フォーミュラE
そのうち月面を走ることになると思っていた……ディ・グラッシ、フォーミュラEで戦った12年の”技術進歩”を語る「近い将来F1より速くなるのは間違いない」
2025-2026シーズン限りでフォーミュラEから引退することを決断したルーカス・ディ・グラッシが、シリーズの12年間の進歩について語った。
田中 健一
編集: 2026/08/18 9:36
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最後のレースで特別カラーリングのマシンを駆ったディ・グラッシ
写真:: FIA Formula E
ルーカス・ディ・グラッシが、フォーミュラEでの最後のレースを戦い終えた。ロンドンでの2レースは、いずれもリタイアという不完全燃焼のレースであった。
ディ・グラッシは、2014年に開催されたフォーミュラE最初のレース、北京E-Prixから参戦してきたドライバー。しかもその北京E-Prixで勝った、フォーミュラE初代ウイナーである。3シーズン目にはチャンピオンにも輝いた。
そんなディ・グラッシは、先日行なわれた東京E-Prixの前、ヤマハが開いたカンファレンスで、フォーミュラEを戦ってきた12年を振り返った。
「12年前、月面でレースをすることになるんだと思っていたんだ。月面ならば空気抵抗はまったくないし、ギヤ比さえうまくいけば、最高速を出せるのか、そこまで計算していたんだ」
フォーミュラEが始まった際、来季から導入されるGEN4はどんなモノになると想像していたかと尋ねられたディ・グラッシはそう語った。まあその回答は冗談ではあるが、フォーミュラEは初とも言える完全電動のレースシリーズ。電気自動車の普及もまだ進んでいなかった頃であり、一体どんなモノになっていくのか、想像もつかなかったというのも事実だ。だから、ディ・グラッシの回答は、あながち完全に冗談とも言えないかもしれない。
「フォーミュラEを始めた頃、このシリーズが何年続くのかも正直全く分からなかった。1年しかできないかもしれないし、3年かもしれない、10年かもしれなかった。実際、最初の1年間は何度も倒産寸前になった。資金が尽きてしまい、シリーズが中止になる寸前までいったんだ。何が起きるか分からなかった」
Watch: 【動画】これがフォーミュラEの幕開け。北京でのシリーズ初戦、最終周最終コーナーでの大クラッシュ
そんな苦しい状況に陥ったことがあったと、ディ・グラッシは明かす。しかしシリーズは存続し、今やFIAの世界選手権シリーズのひとつとなった。ただディ・グラッシは、開発に関してはもっと早く進められたはずだと主張する。
「個人的な見解としては、開発はもっと早く進めることができたと思う」
「GEN2の時には、4WDを採用するようにと、僕は強く、とても強く進言したんだ。だけどいつも返ってくる回答は、『四輪駆動にするどドライブが簡単になりすぎてしまうから、絶対にやらない』というモノだった」
「市販の電気自動車は、全て4WDだよね? なのに、なぜ4WDにしないのか……次世代マシンを開発していた人たちは、『走らせるのが簡単になりすぎる』と言うばかりなんだよね」
「僕は、簡単ってどういう意味だい? って思ったよ。僕はル・マンで4WDのマシンをドライブしたことがあるけど、あれは決して簡単じゃない。実際にはより難しいか、同じくらい難しいかのどちらかだった。とにかく、もっと早く進んでほしかった開発もあれば、まだ実現していない技術だってある」
ディ・グラッシは、フォーミュラEで実現して欲しい技術について、こう語った。
「フォーミュラEは、燃料タンクの代わりにバッテリーを搭載している。でも、そのバッテリーは床下にはないんだ。街中で見かける電気自動車は全て床下にバッテリーが搭載されているから、重心と重量配分の面でとても優れているんだ。でも、フォーミュラEでは依然としてドライバーの後ろにバッテリーが搭載されている」
「そしてアクティブエアロも、フォーミュラEに導入して欲しい。電気自動車は、すごく効率的でなければいけない。そのためには、直線では空気抵抗を減らし、コーナリングでは大きなダウンフォースを発生させた方がいい。それがまだ実現できていない」
「つまり、まだまだフォーミュラEには多くの課題が残っているということだ。まだ大きく改善できる余地があるということなんだ」
Gen4
写真: FIA Formula E
フォーミュラEは2014年に使われていたマシンから、GEN2、GEN3、GEN3 Evoを経て、来シーズンからはGEN4という新しいマシンが投入される。世代が変わるに連れてマシンのパフォーマンスが格段に進化しており、その進化はまだとどまることを知らない。
「GEN1は出力が200kWだった。GEN2では250kW、GEN3では350kWになった。そしてGEN4では600kWになる。つまりフォーミュラEは、急激な成長段階にいる。ピークに達したり、進化が横ばいになったりという段階には、至っていない」
「GEN4では、GEN3 Evoよりも6〜8秒速くなる。その次のGEN5は、さらに6〜8秒速くなる可能性がある。つまり、F1マシンよりも速くなるかもしれないのだ」
「政治的な面で、それが起きるかどうかは分からないけどね。でも、可能性はあると思うんだ」
そしてAIがフォーミュラEの進歩をさらに加速させるかもしれないと、ディ・グラッシは考えている。
「電気的な技術が進歩すると、マシンはすぐに速くなると思う。これは例えばだけど、マシンにAIを搭載するなど、より多くの発明やイノベーションが起きるシナリオもある」
「AIは特にエネルギーに関して、ドライバーがマシンをマネジメントするのを手助けすることができる。クルマがドライバーと会話し、ドライバーもそれに応答できる。センサーの数も、我々が進むことができるまったく新しい領域だ。コンピューティング、センサー、計算、そしてドライバーがマシンをドライブすることも、AIは手助けすることができるんだ」
「GEN4への進歩が飛躍的なことはとても嬉しい。GEN5も飛躍的に前進するはずだ。そして技術的にこの飛躍が実現可能であることに、興奮しているよ」
「でも、フォーミュラEが最高の状態になるのは、まだまだこれからだと思う。そしてその頃にはヤマハがトップに立ち、全てのレースで勝利を争い、チャンピオンを目指していることを願っている。ヤマハは、まさにそこにいるべき人たちの集まりだと思う」
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