コラム
フォーミュラE
フォーミュラEに導入される”ピット・ブースト”はレースを面白くするのか。その存在意義とは
2年以上の開発期間を経て、フォーミュラEは急速充電技術を使ったピット・ブーストを導入する。新たな戦略的要素が加わり、レースは予測不可能なものになるのだろうか。

Stefan Mackley
公開日時: 2025/01/27 10:10
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Mechanics of NEOM McLaren Formula E Team Fast Charge Jake Hughes, McLaren, e-4ORCE 04
写真:: Dom Romney / Motorsport Images
フォーミュラEは、急速充電ピットストップ“ピット・ブースト”を2月中旬のジェッダE-Prixから導入することを決定した。
「他のモータースポーツとは違うことをしたい」というのは、今週初めにフォーミュラEの共同創設者であるアルベルト・ロンゴが口にしたフレーズだが、電動フォーミュラカーの世界選手権が掲げるモットーとして違和感のない言葉だ。
フォーミュラEのレースにスパイスを与える革新的なシステムは目新しいものではなく、これまでの10年間でファンがお気に入りのドライバーに投票し、1回だけパワーを追加するファンブーストや、一時的に出力が向上するアタックモードなど、いくつかのシステムが導入されてきた。
特に今季の2024-25年(シーズン11)からは、マシンがGen3 Evoにアップデートされ、出力が350kWに引き上げられるアタックモード時は全輪駆動となり、少なくとも開幕2ラウンドのサンパウロとメキシコシティではスリリングなレースが展開された。
2月14日からジェッダで開催されるダブルヘッダーは、F1のサウジアラビアGPで使用されるレイアウトの縮小版でレースが行なわれ、最新コンセプトであるピット・ブーストの初実戦となる。
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Pit Boost arrives in Formula E from the Saudi Arabian round
Photo by: Alastair Staley / Motorsport Images
各ドライバーはレース中、決められた周回数の間に必ずピットストップすることが義務づけられ、ピットに入るとプラグイン充電器がマシンに装着される。この技術により、すべてのマシンが600kWで約30秒、バッテリーの約10%に相当する充電を受ける。
「ファンタスティックなモノになると思うよ。レースにちょっとした危機感が生まれるし、そのエネルギーを様々な方法で、様々な瞬間に使うチームも出てくるからだ」
「また、我々が技術の最先端にいることも特筆に値する。このテクノロジーは初めて披露されるもので、他に類を見ないものであり、我々も非常に誇りに思っている」
モータースポーツにおけるピットストップは、シングルシーターという種目に限ってみても、決して目新しいものではない。タイヤ交換や給油、ドライバーやマシンの入れ替えなど、あらゆることが行なわれてきた。
しかし、現代のF1ピットストップが2秒もかからない時代に、30秒間マシンが止まっているというのは魅力的とは言い難い。
ロンゴは、テレビ放送ではピットストップの全過程は映らないと強調する。他のマシンはコース上に残り、チームは一度に1台しかピットストップを行なえないからだ。
ドライバーによっては、戦略的なメリットを見出すためにピットストップをかなり遅らせることもあるだろうし、サーキットによってはピットストップによって周回遅れになることもあるだろう。しばらくの間、ピットストップが済んでいるかどうかで分かれたふたつの集団がコース上の異なるポイントを行き来することになる。
フォーミュラEは、世界で最も予測不可能なモータースポーツ、とは言わないまでも、そのひとつとしてすでに知られている。
自宅やサーキットで状況を把握しようとするファンにとって、ピット・ブーストの導入は、たとえグラフィックや実況・解説による説明の助けを借りたとしても、見ごたえを増すどころか、むしろ減じてしまう可能性がある。
Could the concept hurt the racing spectacle of the all-electric series?
Photo by: Andreas Beil
ピット・ブーストのコンセプトは当初、2022年のGen3時代の幕開けに導入される予定とされていたが、信頼性と安全性への懸念から、FIAとフォーミュラEのオーガナイザーが競技中の使用にゴーサインを出すまでには時間がかかった。
その間、11月にハラマで開催されたシーズン前のシミュレーションレースや、ブラジルとメキシコでの練習走行中など、この技術は広範囲にわたってテストが行なわれてきた。
技術的なトラブルがあれば悲惨なことになるのは間違いない。特に、ロンドンで開催されるシーズン・ファイナルで、選手権の結果に大きく影響するようなことがあればなおさらだ。
「我々は何かひとつのデバイスが故障した場合に備えて、完全なプロトコルを用意している。しかし実際に、過去2回のレースで十分なテストを行なったが、一度も故障はなかった」とロンゴは付け加えた。
「例えば、充電できないマシンが何台かあったが、それはすべて基本的にメカニックが充電器をマシンに接続する方法に関係していた。それはヒューマンエラーをもたらすものであり、それこそ我々が望んでいたことなんだ」
フォーミュラEとFIAがその導入に向けて検討してきたスポーツ的側面はいくつかあるが、見過ごせないのは、このような技術がもたらす、より広い範囲への影響だ。一般消費者が日常的に使用する現在の電気自動車にとって、充電に時間がかかることがネックになっているのは周知の事実。また、現状利用できる充電インフラは限られており、著しく不足している。
How will Formula E adapt to Pit Boost?
Photo by: Dom Romney / Motorsport Images
個人所有のものはもちろん、公共の充電ステーションは毎年数千ヵ所も設置されているが、それでもその数は明らかに不足しており、充電を必要とする人々が待たされるため、サービスステーションには長蛇の列ができている。
世界中のレーストラックで採用されている技術が、5年後には一般道を走るドライバーにも提供され、充電にかかる時間が短縮されると考えるのは、それほど道理から外れているというわけでもないだろう。
ジャガー、日産、ポルシェといった大手メーカーがフォーミュラEに長期的にコミットしていることを考えると、急速充電技術が成功を収めることは、Win-Winの関係であるとしか言いようがない。
フォーミュラEはサウジアラビアの後、モナコや東京、上海、ベルリン、ロンドンで開催されるダブルヘッダー・イベントの2日目のレースでピット・ブーストを使用し、前日とは異なるレース戦略を生み出すことになる。
フォーミュラEはまたしても革新の限界に挑戦する意志があることを証明した。あとは最終的にピット・ブーストが大成功することを願うばかりだ。
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