した。それがさらに一線を越えることになったとしてもだ。アントニオ・フェリックス・ダ・コスタはチームメイトのエバンスをサポートすべく、徹底的にウェーレインをブロックした。ダ・コスタのディフェンスは前日のミュラーのそれよりもはるかに激しいものだったが、結局のところ両チームの意図するところは同じであるため、ジャガーの方が悪いとか、ポルシェの方が悪かったなどど断じるのは適切ではない。

 レースはその結果として、かつてのDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)のような様相を呈した。DTMでは歴史的に、メーカーが戦略的な操作を行なってきた。特に2021年のノリスリンクで行なわれた最終戦は物議を醸したが、今回のレースもそれほどではなかったとはいえ、後味の悪さが残った。

 金曜日には、チーム戦術を好まないと発言していたウェーレインが、まさにそのチーム戦術の恩恵を受けて2度目の王座に輝いたのだから、彼の発言は偽善的だったのではないかと指摘されるのも無理はない。もっとも、こうした判断を下すのはチームであり、ドライバーはそれに従う立場なのだが。

 しかし最終戦でのウェーレインとダ・コスタのバトルは、チーム戦からやがて個人的なものへと変わっていったのは明らかだった。ふたりはかつてポルシェでチームメイトだったが、その関係は決して穏やかなものではなかった。そしてダ・コスタがポルシェを離れ、ライバルのジャガーへ移籍した後も、その関係性はほとんど変わっていない。

 むしろ、こうした手加減のない戦いを、モータースポーツの純粋主義者たちは歓迎すべきなのかもしれない。これはますます「無菌化」されていくモータースポーツ界で、失われつつあったものだからだ。もし来季、ふたりがタイトルを懸けて直接対決することになれば、F1のマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンのようなライバル関係にまで発展するかもしれない。

Antonio Felix Da Costa, Jaguar TCS Racing

Antonio Felix Da Costa, Jaguar TCS Racing

Photo by: Simon Galloway / LAT Images via Getty Images

 もし日曜日のレースが単なるチームオーダーの応酬に終始していたなら、ロンドンE-Prixがこれほど物議を醸すことはなかっただろう。31周目には、さらなるドラマが待ち受けていた。

 ウェーレインは同じくタイトルを争うアンドレッティのジェイク・デニスと互いに接触しながら競り合う中、前を走るエンヴィジョンのジョエル・エリクソンに追突。ふたりはスピンしたエリクソンに行手を阻まれる形になり、一気にポイント圏外まで転落した。デニスに至ってはタイヤがパンクしノーズも脱落した。ジャガーとポルシェの駆け引きから距離を置いていたデニスが最大の被害者になったというのは皮肉な話だ。

 ウェーレインにはエリクソンとの接触について3グリッド降格ペナルティが科された一方、デニスとの接触についてはスチュワードから過失なしと判断された。

 チェッカーフラッグが振られた後も、戦いは終わらなかった。ポルシェ、ジャガー、そしてデニスは舌戦を繰り広げ、今回の一連の出来事について、それぞれ相手に責任があると主張した。そこには、この世界で戦う者たちがいかに容赦のない存在になり得るかが表れていた。

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 ドライバーの中には、自分たちの行動が行き過ぎていたと、内心では感じている者もいるかもしれない。彼らは誰もが根っからのレーサーだ。しかし同時に、雇用主の利益を自らの本能よりも優先するよう求められていたのも事実。そのためには反則スレスレの行為をせねばならなかったのだ。

 FIAとフォーミュラEは、「公平なチームオーダー」と「レースそのものを完全に操作する行為」の間に線引きをすべきなのだろうか? 理想を言えば、そうすべきだろう。もしフォーミュラEがもっと広いサーキットで最終戦を行なうようにすれば、今回のような議論はそもそも起きないかもしれない。

 ただ結局のところ、フォーミュラEは常にエンタメを重視してきた。ロンドンで起きたのは、まさにフォーミュラEが誕生以来築き上げてきた、予測不能で、混沌としていて、感情をむき出しにしたレースだった。こうした姿勢を一部のファンは嫌うだろうが、それもある意味フォーミュラEが話題になる要因になっているのかもしれない。

 フォーミュラE本体のそういった姿勢、そして今後も同シリーズはメーカーの参戦に大きく依存していることを踏まえると、このようなレーススタイルが近いうちに消えることはなさそうだ。

 

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