佐藤琢磨、チップ・ガナッシで目指すはインディ500の3勝目。オーバル専に葛藤も……最強体制を構築
2023年は、名門チップ・ガナッシ・レーシングに移籍し、インディカーのオーバル5戦を戦う佐藤琢磨。その葛藤と期待を、日本のメディアに語った。
写真:: Barry Cantrell / Motorsport Images
佐藤琢磨は、インディカー14年目となる2023年にチップ・ガナッシ・レーシングに移籍。オーバル5戦の限定ながら、トップチームでインディカーへの挑戦を続けることになった。
フル参戦、そしてチャンピオンシップを戦うということへのこだわりもあってオーバル限定の参戦には葛藤があったという佐藤。それでも勝ちにこだわり、一番の目標であるインディ500のため、名門チップ・ガナッシ・レーシング加入を決断したという。
「自分にできる最大限の調整を引き続きしながら、自分の求める形でインディ500に挑戦する。その準備を今から早く始めたくて非常にワクワクしているところです」と、佐藤は語った。
「始めはやっぱり時間がかかりました。自分にとってはF1時代はもちろんですし、インディカーに参戦することを決めた2010年から13年間連続でチャンピオンシップを狙って走る、それがすべてとして戦ってきたので、スポット参戦という風に考えるのは正直なかなかできなかったです」
「ただやっぱり色々な状況・条件を見て、今本当に自分にとって一番大事なことは何か、その中で最大の挑戦ができる選択肢として、オーバルに集中するという形ではありますけども、チームの一員として最大限の成果を上げられるように集中してやっていきたいと思っています」
チップ・ガナッシは、言わずと知れた名門チームだ。インディカーではダリオ・フランキッティがシリーズ3連覇(2009~2011年)を果たした他、現役ドライバーではスコット・ディクソン(チャンピオン獲得6回)やアレックス・パロウ(2021年)という王者を擁する。
佐藤にとっては、これまでの13年のインディカーキャリアにおいて、常に強敵だったチームと言える。佐藤はガナッシのエースであるディクソンと、コース上で幾度となく激しいバトルを繰り広げてきたのだ。
彼はそんな憧れにも近い存在のチームからオーバルレース、特にインディ500に挑戦できるということについて、次のように語った。
「本当に信じられない気持ちです。チップ・ガナッシの持つ強さ、リソースの大きさ……今年のインディ500に関してはこれまでと同じように勝利を目指して走りますけども、チームメイトや体制も含めてこれまで以上に申し分のない環境が整っていると思うので、非常に楽しみですね」
「この話をもらった時は信じられなかったです。特にこの3年間はチップ・ガナッシの強さというのは際立っていました。マシンの熟成が進み、ものすごい僅差であるにも関わらず、インディ500では正直に言って圧倒的な強さを見せてきたチームです」
「そのチームと契約をすることになって、自分自身もこれまでの25年間を超えるキャリアの中で、本当の意味でそのカテゴリのトップチームで走るというのは経験したことがない領域ですので、このガナッシのマシンを駆って自分が走るというのは、もう想像ができないくらい興奮しています」
2012年のフランキッティとの最終周のバトルや、2020年にディクソンを下しての2勝目など、インディ500に限ってみても佐藤とチップ・ガナッシは因縁浅からぬ仲だと言える。そんな佐藤を、チップ・ガナッシはどんな風に評価し、そしてどんな形で今回のオファーにつながった? そんな質問に佐藤は、マネージングディレクターのマイク・ハルとのエピソードを交えて答えた。
「マイク・ハルとずっと話していく中で、半分冗談で半分本気だったと思うんですけども、どんな年でも常に『佐藤琢磨がいる』と言ってくれました」
「新年最初に、エンジニアを集めて彼がスピーチをするんですけど、我々の目標はインディ500に勝つことだと明確にしているんです。そこでマイクが言ったのは、毎年自分たちが完璧だと思っていても、『いつもどこからともなく佐藤琢磨が来る』ということでした」
「であれば今後もライバルとして佐藤琢磨と戦っていくのではなく、自分たちのチームに入って欲しい、そうすれば心配事がひとつ消えるという風に本人の言葉で言っていただきました」
2022年のインディ500ではディクソンが最速記録を塗り替えてポールポジション。決勝では同じくガナッシのマーカス・エリクソンが勝利している。
そんな名門チップ・ガナッシをもってしても、脅威と認識されていた佐藤琢磨。その本人がチームに加われば百人力。まさに鬼に金棒だ。佐藤はこれまでの中でも最強の体制でインディ500での3勝目を目指すことになる。
インディカーはセント・ピーターズバーグで開幕(3月5日決勝)するが、佐藤にとっての開幕戦は、4月2日決勝の第2戦テキサス・モータースピードウェイとなる。
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