ルンガー、ベッテルの”セカンドキャリア”にインディカーはおすすめ?「適応は難しいだろうけど、僕は大好き」

クリスチャン・ルンガーは、F1を引退したセバスチャン・ベッテルがインディカーへの転向を望んだ場合、その要求に適応するのは困難な作業になるだろうと語った。

Sebastian Vettel, Aston Martin

 2022年限りでF1を引退することを発表したセバスチャン・ベッテル。彼が今後、何をするかは発表されてはいないが、もしインディカーに挑戦する事になった場合、適応はそう簡単ではないと、クリスチャン・ルンガーは語った。

 春に、今季限りでベッテルがF1でのキャリアにピリオドを打つのではないかという憶測が流れた際、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)の創設者で共同オーナーのボビー・レイホールは、ベッテルにチームのマシンをテストさせたいと発言していた。

 そのアイデアが実現するかどうかは興味深いが、RLLRに所属するルンガーはベッテルの能力をもってしても、インディカーに適応するのはそう簡単なことではないと考えているようだ。

 ルンガーは2017年からアルピーヌ・アカデミーに所属し、FIA F2を2021年まで戦った。だが最高成績はランキング7位。2022年からはインディカーに戦いの場を移し、先日のインディアナポリスGPで2位表彰台を獲得している。

 RLLRと新たに複数年契約を結んだルンガーは、ベッテルがインディカーに挑戦するというアイデアをどう思うかと尋ねられ、次のように答えた。

「セバスチャンがインディカーを運転するのは、正直言ってクールだと思う」

「僕はF1マシンを運転したことがある。ルノーでかなりの日数テストしたことがあるんだ。だから僕としては、ありのままを言おうと思っている。僕にとっては、個人的には(F1が)今までで一番運転しやすいクルマだった。ある程度までは、運転しやすいんだ」

「そしてそれは上位陣とその他が分かれていて、中団が極端に接近している理由だとも思う。ある程度、限界に近いところまでは運転しやすいクルマなんだ。そしてそこから、0.5秒から1秒を見つけるのが難しいんだ。ダウンフォースが大きいから、粘ることができるんだ」

「だから、セバスチャンがこちらに来て、ハッスルしてマシンを動かす必要があるマシンを試すのは……マシンが自分を動かしているのではなく、自分がマシンを動かしているのだから、厳しい移行になると思うんだ。でも、正直なところ、インディカーに挑戦してほしいと思うF1ドライバーはたくさんいるはずだよ」

 F1からインディカーに挑戦し、成功したドライバーも近年は何人か名前を挙げられる。インディ500を2度制した佐藤琢磨もそのひとり。F1キャリアは短かったが、アレクサンダー・ロッシもこのカテゴリーに入るだろう。ロマン・グロージャンも、2021年にインディカー参戦を開始するとパフォーマンスを発揮。デイル・コインから名門アンドレッティに移籍を果たしている。

 ルンガーは、現在F2に参戦しているドライバーの中で、フェリペ・ドルゴビッチやマーカス・アームストロングといったドライバーがインディカーでも強さを発揮するだろうとしながらも、オーバルコースへの適応は難しいと付け加えている。

 今季はルンガーと同じく、F2に参戦しF1テストドライバーを経験したカラム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング)もルーキーとしてインディカーを戦っている。

 ルンガーは、ピレリタイヤの扱いを経験していることが、自身とアイロットが時に見せる好パフォーマンスの要因になっていると話した。

「インディカーの特徴は、毎回速くなければならないことで、それは大変だ。オーバルへの移行は厳しいと思う」

「(F2と同じく)ダラーラのマシンを使っているというつながりは大きな要因だろう。だけど、ピレリタイヤを経験した上で、ファイアストンタイヤに移行したことも、カラムにとっても僕にとっても大きなメリットだったと思う」

「ピレリのタイヤは扱いにくいので、タイヤをきちんとセーブし、ケアをするという経験を積んだからね。ピレリはサーキットによって変わるし、理解するのがとても難しいんだ」

「ファイアストンの方がより多くのものを受け止めてくれるから、タイヤをプッシュすることができる。でも同時に、僕たちは速く走る方法も知っているし、タイヤをセーブする方法も知っているんだ」

「これまでにもいい仕事ができること、速いことを証明してきたけれど、これからはもっともっと、僕らのレースを助けてくれるようになると思う」

「クルマのドライブが劇的に違うということはないと思うけど、インディカーの方がハッスルできると思う。ジェントルなスライドがあるんだ。僕にとって一番大きな違いはタイヤだと思うけど、クルマのハンドリングはほとんど同じ。少しは違うけど、劇的に違うわけではないんだ」

 レースは激しいものの、インディカーのパドックでは適度にフレンドリーな雰囲気があることにも満足していると、ルンガーは言う。

「インディカーについて、これまで嫌だったことはあまりないと思う」

「スチュワードやレースディレクターなど、様々な人の判断で、こうだったらいいのにと思うようなことが常にある。でも全体としては、これまで何度も言ってきたように、ヨーロッパとアメリカでは何が違うのか、という質問を受けるけど、僕にとってはレースが重要なんだ。政治的なことよりね」

「インディカーのいいところは、ゴーカートに恋したときの感覚をここで感じるということだ。クルマを走らせ、レースをし、楽しむ。でも競争して、ヘルメットを脱いだら、みんな仲良し。ヨーロッパでは見られない光景だ」

「アメリカでの生活は楽しいし、こっちの方が好きだ。もちろん、家族や友人などには会えないけど、いつか会いに来てくれる時が来るだろう。このスポーツのすべてが、僕にとって好ましいものなんだ」

 
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