テストレポート
IMSA Daytona December testing

LMDh車両にトラブル多発のデイトナIMSAテスト。信頼性が全チームの頭痛のタネに?

1月のIMSA開幕戦デイトナ24時間レースの総合優勝は、このレースがデビュー戦となるLMDh車両の信頼性次第で決まるかもしれない。

#02 Chip Ganassi Racing Cadillac DPi: Earl Bamber, Alex Lynn, Richard Westbrook, #7 Porsche Penske Motorsport, Porsche 963, GTP: Mathieu Jaminet, Michael Christensen, Nick Tandy

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦に向けて、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイのロードコースで行なわれた2日間のテストは、GTPクラスを走るLMDh車両が勢ぞろいする初めての機会となった。

 アキュラ『ARX-06』、BMW『MハイブリッドV8』、キャデラック『V-LMDh』、ポルシェ『963』の4メーカーの新しいハイブリッド車両が初めて、同じコースでテストをしたのだ。

 ただ、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングが走らせるBMW MハイブリッドV8と、チップ・ガナッシ・レーシングのキャデラック1台はテスト開始の時点でまだマシンのビルドアップをしており、走行はテスト2日目になってからだった。

 アキュラのドライバーであるリッキー・テイラーは、「皆が一堂に会するのは素晴らしいことだ」と語った。

「それぞれのクルマが、異なる開発段階にあると思う。クルマがいかに複雑で、その性能をフルに発揮させることがいかに大変なことか、初めて知ることができたと思う」

「クルマの性能は素晴らしいが、信頼性と開発力、スピードとの戦いの連続だ。シーズンの幕開けとなる24時間レースが近づくにつれ、クルマの様々なシステムと戦っているんだ」

 キャデラックのリチャード・ウェストブルックは「正直なところ、最初のレースは信頼性がすべてとなるだろう」と付け加えた。

「まだ誰も、パフォーマンスに集中してはいないと思う。なぜならそれ(信頼性)はすぐに解決できることではないからだ。 新しいクルマは、作業がとても複雑なんだ」

#02 Chip Ganassi Racing Cadillac LMDh

#02 Chip Ganassi Racing Cadillac LMDh

Photo by: Charles Bradley

 今回のテストにはLMDh車両9台が参加し、2023年シーズンに向けてのホモロゲーションプロセスの一環となった。しかし、ほぼすべての車両が様々な問題に見舞われガレージで時間を過ごすことになった。そのほとんどが新しい標準ハイブリッドシステムの複雑さに関連するモノだったようだ。

 メイヤー・シャンクのアキュラに乗るエリオ・カストロネベスは、「ハイブリッドカーはとても変わったクルマで、運転していてとても面白い」とmotorsport.comに語った。

「ステアリングホイール上にあるたくさんのテクノロジーと情報を見て、多くのガジェットを学ぶ必要がある」

「ハイブリッドはコンピュータが操作するんだけど、いろいろなことができるようになっていて、その変更にとても敏感に反応することに驚いた。LMDhのステアリングホイールは、今やF1マシンのそれと非常によく似ている」

#963 Penske Porsche 963

#963 Penske Porsche 963

Photo by: Charles Bradley

 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは今年を通して、ボッシュ製MGUが抱えた問題を含むハイブリッドシステムのトラブルシューティングを目的としたテストプログラムを実施してきた。

 今回のテストで発生した技術的な問題はそれとは別物だったものの、システムの変更や世界的なサプライチェーンの問題によるスペアパーツ不足が、全チームにとってプレッシャーとなっているという。

 ポルシェのLMDhプロジェクトチーフ、ウルス・クラトレは次のように説明する。

「ボッシュを責めているわけではないが、それらのパーツは我々や他のOEMに夏のテスト段階で一時的に多くの頭痛の種を与えていた。これらの問題は解決されたが、誰もがサプライチェーンの問題に悩まされており、これは世界共通の問題である」

 ペンスキーのジョナサン・デグッドは、ハイブリッドシステムの問題点について「コンポーネントが統合された結果、ハイブリッドシステムのどこかが故障したり機能しなくなったりすると、クルマがシャットダウンしてしまう」と説明した。

「冗長性がなく、スタートや回生などすべてがハイブリッドに依存しているからだ。故障が発生した場合、単純にスイッチを入れ直してプッシュスタートするわけにはいかない。テストプログラムの開始/停止につながる重要なコンポーネントなんだ」

 新シーズンに向けては、積極的にテストをしてきたポルシェと、テストに3台のマシンを持ち込んだキャデラックがマイレージの面でリードしていると思われるが、デイトナではアキュラが最速だという見方が一般的だった。

 ただし公式計時は行なわれていなかったため、本当の勢力図が分かるのはデイトナ24時間レースの本番まで待たなければならないだろう。そしてその速さを結果につなげられるかどうかは、マシンの信頼性次第となってくる。

#25 BMW M Team RLL, BMW M Hybrid V8, GTP: Jesse Krohn, Augusto Farfus, Connor De Phillippi

#25 BMW M Team RLL, BMW M Hybrid V8, GTP: Jesse Krohn, Augusto Farfus, Connor De Phillippi

Photo by: Richard Dole / Motorsport Images

 
関連ニュース:

Be part of Motorsport community

Join the conversation
前の記事 ポルシェ、LMDhマシン『963』のカスタマー供給は4月以降に。サプライチェーンの問題で準備に遅れ
次の記事 親子参戦再び。ケビン・マグヌッセン、父ヤンと共にデイトナ24時間レース出場へ「父と一緒に伝説的なレースを走れるなんて!」

Top Comments

最新ニュース

F1分析|どうなる2024年のF1チャンピオン争いの結末。まだまだフェルスタッペン優位も、ノリス大逆転の可能性も十分アリ……鍵を握るのはピアストリ?

F1分析|どうなる2024年のF1チャンピオン争いの結末。まだまだフェルスタッペン優位も、ノリス大逆転の可能性も十分アリ……鍵を握るのはピアストリ?

F1 F1
F1分析|どうなる2024年のF1チャンピオン争いの結末。まだまだフェルスタッペン優位も、ノリス大逆転の可能性も十分アリ……鍵を握るのはピアストリ?
鈴木竜生、10ポジションアップの7位も予選でのミスを悔やむ「レースペースは良いので、あとは予選をどうにかしないと」

鈴木竜生、10ポジションアップの7位も予選でのミスを悔やむ「レースペースは良いので、あとは予選をどうにかしないと」

MOT3 Moto3
Motegi
鈴木竜生、10ポジションアップの7位も予選でのミスを悔やむ「レースペースは良いので、あとは予選をどうにかしないと」
小椋藍、母国レースでタイヤ戦略”ギャンブル”成功し2位、チャンピオンに王手。一定の満足も悔いも残す「勝たなきゃいけないレースだった」

小椋藍、母国レースでタイヤ戦略”ギャンブル”成功し2位、チャンピオンに王手。一定の満足も悔いも残す「勝たなきゃいけないレースだった」

MOT2 Moto2
Motegi
小椋藍、母国レースでタイヤ戦略”ギャンブル”成功し2位、チャンピオンに王手。一定の満足も悔いも残す「勝たなきゃいけないレースだった」
Moto3日本人トップの6位も、表彰台逃し悔しさを隠せない山中琉聖「タイヤマネジメントやレースの組み立てが少し悪かった」

Moto3日本人トップの6位も、表彰台逃し悔しさを隠せない山中琉聖「タイヤマネジメントやレースの組み立てが少し悪かった」

MOT3 Moto3
Motegi
Moto3日本人トップの6位も、表彰台逃し悔しさを隠せない山中琉聖「タイヤマネジメントやレースの組み立てが少し悪かった」

Sign up for free

  • Get quick access to your favorite articles

  • Manage alerts on breaking news and favorite drivers

  • Make your voice heard with article commenting.

エディション

日本 日本