カストロネベス悲願達成、4度目のインディ500制覇! 佐藤琢磨は攻めの燃費戦略実らず14位

第105回インディ500が行なわれ、エリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)が優勝。佐藤琢磨は残り6周という時点まで首位を走ったが、燃料がもたず14位となった。

カストロネベス悲願達成、4度目のインディ500制覇! 佐藤琢磨は攻めの燃費戦略実らず14位
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 第105回インディ500の決勝レースが5月30日に行なわれ、エリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)が史上最多タイ記録となる4度目のインディ500制覇を成し遂げた。

 関係者の努力により、インディアナポリス・モータースピードウェイ最大収容人数の40%にあたる13万5000人の動員が実現した、今年の伝統の一戦。ファンの熱気に包まれた現地は快晴の下、スタートに向けてセレモニーが行なわれた。

 ポールポジションはスコット・ディクソン。彼を始め、チップ・ガナッシ・レーシングは全4台が上位9台に食い込んでいる。ディフェンディングチャンピオンである佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は15番手スタートだ。

 200周のレーススタート前から波乱の気配。今回苦しんでいる予選32番手のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がパレードラップ中にピットインしたのだ。ただ何とか元のスタート位置に戻ることができた。

 全車が3列に並んでの迫力のスタートでは、ディクソンが首位をキープ。しかしターン3でコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)がトップを奪うと、2周目にはリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター)がものすごいペースでディクソン、ハータを攻略し、首位に躍り出た。佐藤はスタートで2ポジションアップしたが、その後1台に抜かれ、14番手につけた。

 しばらくはコーションなどもなく、ヴィーケイが隊列を引っ張る展開。コンマ数秒の差で各車が連なる接近戦の中、2番手のハータや3番手のディクソンはストレートエンドでアクセルをオフし、タイヤや燃料を節約しながらヴィーケイについていった。

 31周目にヴィーケイがピットに入ったのを皮切りに、アンダーグリーンでのピット作業が始まっていく。ここで4番手を走っていたエド・カーペンターが痛恨のギヤスタック。すると直後にはステファン・ウィルソン(アンドレッティ・オートスポート)がピット入り口で減速した際、スピンしてしまいクラッシュを喫した。

 これでこのレース最初のコーションが出された。この時点で、ディクソンや佐藤などを含む約半分のマシンがピット作業を終えていない状態で、ピットレーンがクローズされた。完全にガス欠となってしまったディクソンは、ピットに入り救済措置の2秒給油を受けたものの、なかなかエンジン再始動できず。同じ症状でアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)も大幅にタイムロスをしてしまった。

 その後、ピットレーンがオープンとなり、ピット作業をまだ終えていないマシンが続々とピットロードになだれ込んだ。コーション直前にピットインしていたハータが首位に立ち、ヴィーケイの前に。佐藤は混乱をうまく味方につけ8番手までポジションを上げた。ディクソンは周回遅れの31番手、ロッシは32番手に落ちてしまった。

 47周目にレースがリスタート。ここではサイド・バイ・サイドのバトルが複数箇所で勃発し、うまくそれをさばいた佐藤が6番手にポジションアップ。エリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)とコナー・デイリー(エド・カーペンター)も抜きつ抜かれつのバトルを展開。デイリーはそのまま、ハータやヴィーケイも交わしてトップに立った。

 各車が2度目のピット作業を終えても、各車が接近したままエド・カーペンターのデイリー、ヴィーケイが隊列を引っ張る展開は変わらず。ただヴィーケイは68周を走りきったところで真っ先にピットに入っており、他のマシンよりも10周近く早いタイミングのピットとなった。佐藤はチームメイトのグレアム・レイホールとポジションを入れ替えながら、8~9番手で走行を重ねた。

 レース折り返しの100周を過ぎると、デイリーやヴィーケイを含め、シボレーエンジン勢から3回目のピット作業を実施。佐藤はかなりピットインを遅らせ、116周を終えたところでタイヤ交換を終えた。その翌周、チームメイトのレイホールもピットに入ったが、ピットアウト直後に左リヤタイヤが脱落し、痛恨のクラッシュ。これでレース2度目のコーションが出た。外れたタイヤがデイリー車のノーズに接触するという危険なシーンもあった。

 この時点でトップはアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)。カストロネベスとパトリシオ・オワード(アロー・マクラーレンSP)がそれに続いた。上位陣の中で最も遅いタイミングでピットに入った佐藤は7番手につけた。なおこのコーションで、ディクソンがリードラップに復帰することに成功した。

 126周目のリスタートでは、4度目のインディ500制覇を目指すカストロネベスが一気にトップに躍り出る。しかしすぐさまオワードがそれに続き、ラップリーダーを奪った。その後もパロウがカストロネベスのインに飛び込みパスするなど、トップ3は激しくポジションを入れ替えた。

 コーションのおかげで燃費の心配がなくなり、各車のバトルも一気に本気モードに。佐藤はハータやシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)に交わされ、9番手に落ちた。

 アンダーグリーンで各車4度目のピット作業を行なう中、佐藤はステイアウトし、152周目にこのレース初めてラップリーダーとなった。佐藤が自己ベストでラップを重ねている間に、順調にポジションを上げていたパワーがピットレーンでスピン。幸いコーションはでなかったが、パワーにとっては泣きっ面に蜂の今大会となってしまった。

 単独走行でタイムを稼いだ佐藤は、157周終わりでピットに入ると実質6番手でコースに復帰。しかし残り40周を切ったところで一気にスローダウンし、ポジションを落としていった。どうやら燃料を節約し、ピット回数を一回減らしてフィニッシュまで走り切る戦略に切り替えたようだ。

 残り30周が迫ってくると、カストロネベスがパロウを交わして首位に立ち、172周を終えたところでピットイン。上位陣も続々ピット作業を実施した。カストロネベスがコースに戻ったところで、佐藤はカストロネベスの18秒前方となった。

 カストロネベスとパロウはポジションを入れ替えながら、周回を重ねていく。オワード、パジェノーがそれに続いた。一方、残り10周を切ったところでトップを走るのはフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロー・マクラーレンSP)、そのすぐ後ろに佐藤が続いた。

 ローゼンクヴィストは193周目にピットイン。これで首位は佐藤となったが、攻めの燃費戦略は実らず佐藤は194周終わりにピットイン。14番手までポジションを落とした。

 残り5周、トップはインディ500初制覇を狙うパロウ。しかし残り2周でカストロネベスがうまくパロウの後ろにつけてトップに立つと、周回遅れの一団を目の前にファイナルラップに突入していった。

 パロウは周回遅れのマシンが生む乱流を受けて、カストロネベスに仕掛けることはできず……ペンスキーを離れて初めて挑戦したインディ500で、46歳にして夢に見た4度目のインディ500制覇を成し遂げた。

 フィニッシュ後はコース上にマシンを停め、金網に上るスパイダーマン・パフォーマンスを見せたカストロネベス。A.J.フォイトやアル・アンサー、リック・メアーズに並ぶ、偉業達成を祝うファンを前に喜びを爆発させた。

 連覇を狙って攻めの戦略を選んだ佐藤だったが、14位でレースを終えた。

 

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順位 ドライバー チーム 周回数 タイム 前車との差
1 Brazil エリオ カストロネベス United States マイケル・シャンク・レーシング 200 2:37'19.384  
2 Spain アレックス パロウ United States Chip Ganassi Racing 200 2:37'19.877 0.492
3 France シモン パジェノー United States Team Penske 200 2:37'19.947 0.069

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